2018年12月12日

藤原かずえ(2018.10.10)『「セクハラ」と「パワハラ」野党と「モラハラ」メディア』ワニブックス

 オーツが読んだ本です。実に痛快な本でした。
 2018年4月に起こった財務省の福田事務次官によるセクハラ問題について、その周辺の対応などを詳しく記述・分析した本です。
 記述の中心の第1章から第3章まで、一連の経緯を時系列で示しながら、麻生大臣や財務省、野党、テレビ朝日を初めとするマスコミなどがどのような対応・報道をしたのか、そしてそれらのどこにどんな問題があるのかを解説していきます。
 オーツは、一連の騒動の推移の中で、モヤモヤしたものを感じていましたが、こうして著者に説明されると、何がモヤモヤの原因だったのか、はっきりわかりました。野党の勘違いがひどいとともに、パワハラがすごかったということ、メディア(特にテレビ朝日)のモラハラがすごかったことが原因でした。
 本書を読むと、こんな野党を支持するのがいかにも馬鹿臭く感じられます。
 まさに本書のタイトルが内容をズバリ物語っています。わかりやすいタイトルです。
 どこがどう問題だったのかは、本書を読めば明確にわかります。
 そして、マスコミではそういう視点からの報道がまったくなされていないということも問題のように思います。オーツは、今、本書を読んで納得したのですが、セクハラ事件がいろいろ報道される中で、マスコミの対応は極めて偏っていたように思われます。
 そういうことがわかるという点でも、本書はおすすめできるものと思います。
 著者の藤原氏の冷静な判断力・分析力が光ります。

参考記事:
https://ameblo.jp/kazue-fgeewara/entry-12404764116.html


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2018年12月10日

佐藤康光(2015.11.30)『長考力』(幻冬舎新書)幻冬舎

 オーツが読んだ本です。「1000手先を読む技術」という副題が付いています。
 著者は将棋界では有名人で、日本将棋連盟の棋士会の会長もつとめています。オーツは将棋が趣味なので、将棋の対局の面での活躍ぶりはよく知っていました。
 そういう著者が新書1冊で何を語るのか。そのあたりが興味の中心でした。一読したあとの感想では、大したことはなかったかなといった感じでした。
 もちろん、将棋の対局についていえば、棋士は集中して読むことに優れていると思います。一つの局面を見ながら何時間も考えられるというのはものすごい集中力です。しかし、それは将棋のある局面を前にして、その後の展開を予測しながら考えるわけで、そういう面で優れているからといって、他の面でもそうだとはいえないし、他の面ではまた別の知識なり考え方なりなんなりが必要とされるものでしょう。
 つまり、「長考力」というようなとらえ方(このタイトルは編集者が付けたものではないかと思いますが)がそもそも成り立たないのではないかと思います。
 著者の将棋観などの面では興味深いことがいろいろ書いてあるのですが、それは「長考力」で指し示されるものとはずいぶん異なるものだと思います。
 オーツは、この本を読んで、半分失望しながら、半分おもしろいと思いました。
 将棋を知らない人が読んだら、全然おもしろくないと思うでしょう、たぶん。


ラベル:佐藤康光 将棋
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2018年12月04日

楠木新(2017.4.19)『定年後』(中公新書)中央公論新社

 オーツが読んだ本です。「50歳からの生き方、終わり方」という副題が付いています。
 オーツも「定年」を迎えたので、自分の生き方・暮らし方をふり返る意味で読んでみたいと思いました。
 しかし、本書を一読したところ、あまりおもしろいところはなかったように思いました。
 著者はいろいろな定年後生活者にインタビューしています。それはそれで一つの(形の定まらない)データでしょうが、その結果何がわかったかというと、「人それぞれ」ではないかと思います。本書中で取り上げられた人々の中で同様の意見が語られることはありますが、オーツの場合に当てはまるかと考えてみればそんなことはないと感じるわけです。つまり、それは「人それぞれ」ということであり、これを言い換えると、定年後の自分のあり方は自分で考えるしかないということになります。こんなことは、本書を読む前から明らかなことであり、それはつまり本書を読んでも得られることは多くなかったということになります。こういう本を読むことに意味があまりないということは、「定年後セミナー」のようなものに参加することも同様に意味がないということになります。まあオーツの周りではそんなものは開催されていませんが。
 本書は7章構成ですが、章立ては便宜的なものであり、それぞれで別のことを論じているというよりは、一つのことを見る角度を変えて記述したということになるのかもしれません。この構成にしたこと自体がちょっと不思議です。各章の記述の重なりも気になりました。
 もしも定年後が「人さまざま」だとすれば、定年後に関する本を書くとどうなるでしょうか。新聞記事の連載のように、毎回、異なる人にスポットを当てながら、この人の場合はどうだ、こちらの人ではどうだと書いていくしかなくなります。全体がバラバラになり、全体を貫く一貫性のようなものが見えにくくなります。
 本書はそんな面がありそうに感じました。
 では、どうするべきだったか。
 オーツは、まず定年後の人生を送る人々が全体として(平均として)どんな生活をしているのか、その全体像を描くべきだろうと思います。そのための意識調査(世論調査)などは多数存在しますから、そういうものを組み合わせながら定年後の人々を描くことが必要なのではないでしょうか。著者がインタビューした(関西の)人々と異なる全国の人々の実態が浮かび上がってくるように思います。そういう記述であれば、オーツの経験が全国平均なのか、それとも異常なのかなどが見えてくるように思います。
 定年後生活者の居住地が都市部か地方かによって、定年後に関する考え方が大きく異なります。関西と関東でも違います。そのあたりの実態を踏まえないと、定年後の世界はあまりに多様で記述できないし、記述しても当てはまらないと感じる人が多数いるということになるのではないでしょうか。
 本書は、そんなわけで、オーツにはあまり役に立たなかったように思いました。

参考記事:
https://diamond.jp/articles/-/145209


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2018年11月23日

牧野知弘(2012.10.10)『なぜビジネスホテルは、一泊四千円でやっていけるのか』(祥伝社新書)祥伝社

 オーツが読んだ本です。タイトルに引かれて図書館で借りました。
 ホテル業界の裏話でも書いてあるのかという興味と、なぜビジネスホテルは安いのか知りたいということで借りたのでした。
 著者の牧野氏はホテルオーナーに対するアドバイザリーの仕事などを行っているとのことです。
第1章 現代日本の宿泊事情
 旅館が激減し、ホテル(特にビジネスホテル)が急成長しているとのことです。それはそうでしょう。実感としてもそんな気がしていました。
 p.18 から、ホテルと旅館の違いについて説明してありますが、旅館業法という法律で決まっているのですね。ホテルは洋風、旅館は和風といいうことです。なあんだという感じでした。
第2章 ホテルは人間動物図鑑
 この章が一番おもしろいところでした。ホテルの宿泊客にはいろいろな人がいるものですね。洗濯をした人、そこら中に脱糞した人、引きこもり、などなど、笑いながら読みました。
 従業員にはおばあちゃん子がいいというユニークな指摘がありました。おばあちゃん子は接客業に向いているのだそうです。
第3章 コモディティ化するホテルの宿泊料金
 ネットの影響でホテル代が下がっている現状を描いています。単に下がるだけでなく、京都の紅葉の季節など、時と場所によっては強気の価格設定が可能な場合もあります。どう価格設定するかはホテルの経営者にとって悩ましい問題です。
第4章 ホテル経費削減物語
 ホテルの中では、けっこうきびしい経費削減が行われているのですね。
 まあ、それに気がついた場合は、削減できますが、気がつかない場合は、ずっとそのままになっていたりします。そのあたりは、他のホテルの収入/支出と比べてみるとわかるのかもしれません。
第5章 ホテルをプロデュースする
 ホテルごとにどんなイメージで運営していくか、どこに経費をかけるべきか、などが変わってきます。そのあたりの問題を解きほぐしつつ説明しています。
 東京やその他の大都市などでのおすすめのホテルも書いてありましたが、オーツが泊まったようなところはまったく出てきません。その意味ではあまり参考にならないかもしれません。

 というわけで、ホテル業界の関係者にはおすすめの内容ですが、オーツのような一般読者には、ちょっとむずかしいというか、焦点がずれている内容に感じられました。著者の経歴を知れば、こんな内容になることが想像できるでしょう。オーツの場合は、タイトルで借りてちょっと失敗しました。


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2018年11月09日

和田政宗(2018.7.28)『「嘘の新聞」と「煽るテレビ」』扶桑社

 オーツが読んだ本です。
 刺激的なタイトルですが、本書を通読すると、このタイトルがもっともだと思えてきます。
 最近の新聞とテレビの報道でおかしいと思うことが多くありますが、それをまとめて述べた本です。どんなことがおかしいのか、具体的な事実に基づいて書いており、説得力があると思います。
 著者は「元NHKアナウンサー」であり、「現参議院議員」でもあります。マスコミ業界の関係者は、このような「批判本」に真摯に答える必要があるのではないでしょうか。マスコミが今のままでは、今後の日本の行く末が危ぶまれます。
 第1章「NHKは「捏造反日協会」?」では、NHKの中のさまざまな問題点を取り上げ、なぜこんな報道がなされるのかを論じています。
 第2章「敗戦後遺症に侵される左派系メディア」では、中日新聞、東京新聞、沖縄の二つの新聞を取り上げ、現状を記述します。これらのマスコミには、とても残念な面が多々あることがわかります。
 第3章「加計・森友学園問題が暴いたメディアの本性」では、朝日新聞をメインに、毎日新聞や中日新聞も取り上げ、加計・森友問題をどう報道してきたかを論じます。マスコミの偏りのひどさが痛感されます。
 第4章「財務省書き換え問題の本質」でも、朝日新聞を中心にテレビや週刊誌などの報道の状況を示し、本質をとらえていないことを批判しています。
 終章「メディアに未来はあるのか」では、現状を踏まえつつ、今後のメディアのあり方を論じています。
 全体として、納得のいく議論のしかたですし、書かれていることは妥当なように思いました。問題は、マスコミ側の受け止めです。これからマスコミはどうあるべきでしょうか。それが日本の今後にいい影響を与えるでしょうか。オーツはどうもあまり明るい気分になりませんでした。今、本書に書かれているような報道をしているマスコミですから、数年程度でこの「傾向」が変わるとも思えません。
 最近のいくつかの問題をめぐっては、マスコミの劣化が目立っていますが、オーツの感覚では、ネットの言論は、いわばそれを救っているかのようです。もう、日本の言論はマスコミがにぎっている時代ではなくなったかのように思えます。ネットで知ることができる言論のほうがはるかに本質を突いているように思えます。今後ともその傾向が続くならば、今のマスコミは人々によって無視され、捨て去られるでしょう。見向きもされなくなったら、マスコミとしては終わりです。もしかすると、マスコミは現在そのような崖っぷちに立たされているのかもしれません。マスコミ自体は気づいていないように感じられますが。
 というわけで、本書はとても読み応えがありました。

参考記事:
http://ponko69.blog118.fc2.com/blog-entry-4943.html


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2018年11月05日

橘玲(2018.6.13)『朝日ぎらい』(朝日新書)朝日新聞出版

 オーツが読んだ本です。「よりよい世界のためのリベラル進化論」という副題が付いています。
 「朝日ぎらい」というタイトルは、井上章一(2015.9)『京都ぎらい』
2017.1.21 http://o-tsu.seesaa.net/article/446148345.html
から付けたそうですが、オーツはタイトルに騙されて読んでしまいました。
 朝日新聞が嫌いな人がたくさんいます。何かというと朝日新聞をたたくわけですが、この本もそういう趣旨であろうと思ったわけです。
 ところが、読んでみたら内容は全然違っていました。むしろ、副題のほうが本書の内容をよく表しているといえます。
 本書はリベラルと保守がどんな考え方をしているかを世界的な視野で描いたものです。
 一番わかりにくかった点は、リベラルとは何か、保守とは何かが最初に明示されるわけではないということでした。いろいろリベラルについて議論していくわけですが、一体何のことを(誰のことを)いっているのか、わかりにくいところがありました。
 p.121 になって、リベラルの三つの定義が出てきます。
 こういう「定義」は、仮にわかりにくいとしても、最初にまず提示しておき、p.121 になってからきちんと定義するという論述のほうがいいのではないでしょうか。
 読み進めていくと、たくさんの参考文献が注の形で登場してきます。つまり、一見単純に見える主張の裏には、著者が読んだ膨大な文献の山が隠されているというわけです。こういう論述スタイルは(単に著者が思いついたことを述べているわけではないという意味で)信頼できるように感じます。もっとも、著者の挙げている文献を全部読もうとすると、それはそれで大変なことになりそうで、ほとんどの人にとっては、限りなく不可能に近いことでしょう。
 本書は、今後の政治の方向性、それに関わる考え方(どう考えたらいいか)などをめぐって、基礎的な事実を積み上げた論考といったところでしょう。これを読んで、目からウロコが落ちるわけではありませんが、さまざまな問題を考える上で参考になると思います。

 目次は以下の通りです。

PART1 「リベラル」と「保守」が逆転する不思議の国
1 安倍政権はリベラル
2 リベラル化する世界
PART2 アイデンティティという病
3 「ネトウヨ」とは誰のことか
4 正義依存症と愛国原理主義
PART3 リバタニアとドメスティックス
5 グローバルスタンダードの「リベラル」
6 「保守」はなぜ「リベラル」に勝つのか?
PART4 「リベラル」と「保守」の進化論
7 きれいごとはなぜうさん臭いのか?
8 リベラルはなぜ金持ちなのか?
エピローグ サイバー空間のイデオロギー戦争

参考記事:
https://www.tachibana-akira.com/2018/06/11067


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2018年10月18日

宇佐美典也(2018.6.14)『逃げられない世代』(新潮新書)新潮社

 オーツが読んだ本です。「日本型「先送り」システムの限界」という副題が付いています。
 著者は、経済産業省の官僚だった人ですが、30代で経産省を辞め、独立起業します。こういう経歴の人だからこそこんな内容の本が書けたのだろうと思います。
 4章構成です。
 第1章「先送り国家日本の構造と「逃げられない世代」」では、日本の構造的問題を説明しています。政治家のものの見方、官僚、野党などの問題点など、まさに納得できる内容です。なぜ日本が今のような状況になっているかをわかりやすく記述してくれました。オーツとしては、この章が一番おもしろかったです。
 第2章「社会保障の先送り課題について」では、日本政府の財政問題とからめて、国債の残高の増大、その利払い、社会保障のあり方などを論じます。この章も、日本が先送りを続けてうまくいかなくなってきた状況をきちんと描いています。
 第3章「迫り来る安全保障の危機」では、一転して安全保障の問題を論じます。太平洋戦争前から今まで、日本の安全保障は似たような状況があったとする見方はおもしろかったです。アメリカがなぜ日本を「守る」のか、「恐れているから守る」という論はその通りだと思いました。
 第4章「私たちはどう生きるべきか」では、そこまでの社会レベルの話から話が変わって個人レベルになります。年金受給年齢の引き上げに備えて歳を取っても働くことや、消費税を増税せざるを得ないこと、原子力発電の意味など、今後の日本のあり方を考える上で大事な指摘が随所に出てきます。
 内容を簡単にまとめることはむずかしいのですが、著者の考えが全体としてよくまとまっており、日本に対する見方が一貫していると感じました。
 読後の感想ですが、こういう考えを持っているならば、宇佐美氏は今後政治家を目指すべきではないでしょうか。第1章の記述を読むと、こういう考え方は取らないようですが、しかし、このように日本社会を見通している人だからこそ、大所高所に立った意見を述べてもらいたいと思うのです。まあ、政治家になったからといって、その主張が多くの有権者に支持されるとは思いませんが、こういうふうにきちんと物事を見ることができる人も政治家の中に必要だと思います。今は、政治家のレベルがあまりにも低すぎます。(そうなったのは有権者のせいではありますが。)もう少しまともな人が政治家にならないと、日本はどうしようもないと思います。宇佐美氏なら期待できそうです。

参考記事:
http://agora-web.jp/archives/2033509.html
http://agora-web.jp/archives/2033035.html
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/52015632.html


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2018年10月16日

橋本長道(2014.10.10)『サラは銀の涙を探しに』集英社

 オーツが読んだ本です。小説です。
 同じ著者の『サラの柔らかな香車』
2018.10.10 http://o-tsu.seesaa.net/article/462101834.html
がおもしろかったので、もう1冊を読んでみようと思いました。
 前作の続編というストーリーです。しかし、前作の主人公・サラはほとんど出てきません。プロローグでいきなり失踪してしまいます。その後、SARA と名乗る人物がサラと似た流儀でネットで対局し、活躍するのですが、その正体は誰かという感じで話が進んでいきます。
 登場人物が全部匿名であり、現実の将棋界とは無関係なので、なかなか登場人物が覚えにくい感じがしました。まあ、鍵谷英史がキーパーソンなので、そこに着目していけば大きな流れは外さないと思います。
 この本も、将棋に詳しい人ならではの書き方がされています。オーツは、けっこう没入して読み進めることができました。しかし、SARA の正体が明らかになるころから、面白さが半減してしまうような脱力感を感じました。
 第3作が作られることはあるのでしょうか。今回の終わり方を知ると、この続編はなかなかむずかしいように思われました。
 フィクションはフィクションでおもしろいと思いますが、現実世界は現実世界としてあるわけで、フィクションがどこまで現実世界にせまれるかというと、それはそれでむずかしいように感じました。
 文芸などに興味のないオーツのつたない感想でした。

 なお、オーツが読んだのは単行本でしたが、Amazon では、文庫本しか画像が貼り付けられないので、以下にはそちらを示しておきます。


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2018年10月10日

橋本長道(2012.2.10)『サラの柔らかな香車』集英社

 オーツが読んだ本です。小説です。オーツは普段小説の類(フィクション)を読むことはないのですが、著者・橋本長道氏の『奨励会』
2018.9.15 http://o-tsu.seesaa.net/article/461668978.html
という本を読んだときに、著者が奨励会を辞めた後に小説家になっていて、新人賞などを取っていることを知りました。そこで、そういう小説がどんなものか、ちょっと読んでみたくなったのでした。
 確かに迫力がありました。
 護池・レメディオス・サラという金髪碧眼の日系ブラジル人が主人公です。
 サラが将棋を覚え、女流名人を破るまでを描いているのですが、単純に時系列で記述するのでなく、いくつかの時代を往復しながら記述していきます。女流名人との対局が現在とすれば、その合間に過去の回想シーンが挟み込まれるというべきでしょうか。なかなか巧みな描写です。
 何といっても、著者に将棋界および将棋に対する深い造詣があるので、描き方が緻密です。登場人物は全て架空の人物で、名前も仮名なのですが、それはそれとして、まるでそんな人物が将棋界に実在するかのように、生き生きと描かれます。登場する人物たちの子供のころの心理というか気持ちの持ちようなどもうまく描かれています。それを見るプロ棋士の目などももっともらしいと思われます。
 単行本の表紙には、サラの絵というか写真が掲載されていますが、このモデルさんは誰なのでしょうか。いかにもサラらしいと感じさせます。
 今は、文庫化され、表紙は完全な「絵」になっていますが、こちらはやや安っぽく感じます。
 Amazon では文庫しか出てこないので、以下にはそれを貼り付けておきます。


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2018年10月02日

八幡和郎(2018.6.5)『江戸時代の「不都合すぎる真実」』(PHP文庫)株式会社PHP研究所

 オーツが読んだ本です。「日本を三流にした徳川の過ち」という副題が着いています。
 末尾の参考記事欄に書いたものを読んで、この本を読もうと思ったのですが、このような主題に相応しいことは、ほぼ第7章に書かれています。オーツの興味と関心からいうと、第7章だけ読めば十分だったように思います。
 目次は、以下の通りです。
プロローグ 「江戸時代礼賛論」を全面的に否定する理由
第1章 豊臣の天下はなぜ短命だったのか?
第2章 関ヶ原で西軍が負けた失敗の本質
第3章 世界史から鎖国の原因と功罪を解き明かす
第4章 徳川家康の祖法を守って「じり貧 300 年」
第5章 「日本は 300 の国からなっていた」という伝説
第6章 武士道とは縁遠い、江戸時代の普通の武士たち
第7章 江戸時代と現代の北朝鮮はこんなに似ている
第8章 西郷どんの視点から見た幕末維新

 江戸時代の日本がどういう状態だったか、庶民の暮らしぶりなどにも触れつつ記述してあるのは第7章がメインです。江戸時代を現代の北朝鮮にたとえるというのも新鮮な視点です。まあそれだけ不自由だったということです。その中で生きている人たちは、そんなことを感じもしないでしょうが。
 第5章の江戸時代には藩がなかったなどという話もおもしろかったです。常識を覆されました。
 それにしても、たかだか百数十年程度が経つだけでも、昔のことはわからなくなってしまうものなのですね。江戸時代をどう見るかをめぐっては、いくつか異なる見方があるということがわかって、それだけでもおもしろかったです。

参考記事:
http://agora-web.jp/archives/2033224.html


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2018年09月17日

夏野剛(2018.5.10)『誰がテレビを殺すのか』(角川新書)KADOKAWA

 オーツが読んだ本です。
 テレビが殺される、それが運命だというわけです。運命である以上、それは避けられないことです。
 問題は、「誰が」殺すのかということです。
 それは、ネットの発展であり、5Gという更なる高速ネットの登場です。もちろん、それだけではありません。そういう時代になって、その中で日常生活を営んでいる我々が、日々の選択を通して、テレビの性格を変えていってしまうわけです。
 著者は、NTTドコモをはじめ、通信業界、ゲーム業界で活躍してきた人であり、テレビ業界とはあまり関係ありません。つまり、テレビ業界を外から見る立場にあります。そういう人の目にテレビがどう見えているのでしょうか。このあたりが本書の一番おもしろいところです。必ずしもテレビ業界の人がテレビのことを一番よくわかっているということではないように思えるのです。テレビの業界人は、その中で働いている人たちですから、内部の目は持っているし、番組作りなどのノウハウなどはあるでしょう。しかし、日常的な放送の中に埋没してしまって、テレビとは何か、放送とはどうあるべきかなどを広い視野から見て考えることはしにくいのではないでしょうか。むしろ、第三者の目で見る方が業界のことを客観的に見ることができるともいえます。
 オーツは、あまり熱心にテレビを見る方ではないので、その業界がどうなっていくかにはあまり関心がないのですが、本書を読んで、テレビ業界の将来が明るくない印象を持ちました。テレビ業界は、過去にあまりに大きな影響力を持っていたので、その状態を当然と考えているようです。しかし、これからの時代はネットが関わる時代であり、テレビ業界も変わらざるを得ません。しかし、業界内部の人たちは、そのような危機感を持っているようには見えません。今までと同じようなことを続けていくしかないかのようです。それでは将来展望が開けていかないでしょう。
 今後のテレビのあり方を考える上で、一つの視点を提供してくれる良書だと思います。

参考記事:
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/52015988.html


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2018年09月15日

橋本長道(2018.6.28)『奨励会』マイナビ出版

 オーツが読んだ本です。「将棋プロ棋士への細い道」という副題が付いています。
 奨励会がどういうところか、きちんと描いています。奨励会というのはプロ棋士の養成機関ですが、著者は実際に4年間在籍し、退会したとのことで、奨励会の現実が描かれています。
 オーツがおもしろいと思ったのは、第1章「棋士のコストパフォーマンス」です。獲得賞金額から見ると、将棋の棋士は大した金額ではありません。CMや講演料などが入ればだいぶ変わってくるのでしょうが、そういうことが可能なのはほんの一握りの棋士だけです。プロになるまでの膨大な努力を考えると、コストパフォーマンスは悪いと思います。
 今後の将棋界についても、決して明るくないという著者の意見にはうなずけるものがあります。
 以下の4点を挙げていますが、まったく同意です。
・AIに敗北したことで人々が将棋という競技に興味を失う。
・新聞社の衰退によってスポンサーがいなくなってしまう。
・世界的なゲーム間競争において将棋が敗北する。
・娯楽の多様化によって将棋がかえりみられなくなる。
 どれもが深刻な問題だと思われます。オーツの感覚では「新聞社の衰退」が一番深刻なように思います。一つのタイトル戦を維持するために、新聞社は相当な資金をつぎ込んでいると思いますが、新聞の読者が減りつつある現在、さらに減少する未来において、それだけの資金が出てこないということになりかねません。
 第2章から第3章が記述の中心ですが、こういう(奨励会の)実態を知ると、将棋のプロ棋士を目指すというのは、よほどの才能のある人に限定されるべきだと思います。中途半端な将棋好きが考えるべきことではありません。まあ、オーツの周りで将棋のプロになろうとする人はいないわけですが。
 全体として、将棋界の実態を知るためにはとてもよい1冊だと思いました。


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2018年09月11日

橘玲(2016.4.20)『言ってはいけない』(新潮新書)新潮社

 オーツがしばらく前に読んだ本です。「残酷すぎる真実」という副題が付いています。
 オーツは、出てすぐ買ったので、2年半経ったことになります。
 本の帯には「警告! この本の内容を気安く口外しないで下さい。」と書いてあります。そのため、読んだ後も、ブログ記事にすることなくそっとしておきました。
 しかし、2年半もすれば、少しはこの本について語ってもいいでしょう。
 いや、しかし、本書を実際に読んでもらうほうがいいので、内容についてはノーコメントとしておきましょう。
 オーツは、今まで読んできた本の中で、もしかして一番ショッキングだったと言ってもいいかもしれません。人生(生き方)が変わってしまうくらいのインパクトがあります。それくらい、この本はすごい内容がてんこ盛りです。しかも、書いてある内容は、さまざまな研究で確認されたものばかりです。橘氏の研究ではありませんが、巻末の参考文献でたどることができます。
 可能ならば、タイムマシンに乗って、この本の内容を未成年くらいのオーツに知らせてやりたいものです。オーツの人生が大きく影響されたでしょう。
 その後、橘玲氏の本を読んでいると同じ内容が再度出てくるような場合もあるので、インパクトはなくなってきますが、最初にオーツがこれを読んだときには本当にビックリしました。
 本書の内容は、大きく3部に分かれています。
 T 努力は遺伝に勝てないのか
 U あまりに残酷な「美貌格差」
 V 子育てや教育は子どもの成長に関係ない
各部のタイトルだけを見ても、読んでみたいと思うものばかりです。TとVは、子育てをする前に読んでおきたい内容です。Uは、美人はどれくらい得をするかを論じたものです。
 この本の内容紹介として、以下のようなものがあります。
http://www.shinchosha.co.jp/book/610663/
http://www.dailyshincho.jp/article/2016/04180510/?all=1
 いすれも新潮社に関連するサイトですので、こういうサイトを紹介する分には問題はないでしょう。


ラベル:橘玲 子育て 美人
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2018年09月07日

河合雅司(2017.6.14)『未来の年表』(講談社現代新書)講談社

 オーツが読んだ本です。「人口減少日本でこれから起きること」という副題が付いています。
 日本の人口減少をテーマにした本です。
 第1部は「人口減少カレンダー」ということで、何年にどんなことが起こるかを年表の形に示しています。
 しかし、人口減少はだんだん起こるものです。事件や事故のように、何年に起こることで、それ以前とそれ以降がまったく様変わりするなどということはありません。その意味では、こういう年表形式は、あまり当てはまらないように感じられます。
 たとえば、2027年には輸血用血液が不足するとありますが、2027年に突然そうなるわけではなく、それ以前からだんだんその傾向が現れ始め、それ以降も基本的には輸血用血液は不足した状態が続くでしょう。
 そんなふうに見てみると、どうもこの年表形式にはうさんくささを感じてしまいます。
 しかし、少子高齢化の傾向は事実ですので、遅かれ早かれ、本書が記述しているような日本になることは間違いなかろうと思います。
 では、その対策はどうなるのでしょうか。
 第2部「日本を救う10の処方箋」でそれらの提案が記述されます。とはいっても、そのうち半分は「戦略的に縮む」ことですから、処方箋というのと少し違うように思えます。
 他にもいくつか有用な提言が書かれていますが、こんなことで「日本を救う」ことができるのかと考えてみると、はなはだ心許ないように思えます。
 「ではどうするのだ」と聞かれても、回答はありません。少子化は、日本人全員の合意で行ってきた結果なのですから、そんなに簡単に処方箋が書けるはずがありません。このあたりは、みんなでとことん考える必要がありそうです。何はともあれ、少子化がどんなに大変なことかを知るためにも、一読しておくといい本だと思います。



参考記事:
http://blog.livedoor.jp/hasegawa_yutaka/archives/50573287.html
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=38546
続きを読む
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2018年09月02日

木村光彦(2018.4.18)『日本統治下の朝鮮』(中公新書 2482)中央公論社

 オーツが読んだ本です。「統計と実証研究は何を語るか」という副題が付いています。
 1910 年から 1945 年まで日本の植民地だった朝鮮ですが、その実態はどうだったのでしょうか。そんな興味から、この本を読んでみようと思いました。
 実証主義を標榜するように、徹底して数値を求め、それを確認しながら記述を進めています。その態度は必要だし望ましいことだと思います。しかし、端的に言ってどうだったのかという、結論をすぐに知りたい(オーツのような)せっかちな人向けには、やや退屈に感じるところもあるかもしれません。終章がそれに近いのですが、それをきちんと読む(読んで納得する)ためには、そこまでの記述(およびその元になったデータ)を把握する必要があります。
 というわけで、各章をまじめに読むのが一番いいということになります。

序章 韓国併合時――1910年代初期の状態とは
 朝鮮半島は自然条件に恵まれず、鉱物資源なども未探索で、都市商業や工業も未発達の農業依存社会だったことを示しています。都市の規模は小さく、定期市が発達していたということは、逆に商業の未発達の裏返しです。食物消費も大したことはなく、主食は雑穀で、教育水準は低かったということです。
第1章 日本の統治政策――財政の観点から
 1936 年までの総督府の財政を論じます。総督府自体が大きくなり、内地人官僚が多数を占め、日本の資金をつぎ込んで韓国を経営したという状態でした。総督府が土地調査を行って、土地に課税する形で経済成長をはかりましたが、租税負担率は朝鮮も(台湾も)内地よりずっと低かったのが当時の状況でした。
第2章 近代産業の発展――非農業への急速な移行
 1912-1936 で農業生産が大幅に増えます。日本が指導して、生産方式を変え、品種改良も行ったことが主たる原因のようですが、朝鮮人農夫たちの努力もあったでしょう。鉱工業がこの時期に猛烈に発達します。未開発だったのが花開いたわけです。石炭開発、鉄山開発、製鉄所設置、製糸業の発達、電源開発、化学工業の登場などなど、朝鮮ではとても大きな変化が起こりました。
第3章 「貧困化」説の検証
 朝鮮住民の生活水準はどう変化したでしょうか。一人あたりの米消費量、消費支出、生活の質、政府サービスなどを検討した上で、生活は向上したと結論しています。おもしろいデータとして、日韓併合時の平均身長を取り上げ、それが伸びていることから生活水準が向上しているとしています。
第4章 戦時経済の急展開――日中戦争から帝国崩壊まで
 1937年に戦争が始まってから、朝鮮も大きな影響を受けます。総督府が膨張し、収入も支出も大きく伸び、農業統制が始まり、工業も同様で、軍事工業化が目立ち、それまでとは一線を画すようになります。
第5章 北朝鮮・韓国への継承――帝国の遺産
 特に北朝鮮には巨大な軍事工業が残されました。金日成の核開発に関する強い関心は、日本の遺産という面があるかもしれません。また、北朝鮮には食料生産能力も十分残されたといえます。その後の大変な飢餓は北朝鮮の進むべき道が間違っていたことの象徴のようにも思われます。これはオーツの考えであり、著者の考えとは別です。
終章 朝鮮統治から日本は何を得たのか
 詳細は省略します。

 全体として、日本の朝鮮統治は、いい面もあったし悪い面もあったというあたりが現実的かと思います。
 戦後、韓国と北朝鮮の対立が起こり、戦前からの歴史を両国がそれぞれに自分の都合のいいようにとらえるようになり、結果的に客観的な議論がしにくくなっているように思われます。朝鮮統治をどう見るかは、それぞれの人の関心の向け方に大きく左右される面が強く、客観的な見方は一顧だにされません。
 本書はデータに基づいてそのような客観性に一歩でも近づこうとしたものだと思いますが、その意図が実現されたかというと、若干心許ない気がします。記述が問題というよりも、こういう本が読まれない傾向があるように感じられるためです。


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2018年08月11日

八幡和郎(2018.4.8)『誤解だらけの皇位継承の真実』(イースト新書)イースト・プレス

 オーツが読んだ本です。
 最近、皇室関連の話題があったりして、皇位継承問題について、考えるべきかと思いました。
 で読んだのがこの本です。
 神武天皇から始まって、どんな天皇がどんなことをしてきたか、延々と書かれています。天皇を中心に見た日本史といった内容でした。オーツの期待とは異なるものだったので、第1章から第5章までは、ところどころ読み飛ばしました。
 第6章「本当はずっと危機的状況だった皇位継承」は読み応えがありました。60ページほどです。ここだけ読んで終わりにしても(オーツの興味的には)よかったと思いました。
 第6章は、まさに、現代の皇位継承問題を扱っています。今の皇室の問題を正面から取り上げています。はっきりいえば、今の皇室では女の子が生まれることが多く、男の子があまり生まれないことが問題なわけです。
 ではどうすればいいのか。
 本書を読むと、皇位継承については、いろいろと考えるべきことがたくさんあって、なかなか難しい問題だということがよくわかります。女系天皇、女性天皇の問題も含め、事前にいろいろと議論しておかなければならない重要な問題のように思います。しかし、国会や政府などの対応を見ても、議論が進んでいるようには見えません。問題の先送りでいいのでしょうか。そんなことを考える上でも、第6章はまとまった意見として参考にしてもよさそうです。

参考記事:
http://agora-web.jp/archives/2032043.html


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2018年07月31日

井上こみち(2018.5.25)『獣医師になるには』ぺりかん社

 オーツが読んだ本です。150 ページほどの厚さで、手軽に読めるようになっています。対象読者は、高校生くらいでしょうか。これから獣医師になることも考えようという人に向けた本です。
 著者の井上氏は動物ノンフィクション作家ですから、獣医師の内部に通じているというよりも、いろいろな取材を通して獣医師の世界を知り、本書をまとめたということでしょう。
 一読した限りでは、獣医師の世界に深く切り込んで記述しているというよりも、何人かの獣医師にインタビューした上で、それらをとりまとめて書いている感じが強くなっています。
 写真なども多くてとても読みやすいと思いました。
 それだけに、記述がやや簡略な感じがして、もう一歩踏み込んで書いてもらってもいいような不満(?)も感じました。たとえば、大学の獣医学科の先生たちにインタビューしたり、大きい動物病院の院長(ないし経営者)にインタビューしたり、ペットの飼い主の声なども入れたりするといいかなあと思いました。関連する周辺から獣医師を見るとどう見えるのかということです。
 獣医師になろうと考える人や、そんなことを考えてもいない人に、獣医師という職業があるよと知らせたりする場合は、獣医師のことにくわしい業界人よりは、こういう外部の人に(あまり厚くなく)書いてもらう方がいいのかもしれません。本書を編集した人の意図も、たぶんそんなところにあるのでしょう。


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2018年07月19日

青野照市(2016.10.19)『将棋界の不思議な仕組み プロ棋士という仕事』創元社

 オーツが読んだ本です。
 将棋界のことがよくわかります。
 現役の将棋棋士・九段が書いたということで、プロ棋士たちが何を考え、どうやって対局し、生活しているかがわかります。
 それにしても将棋界は大変な世界です。勝たなければ(勝率がある程度以上でなければ)将棋界にとどまれないし、しかし、そうやって白星を獲得することは、対局相手に黒星を与えることになるわけで、場合によっては相手を引退に追い込むようなことになるわけです。厳しい世界です。これと同様の世界として相撲界があるように思います。しかし、相撲界は若いうちには力士がつとまるものの、ある程度の歳になったら現役からは引退することになります。将棋界にも似た面がありますが、高齢でも対局している棋士がいるわけで、やっぱり大変なことだと思います。
 「引退した棋士はなにをしているのか?」p.96 などいうページもあるので、そこを読めば、引退した棋士の生活もわかります。なかなか厳しいように思います。
 本書は、大半のページが2ページごとに一つの話題を扱うスタイルで書かれており、大変読みやすく、またどこからでも読み進められるというメリットがあります。オーツは本書をトイレに置いておいて、用足しするたびに数ページずつ読み進めるようなことで1冊を読み終えました。


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2018年07月12日

川口マーン惠美(2018.3.9)『そしてドイツは理想を見失った』(角川新書)KADOKAWA

 オーツが読んだ本です。
 ドイツのメルケル政権(およびその周辺)の現状を描いています。主として取り上げるテーマは難民問題とエネルギー問題です。連立政権を形作る各政党の間で主張の違いが大きく、また変に妥協すると党員からの支持を失うということで、なかなか連立政権が作れないという問題にもつながります。
 なぜそのような現状になるのか、そのキーワードとしてドイツでは「理想主義」の考え方が強いということを述べています。著者の長いドイツ生活によって培われてきた感覚のようなものでしょうが、うまく現状を説明しているように思います。
 著者は、これらの難しい問題に対して解決策を述べているわけではありません。そんなことは誰であってもなかなかできないでしょう。むしろ、ドイツがどういう状況にあるのかをきちんと解説することに意味があると思います。どうやって決断していくかはドイツ人に任せればいい話です。
 目次は以下の通りです。
序 章 SNS規制法案が可決された日
第1章 戦後ドイツとナチズムとの戦い
第2章 最強の女帝・メルケルの正体
第3章 なぜドイツと中国は仲良しなのか
第4章 矛盾に満ちたエネルギー・難民政策
第5章 EU内でも止まらない「反ドイツ」
第6章 そしてドイツは理想を見失った
終 章 理想を追い求めても自由は手放すな

 難民政策に関しては、国会などでの議論を経ずに、メルケル首相が難民を広く受け入れる方針に転じてしまい、ドイツ語も英語も話せない難民がドイツに大量に流入し、彼らの中からテロや犯罪に走るものが出たりして、ドイツ社会は大きくゆれています。日本が学ぶべきはこういう事例でしょう。近未来に日本にも同様の波が押し寄せてくるかもしれません。そのときになってあわてるよりも、普段からどう扱うべきかを議論しておくことのほうが重要でしょうね。もっとも、現実にそうなってみないと(難民の人数が何人かによっても)とるべき政策は大きく異なるでしょう。難しい問題です。
 エネルギー政策も同様です。ドイツは脱原発を目指しているようですが、その代償として再生エネルギーを利用しようとしているようです。しかし、そういう発電方法は不安定で、コストもかかり、結果的に安い褐炭を利用した火力発電の比率が高まってしまい、CO2削減目標に反するという事態になっています。これらのからまった問題を解きほぐすことは誰にとっても難しい問題です。日本も、将来のエネルギーをどうするのか、きちんと議論しておきたいところです。
 オーツは、このあたりが本書中で一番おもしろいと思いました。

参考記事:
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55156
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/52016753.html


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2018年07月08日

橘玲(2018.1.20)『80's エイティーズ』太田出版

 オーツが読んだ本です。「ある80年代の物語」という副題が付いています。
 1980 年代から 1995 年にかけて、橘氏が社会の中でどうやって駆け抜けてきたかが鮮明に書かれています。雑誌編集者などの仕事が描かれます。自伝あるいは回顧録のような内容です。
 橘氏は 1959 年生まれということなので、オーツのほうが若干年上ですが、まあ似た時代を生きてきたため、親近感を持ちながら読んでいました。
 とはいえ、正直、あまりおもしろくなかったです。それぞれの登場人物はホンモノでしょうし、そういう人たちとのつきあいの中で活動してきたのも事実でしょうが、それを描いて「だから何なの?」という感想です。
 小説や映画、ドラマなどを読んだり見たりすると、主人公の人生が描かれていたりします。オーツと対比したりして、それはそれでおもしろいと思う部分もあります。オーツとは縁遠い人のことが書かれていたりすると、自分の知らない世界が少しだけわかるということになります。しかし、本書では、一体何か新しいわくわくするような発見があったかというと、そういうものとは違うように感じます。
 こういう本を書き、世間に公表する意図というか、意味は何なのでしょうか。オーツはわからなくなりました。

参考記事:
https://www.tachibana-akira.com/2018/01/8067


ラベル:橘玲 1980年代
posted by オーツ at 04:41| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする