2025年10月16日

室橋裕和(2024.3.20)『カレー移民の謎』集英社

 オーツが読んだ本です。「日本を制覇する「インネパ」」という副題が付いています。この本でいう「インネパ」は、ネパール人が経営するインドカレー店のことです。インドカレー店の大部分をネパール人が経営していることはオーツは知りませんでした。ネパール人もやっているものの、てっきりインド人が多数を占めるものと思い込んでいたわけです。
 この本は、インネパが急激に増えたのはなぜか、なぜネパール人が経営しているのか、インネパのメニューが相互に似ているのはなぜかといったことを著者が足で調べて書いています。オーツにとっては目からウロコの経験でした。知らないことを知ることのおもしろさといったところでしょうか。
 全九章から成りますが、手っ取り早く概要を知るには第一章だけ読めば十分かもしれません。上で述べた疑問などは第一章の範囲で全部答えが示されます。
 しかし、実は、本書の記述の本質は、上の疑問だけではないのです。その周辺に広がるさまざまな社会現象、ネパール人の社会、子供の教育などが関わっており、実は移民社会「日本」の一側面を明らかにしたところがおもしろいのでした。カレーの話から入るネパール人の社会学といった内容です。

第一章 ネパール人はなぜ日本でカレー屋を開くのか
 本書の全体のまとめみたいな章です。概略を知るにはこれだけを読んでもいいと思います。

第二章 「インネパ」の原型をつくったインド人たち
 インネパの源流を探ると、インド人と関係してきます。というのもインネパの元ネタはインド・ムガール帝国の宮廷料理だったからです。

第三章 インドカレー店が急増したワケ
 コックのビザが取りやすくなってからインネパが急増します。既存店のコックとして働き、金を貯めて自分の店を出すという形でネパール人が多数日本に入り込んできます。

第四章 日本を制覇するカレー移民
 インネパが増えるようすを描きます。

第五章 稼げる店のヒミツ
 日本でネパール人が稼いでいくのはなかなかむずかしい面があります。実例を交えながらそのあたりを記述します。

第六章 カレービジネスのダークサイド
 カレー屋が増える裏には、やはりそれなりの問題があります。インネパの急増の裏でカレー業界が変わりつつあります。

第七章 搾取されるネパール人コック
 ネパール人コックの苦労を描きます。なかなか大変な事情があるようです。

第八章 カレー屋の妻と子供たち
 インネパをやっている大人はいいでしょうが、子供たちが大変です。日本語が十分にわからず、学校についていけない子供たちがたくさんいます。

第九章 カレー移民の里、バグルンを旅する
 著者が現地を旅した記録です。産業が育たず、苦労して山の中に住んでいる人たちがいます。海外に出稼ぎに行く人が多数いると、「カレー御殿」はできるけれど、現地のコミュニティが成り立たなくなります。

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2025年10月02日

池田信夫(2024.12.30)『平和の遺伝子』白水社

 オーツが読んだ本です。「日本を衰退させる「空気」の正体」という副題がついています。
 本書は、どんなジャンルの本なのか、読み終わった後もはっきりしません。一番近いのは歴史学かと思いますが、純粋な歴史学の本とはだいぶ違います。最近は、昔の人骨の DNA を取り出すことができるようになり、いろいろなことがわかってきました。DNA の中にある遺伝子を中心として人類史を展開し、その中で日本人がどんな文化的遺伝子を受け継いできたかが内容の中心です。タイトルにあるように、「平和の遺伝子」が日本人の中に流れているというわけです。日本列島に定住するようになってから、日本人がどのように争いごとを避けてきたかということを論じます。このような遺伝子があると考えると、日本の長い歴史の中でどんな事件が起こり、それがどのように解決されてきたかがきれいに説明できるということになります。
 記述が実に多岐にわたり、池田氏の博学ぶりがみごとに発揮されています。巻末の注(参考文献)が充実しており、本書中に書かれたひとことについて、実はこれこれの本を読んだ上でそう述べているのだというスタイルになっています。池田氏の博覧強記に驚かされます。
 オーツは、本書を読み終わって、池田氏の解釈というか考え方に強く引かれました。自分一人ではなかなかこの境地に達することはできないと思いますが、本書のようなものを通して、いわば数百冊の本を1冊に圧縮したような、中身の濃さを感じました。オーツの人生も残りが長くないので、池田氏のような読書はもうできないと思いますが、可能な限りそこに近づきたいと思いました。

 以下、目次をコピペしておきます。
 はじめに
 序章 新型コロナで露呈した「国家の不在」
  リスクをきらう古い脳/ゼロリスクの法則/人はなぜリスクを錯覚するのか/コロナ専門家の暴走
T 暗黙知という文化遺伝子
 第一章 文化はラマルク的に進化する
  文化は学習によって蓄積される/個体レベルと集団レベルの淘汰/協力する猿/集団淘汰の法則/遺伝と文化の共進化/大きな脳が「共同主観性」を生んだ/利己主義は合理的ではない/偏狭な利他主義
 第二章 「自己家畜化」が文化を生んだ
  脳は「空気」を読むためにできた/理性は感情の奴隷/理性は人間の本質ではない/言語を生んだ「自己家畜化」/新しい社会ダーウィニズム/閉じた社会とチキンゲーム
U 国家に抗する社会
 第三章 縄文時代の最古層
  人類を変えた「定住革命」/農耕なき定住社会/贈与というコミットメント/感染症がケガレを生み出した/日本人はなぜ「無宗教」なのか/縄文式土器は何の役に立ったのか/国家を拒否した縄文人/剰余を蕩尽して平和を維持する/アイヌは縄文人の化石/国家に抗するアナーキー
 第四章 天皇というデモクラシー
  戦争は人類の本能か/農耕が戦争と国家を生んだ/世界宗教は国家とともに生まれた/水田稲作が生んだデモクラシー/古墳時代からヤマト王権へ/「男系の皇統」は存在しなかった/天皇家は「ウルトラマンファミリー」/「まつりごと」の構造
V 「国」と「家」の二重支配
 第五章 公家から武家へ
  「職」の体系/表の「国」と裏の「家」/「氏」から「家」へ/武士は京都で生まれた/核家族から直系家族へ/遊牧民が世界史をつくった/国家権力をきらう「無縁」の原理/無縁の民はなぜ自由を求めたのか/一揆は移動民の結社
 第六章 長い江戸時代の始まり
  凍結された戦国時代/関ヶ原で決まった権力分散/蕩尽で平和を守った徳川幕府/幕府という「無頭の合議体」/喧嘩両成敗の法治主義/主君押込の構造/稟議というデモクラシー/権力の分散する「ジャンケン国家」/勤勉革命のエートス/「正社員」としての百姓/武士の「自己窮乏化」/水戸学と尊王攘夷
W 近代国家との遭遇
 第七章 明治国家という奇蹟
  長州が戦国時代を解凍した/廃藩置県は「居抜きの革命」/天皇はキリスト教の代用品/部分が全体を決める軍隊/自転する組織/軍国主義は普通選挙から生まれた/大政翼賛会という幕府
 第八章 平和の遺伝子への回帰
  日本国憲法は押しつけだったのか/自民党は「小農の党」/小農から中小企業へ/家畜から社畜へ/高度成長を支えた「家」からの逃亡/万年野党を支えた平和の遺伝子/自民党と大蔵省の二重支配/安倍首相の破壊した「まつりごと」の構造/日米同盟という「院政」/平和国家の生存バイアス
 第九章 大収斂から再分岐へ
  冷戦終了と大収斂へ/資本主義がプロテスタンティズムを生んだ/グローバル化できなかった半導体産業/デフレの正体は製造業の空洞化だった/ハートランド対リムランド/ユーラシア国家の時代/新しい冷戦
 終章 定住社会の終わり
  新しい中世末期/「小さな政府」は可能か/定住社会から移動社会へ

参考記事:
https://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/52089031.html
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2025年08月29日

安達宏昭(2022.7)『大東亜共栄圏』(中公新書)中央公論新社

 オーツが読んだ本です。「帝国日本のアジア支配構想」という副題が付いています。
 夏は、どうしても先の戦争に関する話が多くなる時期です。毎年、広島・長崎の原爆投下から終戦記念日まで8月になると戦争のことがテレビでも話題になります。
 本書は、日本語で書かれた資料を丹念に読み込んだ力作です。
 戦争が始まる前から終戦まで、「大東亜共栄圏」という構想がどのようなものとして立案され、東南アジア(南方)や満洲・中国(北方)ではどんなことが行われたのか、資料に基づいてきちんと描こうとしています。現地語による資料を活用すれば、現地の人々の考え方や反応などがわかると思われますが、あえてその部分は扱わず、日本語の資料を通じて、日本側の視点から「大東亜共栄圏」を描いているわけです。

序章  総力戦と帝国日本――貧弱な資源と経済力の中で――
第1章 構想までの道程――アジア・太平洋戦争開戦まで――
 満州事変から書き起こします。日満支経済ブロックが構想され、この中で自給する道を探ります。やがてヨーロッパで戦争が始まり、日本が南方に進出することで大東亜共栄圏という考え方が出てきます。
第2章 大東亜建設審議会――自給圏構想の立案――
 南方を占領した後、大東亜建設審議会というものが設置され、日本が盟主となる基本理念が考えられます。しかし、企画院と商工省が経済建設に関して対立していきます。
第3章 自給圏構想の始動――初期軍政から大東亜省設置へ――
 戦争開始直後の方針を述べます。欧米の植民地だった地域では、初期に軍政を敷き、旧統治機構を利用しようとします。その後日本企業が進出して油田や鉱山の復旧・開発を行います。
第4章 大東亜共同宣言と自主独立――戦局悪化の一九四三年――
 フィリピンやビルマの独立の動きを抑えるわけにも行かず、大東亜新政策として考え方が変わります。大東亜会議が開催されますが、アジア各地の首脳は面従腹背の態度を取ります。
第5章 共栄圏運営の現実――期待のフィリピン、北支での挫折――
 南方の資源開発は限界がありました。綿花や鉱山もうまく行きませんでした。なぜならば、生産ができても、日本への輸送がうまく行かなくなってしまったからです。輸送がうまく行かないために、食糧難という問題もあって、北支・満洲を開発しようとします。
第6章 帝国日本の瓦解――自給圏の終焉――
 対日協力者たちが離反し、抵抗を見せるようになります。日満支と南方が分断され、自活自戦体制が模索されます。東南アジアでは独立運動が盛んになります。
終章  大東亜共栄圏とは何だったか

 歴史学(日本近現代史)の研究者の記述は、こういう形になるものなのでしょう。本書は、表やグラフが多用され、趣旨は理解できるし、データがあるので説得力もあるのですが、著者は当時の有様を丹念に客観的に記述しようとすることに重点を置いたために、全体を貫く「著者の視点」が見えにくくなっているように感じました。
 オーツは、全体をわかりやすくするために、著者の主観的な記述をもう少し前面に出すとよかったのではないかと感じました。
 何はともあれ、「大東亜共栄圏」というものがどんなものだったのか、オーツは知識がなかったので、本書を読んで得るところがたくさんありました。

参考記事:
https://agora-web.jp/archives/250803064927.html

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2025年06月29日

和田泰明(2024.4.10)『ルポ年金官僚』東洋経済新報社

 オーツが読んだ本です。副題として「政治、メディア、積立金に翻弄されたエリートたちの全記録」とあります。
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 オーツは、この本を図書館で借りてきて、トイレの中に入れておき、座るたびに少しずつ読み進めるようにして全体を読みました。446 ページもあるので、3週間近くかかりました。
 内容は、副題を含むタイトルで想像できるような感じです。
 日本の年金制度は、創設以来、少しずつ手を加えられ、現在に至っているわけです。それらの過程を丹念に追いかけ、厚生省、厚労省の年金局の官僚たちがどのように考えてきたかを詳細に物語っていきます。もちろん、最終的な決定権は政治家(国会)にあるわけですが、年金のように複雑で高度な判断が必要なものは、官僚が綿密に計算し、各種資料を作成し、それを政治家に提示して最後に決めてもらう形になります。
 本書では、それぞれの年金官僚の名前を出して、在任当時に何をどのように考えていたか、綿密に記述していきます。
 オーツは、通読しても、そんなにおもしろい内容ではないと感じました。
 主な理由として、著者が自分なりの視点・主張を強く打ち出すスタイルではなく、客観的に過去に行われた議論を追いかけることをメインに記述したことがあるでしょう。著者としては、年金の現状が過去のさまざまな決定の積み重ねの結果として成り立っているので、現状をきちんと述べるためには過去のいきさつを把握しておくべきだと考えたのでしょう。しかし、さまざまな立場の人がそれぞれの考えで手を加えてきて現状があるのですから、年金制度はどうしたって複雑怪奇なものにならざるを得ません。
 というわけで、オーツはこれから年金制度をどうしていくのか、どうなっていくのかに興味がありましたので、この本を読んだのですが、著者のねらいとはちょっと視点がズレていたので、あまりおもしろくないように感じたのだろうと思います。
 巻末には4ページに渡る参考文献が掲載され、著者の勉強ぶりがうかがえます。週刊ポストや週刊文春などの記者を長く続けてきたとのことですが、たくさんの年金官僚たちに取材しており、まさに著者の経歴を活かした記述になっていると思います。
 目次は以下の通りです。

序 章 元霞が関トップの遺言
第一章 まやかしの「100年安心」
第二章 小山学校
第三章 年金局長の野望
第四章 河童の涙
第五章 年金不信の正体
第六章 大蔵省資金運用部
第七章 民主党年金改革の蹉跌
第八章 GPIF改革の真相

参考記事=https://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/52095685.html
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2025年04月28日

鈴置貴史(2024.9.20)『韓国消滅』(新潮新書)新潮社

 オーツが読んだ本です。
 分量は新書で約200ページですから、気軽に読めます。
 『韓国消滅』とは、ぶっそうな表題ですが、第1章「世界最悪の人口減少」と直接関係します。韓国の出生率は、2023 年時点で 0.72 しかなく、このままで行くと本当に人口が減って韓国という国自体がなくなってしまいます。だから、「韓国消滅」は大げさではなく、現実に起きている変化なのです。
 ではなぜ出生率が世界で最低なのでしょうか。これが本書が一貫して述べているテーマというわけです。
 第1章では、日本よりも急激な少子高齢化が起こっている現状を記述しています。経済成長がマイナスになるだけでなく、高齢者に対する介護が放棄され、若者が外国に脱出する事態になっています。兵力も維持できないので、その代わりに核武装をという世論があるとのことです。
 こうなったのは、IMF 危機が根源的理由だそうです。
 第2章「形だけの民主主義を誇る」では、韓国(人)の考え方として、単に「先進国」の称号がほしかっただけで、真の意味の民主化はなされておらず、「民主主義」が形だけの桃になっている有様が描かれます。「半導体を作る李朝」という言い方が出てきますが、社会体制が古いままで人々の考え方が成熟しておらず、今の韓国を一言で物語っています。経済面から見ても「経済民主化」はなされておらず、政治家だけでなく、財閥のトップなど韓国のリーダーたちの振る舞い方も目に余るものがあります。
 第3章「米中の間で右往左往」では、政治の世界で大統領を初め韓国の歴代政権が確たる方針も持たずに右往左往してきた歴史を記述しています。
 第4章「日本との関係を悪化させたい」では、韓国人が考える歴史をまとめて述べています。章の名前は、それを一言で述べています。韓国は、日本を見下そうとし、植民地になったことなどなかったという歴史を子供たちに教えています。
 韓国の少子化は、第2章から第4章までに描かれる韓国のあり方と密接に関わっているようです。こういう韓国に嫌気が差して、少子化がますます進んでいると考えられます。となると、少子化を止めることは極めて困難ということになります。韓国のあり方を変えるなんてことは数十年程度でできることではありません。政治や経済を変えるだけでなく、社会のあり方を変え、人々の一人一人が自分の考え方を変えることがないといけません。そんなことが数十年程度でできるとも思えません。となれば、韓国はこのままであり続けるだろうし、つまりは将来的に「消滅」してしまうということになります。
 本書を一読して、韓国を長く見てきた著者から韓国をどう見るべきかということをおそわった気分になりました。今まで日韓の間でさまざまな問題が起こってきましたが、なぜそんなことが起こるのか、その通底にあるものは何かということがはっきりしないので、こういう問題をどう解決するかがわかりませんでした。そんなとき、本書を読めば、韓国人が何をどう考えてこういう問題が起こるのかがある程度理解できるような気持ちになります。
https://amzn.to/42o5Dx1
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2025年04月13日

二宮謙児(2017.7.18)『山奥の小さな旅館が連日外国人客で満室になる理由』あさ出版

 オーツが読んだ本です。
 タイトルに引かれて読む気になりました。
 著者は大分県湯布院町・湯平(ゆのひら)温泉にある「山城屋」の代表を務めています。小さな旅館のようですが、インバウンドの波に乗って、外国でむしろ有名になっています。どうしたらそのようになるのか、著者の経験を語った本です。
 この旅館は、客が押し寄せるだけではなく、完全週休二日制を実現し、働く側にも配慮しています。
 なぜこんなことになるのか、本書にはそのノウハウが十二分に語られています。
 オーツがこの本を読んだ限り、著者に(事務的、経営者的な)能力がありITにもくわしいことに加えて、著者が実にまめな人であることが理由のようです。いろいろな機会に自分の旅館をアピールすることを忘れません。外国人の宿泊客に必要なものは何なのかを考え、客に「安心感」を持たせるべく、「おもてなし」の心で接していきます。外国語が堪能ではないようですが、そこはITに補助してもらって独自のやり方を自分で築いていきます。
 だから、著者と同様のことを他の地域でもやれるかというと、ちょっとむずかしいかもしれません。しかし、チャレンジ精神があれば、こういうことも可能になるでしょう。実例がここにあるわけですから、あとは「マネをする」戦略をとればいいわけです。
 オーツは、この著者がすばらしいと思います。この本を一読して、日本中の旅館の経営者がこんな感覚を持っていたら、それぞれの旅館がもっと発展するのではないかと思いました。
 一方では、インバウンドの影響の大きさに驚きました。もう、日本人相手(だけ)の旅館ではやっていけないのですね。すべての旅館が否応なく外国人対応を迫られているわけです。日本語が十分でない外国人がたくさんいますが、旅館側に外国語の能力が十分にないときでも、どうすれば外国人に対応できるのか、考えられるヒントはこの本に詰まっています。
 旅館に限らず、いろいろな業界でインバウンドの影響がますます大きくなっていきそうです。どうやってその波に乗っていくかが大事です。この本は、日本社会の今後の変化の方向性の一部を物語っているようです。
https://amzn.to/3FXiWx4

 同じ著者による続編『山奥の小さな旅館に外国人客が何度も来たくなる理由: 「また行きたい!」を生む新インバウンド戦略』もあります。こちらも読んでみたいと思いました。
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2025年01月22日

養老孟司(2006.1.20)『超バカの壁』(新潮新書 149)新潮社

 オーツが読んだ本です。
 図書館にあった本で、特に意味もなく手に取って読み始めたらおもしろかったので、借り出して全部読むことにしました。
 内容は、さまざまな質問などに著者が答えるというようなことです。編集者が質問したり、読者の質問に答えたりする中で、それぞれを関連するもの同士集めて一冊にしたというわけです。だから、首尾一貫した主張があるわけではなく、さまざまな世の中の現象・事件・問題などを著者がどう見ているかが書かれています。
 読んでみると、そこには著者の考え方というか、ものの見方のようなものがうかがえて、そのあたりがオーツがおもしろいと感じたことなのでしょう。
 目次は、以下のように区分されています。
1 若者の問題
2 自分の問題
3 テロの問題
4 男女の問題
5 子供の問題
6 戦争責任の問題
7 靖国の問題
8 金の問題
9 心の問題
10 人間関係の問題
11 システムの問題
12 本気の問題

 こうやって並べると、実に広い話題が挙げられていることがわかります。著者の広い見識がうかがえる内容です。
ラベル:養老孟司
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2025年01月06日

池田信夫(2024.8.20)『脱炭素化は地球を救うか』(新潮新書 1054)新潮社

 オーツが読んだ本です。
https://www.shinchosha.co.jp/book/611054/
https://www.amazon.co.jp/%E8%84%B1%E7%82%AD%E7%B4%A0%E5%8C%96%E3%81%AF%E5%9C%B0%E7%90%83%E3%82%92%E6%95%91%E3%81%86%E3%81%8B-%E6%96%B0%E6%BD%AE%E6%96%B0%E6%9B%B8-1054-%E6%B1%A0%E7%94%B0-%E4%BF%A1%E5%A4%AB/dp/4106110547
 新書ですが、薄い感じです。厚さは 8mm しかありません。172ページほどの分量です。
 しかし、内容は濃いと思います。題名には、『脱炭素化は地球を救うか』で最後に「か」が付いていることからわかるように、著者の主張を簡単にまとめれば「脱炭素化は地球を救わない」ということです。いろいろなところから引用した豊富な資料(グラフや図表を含む)があり、その主張を裏付けます。
 オーツは、本書を一読して、著者の主張に全面的に賛同を覚えました。
 以下、各章ごとに内容を簡単にまとめます。

序章 地球は「気候危機」なのか
 人類が気候変動で大量絶滅するというのはウソである。都市の暑さの原因は気候変動ではなく、ヒートアイランド現象である。気候研究者は、研究費をもらうために、気候危機という方向へのバイアスがある。

第1章 人間は地球に住めなくなるのか
 人間の出す温室効果ガスの影響は小さく、長期的原因は太陽活動と地球の公転である。異常気象の被害は劇的に減っており、温暖化で農業生産はむしろ増えるから、地球温暖化は命を救うものである。

第2章 「グリーン成長」は幻想である
 「カーボンゼロ」でもうかるというのは錯覚である。脱炭素化と経済成長は相反するものである。

第3章 環境社会主義の脅威
 「脱成長」では何も解決せず、地球環境を改善するのは豊かさである。京都議定書はEUの(政治的な)罠だった。温暖化は熱帯の防災問題に過ぎない。

第4章 電気自動車は「革命」か
 電気自動車で脱炭素化はできない。EUが電気自動車を政治利用しているだけだ。

第5章 再生可能エネルギーは主役になれない
 再エネ賦課金は40兆円と巨額である。「カーボンフリー」には莫大なコストがかかる。

第6章 電力自由化の失敗
 再エネ優遇で電力が不安定化した。電力自由化で電気代が上がったので、今は電力自由化を巻き戻すべきときだ。

第7章 原子力は最強の脱炭素エネルギー
 原子力はもっとも安全なエネルギーだから、原子力政策の大転換が必要だ。

第8章 脱炭素化の費用対効果
 「ネットゼロ」のコストは毎年4.5兆ドルと莫大だ。脱炭素化の費用はその便益よりはるかに大きい。

終章 環境社会主義の終わり
 1.5℃目標は無意味で、むしろ化石燃料は命を救うものだ。

 この本を読むと、世界中で地球温暖化を騒いでいることがバカらしく思えてきます。
 日本も、脱炭素化を目指しているわけですが、なぜこんなことをやっているのか、わからなくなってきます。日本の政治家の判断力なのでしょうか。それともオーツの知らない何かがあるのでしょうか。
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2024年08月04日

武者野勝巳(2015.8.31)『誰も言わなかった居飛車穴熊撃滅戦法』マイナビ

 オーツが読んだ本です。
 著者とは、実はオーツが高校生だったころ(約50年以上前)、会ったことがあり、その後も何かと交流があったので、この本を読んでみました。ちなみに、武者野さんは2023年に死去しています。
 将棋の本なので、将棋を知っている人しか読まないと思いますが、普通の将棋本と違うところがあります。
 第1に、ところどころに挟まったコラムです。著者の若かりしころの苦労話などが書かれていますが、棋士になる前の一面を知ることができ、大変おもしろいと思いました。p.162 では、オーツの知っている関係者の話が出てきます。
 第2に、第7章として復習問題が載っていることです。すべてが次の一手問題になっており、しかもその内容は本文中に書かれていることばかりです。実際オーツが解いてみると、大半は正解できましたが、一部不正解があり、解答ページに記載されている本文の参照ページを読むと、そこに明快に書かれていることばかりです。つまり、本文を読み進めるときは、そうだ、そうだと思いながら読むわけですが、しかしその内容をきちんと記憶しているわけではないということです。読み終わるとともに一部は忘れてしまうということでしょう。時間をあけて再度読むことで、ある部分は取り返せるのでしょうが、時間の制約もあるので、なかなか大変なことのように思います。
 何はともあれ、オーツが将棋の本を通読したのは久しぶりな気がします。自宅の書庫には将棋の本も数十冊はあるのですが、内容はみんな忘れたも同然です。
 これからは、たまにはこういう将棋の本も読んでみたいと思いました。
 武者野さんに合掌。
ラベル:武者野勝巳 穴熊
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2024年04月01日

川村秀憲(2023.10.12)『ChatGPT の先に待っている世界』dZERO

 オーツが読んだ本です。最近の AI の進歩はすさまじく、特に ChatGPT に代表される生成 AI は、現在の注目の的でもあり、今後どうなっていくのか、大いに興味を引くものですから、この本を読む気になりました。
 著者は AI の研究者なので、タイトルにあるような課題について考えるには最適の人のように思えます。
 しかし、本書を読んだ結果からいうと、あまり大した内容ではないように感じました。
 序章「六十七年の時を経て」は、人工知能の研究・開発の流れを描いたもので、まあこの方面に関係したことのある人なら常識的な内容といえるかと思います。
 第1章「人工知能は自ら学習する――脳の仕組みとディープラーニング」は、機械学習がどんなものかを解説したものです。これまた常識的な内容です。
 第2章「本能と知能と、生と死と――「知能」と「人工知能」の違い」は、人工知能=AI がどんな特徴を持っているか、人間の脳と比べながら記述しています。内容は理解できますが、両者の違いがあまりにも大きいので、両者を比べてもあまり意味がある結果になるとも思えません。
 第3章「ChatGPT で見えた次のフェーズ――人工知能研究の現在地と近未来」は、ChatGPT の解説として優れた記述だと思います。今までの AI の研究とずいぶん違ったアプローチで開発されてきたことがわかります。オーツはこの章を大変おもしろく読みました。
 第4章「人工知能との「協働」シナリオ――「強い人工知能」と「弱い人工知能」」では、将棋や囲碁を例に挙げつつ、人工知能が発達してきたにもかかわらず、それは「弱い人工知能」であって、「強い人工知能」はこれから生まれてくるという話です。話としてはおもしろいのですが、「強い人工知能」は空想的でもあり、現実感がないような印象を持ちました。
 第5章「新たな価値の出現と富の再配分――人工知能時代のパラダイムシフト」は、人工知能が出現した後の人間社会を描いており、この章がこの本の中心部分のように思いました。オーツが本のタイトルを読んで、まさに知りたいと思った内容が第5章です。
 第6章「人工知能が人工知能を開発する日――研究の最前線と課題」は、未来を予測する話で、人工知能がいろいろなことを担当するようになった時代がどんなものになるかを描いています。空想をたくましくすれば、こんな社会になるのかなという印象でした。
 第7章「代替される「知能」、代替されない「芸術」――人間に残される仕事は何か」は人工知能の発達にともなって人間が何をするようになるかという話で、これも空想的な内容といえると思います。
 第8章「一変する「教育」の風景――人工知能時代に必要な自発的「学び」」は突如として教育論が語られます。人工知能の登場にともなって学校教育が変わっていくのは当然ですが、今の段階ではこれも空想的な内容ではないでしょうか。
 終章「人間とも人工知能とも「仲良く」する力」は、まとめですが、お題目程度の内容です。
 というわけで、オーツが期待した内容も書かれていましたが、それはかなり限定された部分であって、本書のかなりの部分はタイトルから期待されるものとかなりズレている印象を持ちました。
 現実的に開発されている「現在の AI」と、その先にある「未来の AI」のギャップがあまりにも大きく、どの辺に軸足を置いて記述するか、悩ましいところです。前者を中心にすれば、着実な記述が可能ですが、話としてはあまりおもしろくなさそうです。後者を中心にすれば、話はおもしろくなりますが、想像・空想が広がることになり、「ホントかな」という非現実感が出てきてしまいます。このあたりのバランスが悩ましいところですが、この本を読んだ限りでは若干上滑り的な印象を持ちました。
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2024年02月20日

松原隆彦(2023.10.5)『文系でもよくわかる 宇宙最大の謎! 時間の本質を物理学で知る』山と渓谷社

 オーツが読んだ本です。
 タイトルに引かれて読んでみる気になりました。
 本書は5章構成です。
1章 「物理学」の時間――物理学者は時間をどう扱ってきたのか――
2章 時間の「はじまり」――それは宇宙のはじまり――
3章 時間の「おわり」――宇宙に終わりは訪れるのか――
4章 時間の「道具」――時計が人々の生活を変えた――
5章 身の回りの時間――1日はいつも24時間か――
 本のタイトルから見ると、時間というものを物理学でどうとらえているかを論じたものということになるかと思います。しかし、本質的にその内容は第1章で示されます。それでも、時間を時間としてとらえるというよりは、空間なり宇宙なりをどうとらえるかという視点から時間を論じています。
 有り体に言えば、本のタイトルに示される内容を知りたい場合、第1章だけを読めば十分ではないかと思います。
 第2章と第3章は、どちらかといえば宇宙論であり、時間と無関係ではないものの、時間の本質とは若干論点がずれているように思います。
 第4章は時計の話で、第5章は心理的な時間まで話を広げていますので、時間そのものを物理学的にとらえる話とはだいぶ違ったものになっています。
 というわけで、時間について知りたいと思って本書全体を読むと、ちょっと肩すかしを食らったような気分になりました。
 本書のタイトルに引かれて読もうと思った人は、答えを知るために第1章の40ページほどを読めばそれで十分でしょう。
 本書では数式が徹底的に避けられています。「文系でもよくわかる」ためには数式を一切出さないという方針で執筆されたのでしょう。本書を通してたった1箇所だけ数式が現れます。p.101 に「F=ma」(F が力、m が質量、a が加速度)というのがあります。これは、数式といえば数式ですが、単なるかけ算ですから、あまり数式らしくないものですし、これを省いて文章中に説明を盛り込んでも理解できるところです。数式を省けば「文系でもよくわかる」のでしょうか。オーツはこの執筆方針がかなり疑問に思えます。
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2024年02月04日

土井善晴(2021.11)『一汁一菜でよいという提案』(新潮文庫)新潮社

 オーツが読んだ本です。
 本書のタイトル1行だけで、本1冊分の内容がわかってしまいます。実際読んでみてもそんな感じでした。
 毎日の家庭での食事は1回に一汁一菜で十分だという話です。ご飯(白米)の他に、一汁ということで味噌汁を作ります。一菜ということでおかずですが、これは漬物でもいいということです。こうして、ご飯と味噌汁と漬物というシンプルな食事を毎日続けていくのがよいという考え方です。
 なぜこれでいいのか、具体的に味噌汁の具材はどうするのかなど、関連する事項をあれこれ書いていくと、本1冊の分量になってしまったというわけです。
 オーツが読んだ限りでは、関連する思想というか、主義・主張というか、そういったものが書かれている面が強いと思いました。そういうのをはしょっていくと、つまり結論はタイトル1行だけになってしまいます。
 こういうシンプルな食事を続けていく場合、ハレの場で懐石料理などを食べると、それはそれでいっそうおいしいと感じられるようになるのでしょうね。
 では、オーツがこういう食事法にするか。たぶんしません。オーツの夕食は、主食を食べずに酒を飲むやり方です。それを数十年も続けてきています。そして1日2食です。朝を食べれば昼を食べず、昼を食べるときは朝を食べません。そういう食事パターンを変更するほど本書に説得力があったかというと、オーツはそれほどでもないと思いました。土井式の食事の思想は、それはそれでいいと思いますが、オーツがそれを採用するかどうかは別の基準になります。
 和食のコース料理の一番最後に出される「食事」というのが、ご飯、味噌汁、漬物だったりするわけですから、これだけを食べるというのも考えられる食事法です。家庭では、あまり手間をかけずに準備ができるということも大事でしょう。本書は、料理人・土井氏のふだんの食事内容がうかがわれるものでした。
 こういう内容なら、これから自炊を始めようとする人などに向いているように思います。自炊というと、一念発起して、十分な手間をかけておいしい料理を作ろうとする人が多そうですが、それとはずいぶん異なる「肩の力を抜いた」食べ方・生き方が描かれています。
 文庫本でもあり、手軽に読めるのはいいことです。オーツは電車の中で1時間半くらいで読み終えてしまいました。
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2023年08月22日

安間伸(2018.8.31)『高知能者のコミュニケーショントラブル』KDP (Kindle Desktop Publishing)

 オーツが読んだ本です。「IQ が20違うと会話が通じない」という副題が付いています。もともと Kindle 版ですが、知り合いから勧められて紙で本の形になったものを読みました。
 内容は、本のタイトル(副題)でほぼわかってしまいます。
 200 ページ以上ある本ですが、活字がかなりスカスカの形で組んであり、読み終わるまであまり時間がかかりません。
 知能が高くなると友達が減るという話から始まり、高 IQ 者から世界を見ると相手がチンパンジーに見えるという話になります。高知能者は、学校などでも(わかりすぎてつまらなくなり)悩むことが多く、回りからはある意味で障害者のように見えるというわけです。こういう高 IQ 者は日本社会で暮らしにくくなり、幸せな生き方を求めて知能の高い学校、さらには知能の高い職場に行くのがよいということになります。
 全体の趣旨としては、納得する面もあります。オーツの経験でも、相手がはるかに低知能のとき、話が通じないことはよく経験しますし、将棋を指しているときでも、相手がすごく弱い人の場合はなぜそんな指し手を指してくるのか、まったく理解できないということになります。逆もまた真なりで、相手がはるかに高知能のときは何を言っているのかちんぷんかんぷんですし、将棋の非常に強い人と指すと、なぜ相手がそういう手を指すかわからないうちに何となく形勢を損ねていることが多いものです。
 この本を読んで、一番の不満は、主張がはっきりしている割りに、なぜそう考えられるのか、その根拠となる他者の著作物を一切引用していない点です。本文を読んでいると、安間氏はたぶん何かの参考文献を読んでいるのだろうと思われるところがありますが、そういうところでも、文献を一切示さない主義のようです。結果的に、お話としては自然な流れのうちに読み終えることができるのですが、「本当なのか?」と感じるところがいろいろありました。そういうところでは、根拠を示してほしいと感じるわけです。

高知能者のコミュニケーショントラブル
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2022年09月23日

下條正男(2021.3.5)『竹島VS独島』(ワニブックスPLUS新書)ワニブックス

 オーツが読んだ本です。「日本人が知らない「竹島問題」の核心」という副題が付いています。
 著者は、拓殖大学教授であるとともに、島根県「竹島問題研究会」座長でもあります。
 本書は竹島問題を扱った本ということになるでしょう。竹島は、韓国が不法に占拠している島です。オーツは、日韓両国が主張している地図などの文献の根拠などを挙げ、それをどう読むべきかなどを論ずる本かと思って読んだのですが、全然違いました。そんなことを書いてもいいけれど、それは別の本に書いたことだし、そんなことを書いて主張しても、韓国には無意味だということなのでしょう。本書はむしろ、韓国がこの問題をどのように扱っているか(著者は「独島」PRと読んでいます)という点に主眼を置いて記述しています。
 そういう現状を鑑みると、日本(の外務省)はいったい何をやっているのかという気持ちになってしまいます。実際、何もやっていないのではないかということです。著者は、民間人としてこの問題に対処してきました。そのような行動のごく一部でも政府が行うようになっていれば、韓国側に対する態度も変わってきたはずだと思うのですが、現状はそうではありません。日本から韓国側に「遺憾だ、遺憾だ」ということは伝えているようですが、そんなことでは韓国側の主張に対する反撃にも何にもなりません。
 本書は、日韓両国の間にどういう対立があり、どういう経緯があり、現在に至っているかを克明に記録し、論じています。
 竹島問題、およびその派生としての「東海」呼称問題について、第一人者から語られる内容は、具体的で興味深く思いました。
 それにしても、日本国内にいる“良心的日本人”は、何とかならないものでしょうか。
 目次は以下の通りです。
序 章 韓国の“独島PR”作戦
第1章 島根県VS韓国
第2章 日本政府VS韓国政府
第3章 「良心的日本人」VS「半日種族主義」
第4章 江戸幕府VS安龍福
第5章 日本海VS東海
第6章 日本VS中露韓「半日包囲網」
終 章 島根県竹島問題研究会の志を継ぐ

 さまざまな内容を新書1冊分に詰め込んだ、濃い内容の本でした。

竹島VS独島
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2022年08月29日

岩田清文・武居智久・尾上定正・兼原信克(2022.5.20)『自衛隊最高幹部が語る台湾有事』(新潮新書)新潮社

 オーツが読んだ本です。
 表題が本の内容を端的に表しています。台湾有事がどのようにして起こるかを述べています。
 第1部は、台湾有事シミュレーションです。四つのシナリオが展開されます。いずれのシナリオも、自衛隊だけでなく、政治家も参加して実際に行われたシミュレーションに基づいて書かれています。とても具体的で、実際そうなるだろうと思わされる内容です。
・シナリオ@グレーゾーンの継続 第3次台湾海峡危機(1995-96年)型
 サイバー攻撃があったり、台湾機が石垣島に緊急着陸したりというグレーゾーンが続く場合を考えています。
・シナリオA検疫と隔離による台湾の孤立化 ベルリン危機(1961年)型
 台湾に感染症が広まったというウソから始まります。それによって中国が台湾の海上封鎖を行うという場合です。
・シナリオB中国による台湾への全面的軍事侵攻
 台湾有事というと一番普通に考えられるシナリオがこれです。邦人輸送はどうするのか、尖閣諸島が占拠されたらどうするのかなど、具体的なシミュレーションが展開されます。
・シナリオC危機の終結
 台湾有事が始まった後、どうやってそれを終結させるかを論じています。

 いずれのシナリオも問題点続出で、現状では、適切な対応が極めてむずかしいことがわかります。
 第2部は4人の著者による座談会形式で、台湾有事に備えるにはどうしたらいいかを論じています。どう考えても準備不足であり、現状ははなはだ心配な状況です。
 何が必要か、本書中に十分に指摘されていますので、政治家たちには、最初の準備段階として、こういう問題を議論するところから始めてほしいと思いました。
 具体的な記述がちりばめられており、大変参考になる1冊でした。
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2022年08月03日

ジェフリー・ミラー、タッカー・マックス(2022.5.26)『モテるために必要なことはすべてダーウィンが教えてくれた』SBクリエイティブ

 オーツが読んだ本です。「進化心理学が教える最強の恋愛戦略」という副題がついています。橘玲氏の監訳ということで読んでみようという気になりました。
 若い男性向けに書かれた本です。これを読んで、正しいやり方で女性にアプローチするといいと思います。
 アメリカ人の二人が書いたものを大幅に圧縮したものということですが、p.308 には、「夜の娯楽が多く、短期的なパートナー探しに適した町(オースティンなど)もあれば、そうでもない町(シンシナティなど)もある。」といった言い方が出てきて、アメリカ社会についてよく知っている人ならば、うなずけるのでしょうが、オーツのようにあまりアメリカに縁のない人間には、まったく感覚がわかりません。そういうこともあって、基本的にはアメリカ人の若い男性向けの内容なのですが、日本人の場合にも当てはまると思われる部分は多く、若い男性が読むといろいろな意味で有用なのではないかと思います。
 もっとも、本一冊を読んだからといって、それだけでモテるようになるわけではありません。しかし、本書には、女の子が何を考えているのか、男性としてどう考え、振る舞えばいいかが明確に書かれています。
 今から半世紀も前にこんな本があったら、オーツも参考にしたかもしれません。もっとも、それでうまく結婚できたかどうか、それは何ともいえません。

モテるために必要なことはすべてダーウィンが教えてくれた
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2022年06月27日

橘玲(2021.12.20)『裏道を行け』(講談社現代新書)講談社

 オーツが読んだ本です。「ディストピア世界をHACK(ハック)する」という副題がついています。
 内容は、現代社会のありようを記述したものということになるでしょう。
 けっこうむずかしい内容が盛り込まれていました。各章ごとに参考文献が丁寧に挙げられていて、まるで学術論文を読んでいるような気分です。そういう意味で硬派の本といえるように思います。
 PART 1 は「恋愛をHACKせよ」ということで、モテる人とモテない人を対比しつつ、どうすればモテるようになる(それが恋愛をHACKするということ)のかを解説しています。自由恋愛が普通になり、世話好きのおばさんが居なくなってしまった現代はモテるかモテないかは実に大きな格差となっています。若者はこういうことに敏感でなければなりません。そして、ではどうするかを意識しなければならないと思います。
 PART 2 は「金融市場をHACKせよ」です。効率よく大金持ちになるにはどうすればいいかを実例を挙げながら解説しています。「天才」は確かにいるのです。ヘッジファンドの例などを出しながら、うまく立ち回った例が語られます。こういう「穴」を見つけられる人は、ぜひそうするといいでしょう。しかし、たいていの人はそういう大金持ちの真似をすることはできないと思います。地道に働くしかないでしょう。ギャンブルも同様の話で説明できます。
 PART 3 は「脳をHACKせよ」ということで、依存症の問題などを取り上げます。ネット中毒なども取り上げられます。オーツの孫も、小学生になり、テレビゲームにはまり込んでいます。その結果どうなるかが書かれています。恐い話です。
 PART 4 は「自分をHACKせよ」ということで、テクノロジーの進歩によって、サイボーグのように自分の身体を機械に置き換えつつ生きながらえる人生が語られます。目が見えない人に人工網膜で視覚を拡張する話などはまったく知りませんでしたので、おもしろく読みました。まずは、視覚障害者のために研究がスタートしますが、いいものができれば、視覚障害者でなくとも、自分の目で見るのでなく、機械を通して見るようになるのかもしれません。戦争による大けがで顔の一部が損傷してしまったような人を治療するために整形が始まったのに、今や美容整形が普通に行われるようになっている世の中になっています。だとしたら、自分の身体を機械に置き換えることも抵抗なく受け入れられるかもしれません。ALS という筋肉が衰えて自分で何もできなくなる難病がありますが、それにかかった人などは、アバターを通じて周りの人とやり取りするようなことで普通の人生を楽しめるのかもしれません。
 PART 5 は「世界をHACKせよ」ということで、人の生き方全体を論じる章です。お金を使わない生活、ものを持たない生活、最小限のもので生きていく考え方、働かない生き方、さらには残りの人生を生きていくだけの金を得て経済的に独立した生き方など、さまざまな考え方・いきかたが紹介されます。これからの世界をどう生きていくか、考えさせられます。
 著者の視野の広さには敬服します。もしも、50年早くこういう本に出会っていたら、オーツの人生も変わっていたかもしれませんね。もう、ときすでに遅しですが。

裏道を行け
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2022年04月06日

杉山大志(2021.6.22)『「脱炭素」は嘘だらけ』産経新聞出版

 オーツが読んだ本です。タイトルが内容を的確に表しています。
 目次は以下の通りです。
序 章 グリーンバブルは崩壊する
第1章 「CO2」は中国の超限戦だ
第2章 脱炭素は国民経済を破壊する
第3章 地球温暖化のファクト
第4章 気候危機はリベラルのプロパガンダ
第5章 脱炭素との付き合い方

 目次を見ても、本書の内容はよくわかります。著者は地球温暖化をいっさい否定します。そのため、脱炭素もまったく不要ということになります。
 科学的知見ということから見ても、地球温暖化は疑わしいように思いますし、現在の脱炭素化の傾向は異常だと思えます。
 しかし、現在のところ、地球温暖化は世界の各国が妥当だと考え、その対策を急速に押し進めているわけです。もしかしてそのような世界の大勢が間違っているとしたら、今後の全世界の基本方針の間違いということになり、その影響は極めて大きいものになります。
 研究者としては、世界の大勢がどうのこうのではなく、客観的データを調べ、それに従って判断していくべきであるということになります。その点で、著者の信念は妥当なように思います。
 というわけで、このような本が出版されることはとても重要なことだと思います。

 オーツは、このような趣旨の本を以前も読んだような気がします。検索してみると、以下のブログ記事がありました。
2019.12.7 渡辺正(2018.6.25)『「地球温暖化」狂騒曲』丸善出版
http://o-tsu.seesaa.net/article/472053698.html
オーツはこれらの本の記述のほうが(地球温暖化の危機を煽る記事よりも)信頼できるように思います。

「脱炭素」は嘘だらけ
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2022年04月01日

櫻井よしこ(2021.5.8)『赤い日本』産経新聞出版

 オーツが読んだ本です。
 本書はインターネット上の「言論テレビ」で放送された対談に加筆して出版されたものです。
 第1章「メディアの中国汚染」では、日本のマスメディアが以下に中国に傾斜しているかが語られます。いろいろな新聞社や放送局が取り上げられ、批判されています。中国が相当マスメディアに浸透していることが具体例とともに語られ、オーツは目からウロコが落ちる思いでした。
 第2章「「九条二項」の呪縛」では、尖閣問題を中心に取り上げ、憲法の九条二項が今の時代に合わなくなってきていることが語られます。
 第3章「「独裁中国」から逃げている」では、中国の進むべき方向性として毛沢東路線とケ小平路線の二つがあり、それが入れ替わったりするという見方が示されます。中国流の考え方を解説する一つの見方だと思いました。
 第4章「敵基地攻撃と学術会議」では、中国が砂漠で在日米軍基地を模した模型の基地を作り、そこでミサイル攻撃の練習をしている話が出てきます。日本で外国からのミサイルを防衛するには、敵基地攻撃が必要だということが述べられ、さらに日本学術会議がまともに機能しておらず、それどころかさまざまな反日行動をしていることが語られます。
 第5章「有事に動けない国」では、新型コロナの問題で明らかになった日本の医療体制の問題点を論じています。なぜ保健所がパンクするのか、医師会は何をしているのかなど、医療界の問題点を鋭く突いています。
 第6章「天安門事件の教訓」では、日本の外交の問題点を指摘しています。日米関係と日中関係を関係づけて見ていくといろいろわかることがあるという話です。
 本書には、複雑な図表などが出てくるわけでもないし、全体としてわかりやすいと思いました。元々が対談から派生したからでしょう。一般書として気軽に読めるものになっています。
 しかし、内容は濃いものがたくさんあります。日本をどう考えるべきか、これから日本はどうしていくべきか、考える材料がふんだんに提示されているような感じでした。

参考記事:
 http://ponko69.blog118.fc2.com/blog-entry-6184.html


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2022年01月27日

カルロ・ロヴェッリ(2019.8.30)『時間は存在しない』NHK出版

 オーツが読んだ本です。
https://www.amazon.co.jp/dp/4140817909/ref=cm_sw_r_awdo_navT_g_TA09VN6C00N5SFZW5HPG
 とある人に勧められて(というか、本自体をプレゼントされて)読むことになりました。
 オーツが読んだ限りでは、よくわからなかったという感想です。
 本書は全体で3章構成になっています。
 第1章は、現代の物理学の常識のような感じで、場所によって時間の流れる速さが変わるという話であり、まあ、納得できると思います。
 第2章がよくわからないところです。
 第3章では、人間の意識が時間というものを作り上げているといった内容で、哲学的にはそんなとらえ方もあるかなあといったところです。
 何がよくわからなかったかというと、場所によって時間の流れ方(早い/遅い)が変わるということはあっても、ある視点からすれば前後関係は変わらないわけです。だったら「時間が存在しない」という結論は話が飛びすぎているのではないかということになります。
 たとえば、地震が起こり、ビルが崩れ、その落ちてきた破片がぶつかって人が死んだとします。その流れを見ている人の視点では、必ずこの前後関係が成立します。他の場所(極めて遠方)にいる人が見たとしても、破片が落ちるスピードが変わるようなことがあっても、前後関係が逆転することはないと思います。前後関係が逆転したら、たとえば、ビデオの逆回しのように、地面に落ちた破片が飛び上がってビルが作られ、死んだ人が生き返るように見えるはずです。それでは、世界の認識が根底から崩れてしまうことになります。
 で、こんな疑いを説明してくれるのかと思ったが、そうでもないようです。
 物理学的に、時間が逆に流れる世界があってもおかしくないといえば、そうかもしれませんが、それは、この宇宙の外にある世界ではないでしょうか。ビッグバン以来の現宇宙に至る138億年の世界では、時間が逆転することはあり得ないと考えます。その間、重力(つまり万有引力)がずっと働いてきたわけで、我々はそういう世界の住人なのです。現実的に、我々が認識できるのはこの宇宙がすべてであり、そこから「外」に出ることはできないわけですから、そうである限り、我々は時間の流れは一方向だとする世界に縛られていることになります。
 というわけで、「時間が存在しない」世界はあり得るけれども、それはこの世界(現宇宙)の外というのがオーツなりの見方・考え方になります。


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