オーツが読んだ本です。ハードカバーの形態で、本文が 440 ページもある分厚い本です。それに参考文献が2ページにわたって付いています。内容は、小説といっていいと思います。
参考文献が2ページにわたって並んでいるというのは、普通の小説ではほぼ見たことがありません。ハッカー、暗号資産、北朝鮮などに関する本が参考文献として揚げられています。著者の博識ぶりはこんな本から知識を得ているのだということがわかります。こういう情報を巻末に載せるというのは、専門書・学術書などでは普通のことですが、フィクションでは珍しいと思います。
主なストーリーは1人のハッカーの回りで起こる事件であり、パソコンやスマホの話が飛び交います。しかも、誰それのスマホに侵入するというような話です。オーツはそういうあたりにまったく疎いので、読んでいく途中でも若干苦痛を味わいました。専門用語が飛び交うので、それが何を指すかがわからないとストーリーについて行きにくくなります。
舞台は、バンコク(タイ)と新宿がメインであり、補足的に、青森、横須賀、香港、シンガポールなどが出てきます。著者が海外事情に詳しいが故にこんなことが書けるのでしょうが、タイのことなどをあまり知らない人間には、この面でもついて行きにくくなりました。
語られるストーリーは奇想天外なもので、多額のクリプト(暗号資産)の話です。1,000 億円などと聞くと、もう想像すらできない金額です。それを現金に換えたり、コンピュータから盗んだりする話です。
オーツは、全然知らない世界を、小説を通して垣間見た気分になりました。当然ながらフィクションですが、すごくリアリティがあって、こんなことが実際にあっても不思議はないだろうと思いました。
オーツは、ついでながら、フィクションとは何かを考えさせられました。登場する人物は著者が作り上げたものでしょう。モデルがいるかもしれないけれど、大部分は著者の創造によるものと考えます。一方、バンコクの通りの名前、レストランの名前、そこでの料理の名前などは創造物ではなくて、実際にそこにあったものなのだろうと思います。そんなものまで著者の想像力で作り上げてしまうと、リアリティがなくなってしまいそうです。作品によっては、地球外の場所や、はるかな未来や過去の時代を描くものもあって、登場する事物もすべて著者の創造物ということもありますが、「今ここ」の現実と違うと読者が理解できないものになり、そのあんばいはなかなかむずかしいものだと思います。
苦労して 440 ページを読む人は限られているような気もします。広く読まれる本というよりは、極めてマニアックなオタクを対象読者にしているかのようです。
オーツは図書館でこの本を借りて読んだので、タダで読めましたが、こういう内容に 2,000 円+税を払う人はどれくらいいるのでしょうか。出版社が出版を決意したというのもかなりリスキーなことのように思いました。
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2026年07月11日
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