2017年07月24日

伊藤祐靖(2016.7)『国のために死ねるか』(文春新書)文藝春秋

 オーツが読んだ本です。「自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動」という副題が付いています。
 題名がすごいと思います。そして、著者は自衛隊の「特殊部隊」を作った人ですから、この題名に偽りはありません。
 内容は、まさに題名が物語るものです。死と隣り合わせで生きてきた人の言葉であり、重すぎる手記です。
 北朝鮮の不審船に対する海上警備行動で、緊迫した砲撃、さらには臨検を行うシーンは、読んでいて思わず引き込まれます。こんな経験をしてきたからこそ、自衛隊の中に特殊部隊を作ることになったときに白羽の矢が向けられたのでしょう。それにしても、臨検の実態を描くと、いやはやすさまじい話です。死と隣り合わせとはどういうことか、わかります。
 ミンダナオ島で出会ったラレイン(仮名)という女性の話もまたすさまじいものでした。水中格闘の実際を読んでいると、まるでオーツがそのような格闘を行っているかのようで、息苦しくなってきました。それ以外にも、ナイフの(戦闘場面での)使い方など、さまざまな話題に触れられるのですが、生々しい描写であり、死を覚悟した格闘・戦闘とはこういうものかと思いました。
 本書を読み終わったとき、オーツは本当にすごい人がいるものだと思いました。まさに戦闘のプロというべきでしょう。
 こういう人がいるから日本の平和が守られているのだという感覚になりました。
 こういう本を読むと、中国偽装漁船の海上保安庁の巡視艇に対する体当たり攻撃が思い出されます。民主党政権時代でしたが、その船長は日本でさばかれることもなく、釈放されたのですからねえ。何という対応なのでしょう。この事件では、おかしな対応をすることによって、国益をひどく損ねたように思います。


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2017年07月21日

鈴木紀之(2017.5)『すごい進化』(中公新書)中央公論社

 オーツが読んだ本です。「「一見すると不合理」の謎を解く」という副題が付いています。
 進化の話の中で興味深い例をいろいろ出して、進化のおもしろさをときます。
 進化によって、動植物がとても細かいところまで発達してきたことは、まさに驚きに値します。動植物がこんなにも精巧にできているという事実だけでもすばらしいことですが、なぜそうなったのかが説明できるというのは、さらに興味をかき立てられます。
 もっとも、そういう説明が正しいのか否か。そこはなかなか断定しにくいことでしょう。今は正しいとされている説明も、数十年後さらには数百年後、全然別の説明がなされているかもしれません。
 取り上げられている話の中でオーツが一番興味を持ったのは、性がなぜ存在するかを説いた部分でした。有性生殖はなぜ無性生殖に「勝った」のでしょうか。p.174 以降に説明がありますが、有性生殖と無性生殖が混在する条件で考えると、多数のメスと少数のオスが生まれ、オスが自分の遺伝子を残す確率が高くなるという意味で有利になる(メスを選び放題になる)のでオスが増えていき、半数までになるという説です。巧みな説明だと思いました。
 本書は、気楽に読める楽しい本だと思います。

参考記事:
http://agora-web.jp/archives/2026535.html


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2017年07月14日

昭文社(2017)『街の達人 7000 でっか字 東京23区 便利地図』昭文社

 オーツが自宅で愛用している地図です。
 数年おきに買い換えています。手元にある地図の奥付で見てみると、2008 年、2013 年、2017 年発行です。その前から買っていたように思いますが、2008 年以前のものは、今は手元にありません。もしかすると、それ以前のものは1万分の1の地図だったような気もしています。
 数年経つと、いろいろ町の風景が変わるものです。オーツの自宅の近くにある「南長崎はらっぱ公園」ですが、2017 年版はそのまま掲載されていますが、2013 年版では「西椎名町公園」となっています。こんなことを通じて、オーツは 2013 年版がやや古くなったと感じて、最新版を購入する気になったのでした。
 こういう地図を毎年のように改訂していくのは大変なことでしょう。細かい現地調査を繰り返すしかありません。昭文社はそれだけの手間をかけていると思います。すごい努力です。その成果を 2,300 円(+消費税)で入手できることはすばらしいことです。
 そして、東京の大部分を 1:7000 の細かさで描き出している点もありがたいことです。オーツは、歳を取ってきて、細かい文字が見えにくくなってきているのですが、この縮尺だとまあまあ見える大きさです。こういう点も含めて、よく考えられている地図だと思います。
 最近、ネット上の地図が一般化して、こういう紙の地図が売れなくなっているという話ですが、オーツは、今でも、紙の地図にはそれなりのメリットがあると信じています。これからも数年おきに買い換えるだろうと思います。ただし、当然ですが、改訂版が発行され続ける限りです。


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2017年06月24日

渡辺惣樹(2017.1)『戦争を始めるのは誰か』(文春新書)文藝春秋

 オーツが読んだ本です。「歴史修正主義の真実」という副題が付いています。
 タイトルに引かれて読み始めたのですが、実際読み始めると、326ページもあって、読み終えるのが大変でした。中身は歴史学の本でした。第一次世界大戦の終わりあたりから記述が始まり、第二次世界大戦の始まる直前までを描きます。
 歴史はむずかしいものです。現在は、第二次大戦が終わった後であり、ドイツや日本が負けたことが事実です。また、アメリカやイギリス、フランス、ソビエト連邦などが勝ったことも明らかです。その場合、勝った側から見た歴史が語られるようになります。日本やドイツは侵略者だったということです。しかし、本当にそうでしょうか。本書は、対象となる期間の資料を丹念に読み解き、日本やドイツが勝手に戦争を始めたというような単純な理解ではいけないことを述べていきます。むしろ、チャーチルやルーズベルトが好戦的だったし、ある意味では彼らが戦争を始めたとさえ言えるのではないかと考えられます。しかし、戦争後は、戦争に勝った側からの歴史観が敗戦国に押しつけられます。こうして、日本やドイツは一方的に断罪されたりするわけです。こういう歴史家を釈明史観主義者(アポロジスト)と読んでいます。そうでない見方が歴史修正主義です。
 世の中は釈明史観主義者ばかりになっています。戦勝国から見る方が戦後の流れなどがわかりやすいのはその通りです。しかし、戦前のことを見るときは、その後の戦争とその結果は無視して(知らないことにして)戦前の事実を淡々と集め、それを見ることで戦前史を語るべきでしょう。そうすることで新しい側面が見えてくるものです。その意味で、本書は、戦前の歴史を新たな視点から捉え、描き出しています。
 ただし、タイトルに反して、記述内容は学問的にしっかりしていますので、読み進めるのはかなり大変でした。読んだ後には、著者の見方が理解できるようになり、世界史が違って見えてきます。その点でおもしろいと思います。

参考記事:
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51994050.html


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2017年06月18日

常見陽平(2017.4)『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社新書)祥伝社

 オーツが読んだ本です。
 タイトルに引かれて読んでみました。
 第1章「日本人は、どれくらい残業しているのか?」では、いろいろな統計資料などを駆使して、残業時間を把握しています。サービス残業などもあったりして、なかなか難しい問題ですが、日本人は残業が多いようです。まあオーツの実感としてもそうです。ドイツに観光旅行で行ったときに、夕方になるといろいろなお店が閉まってしまったりしました。従業員はしっかり休んでいます。そういうのに比べると、日本はサービスが行き届いており、24時間営業だったりします。こういうことでは残業も多くなりそうです。
 第2章「なぜ、残業はなくならないのか?」では、残業の発生メカニズムを論じます。企業としても、人件費の節約という効果があり、従業員にしても手取りの増加という効果があります。
 第3章「私と残業」は、著者が会社勤めをしていたときの個人的残業経験です。リアルな話です。企業とはこういうものなのでしょう。オーツは経験がないので、わかりませんが。
 第4章「電通過労自死事件とは何だったのか?」では、最近の世間をわかせた事件を取り上げて解説しています。オーツは「電通鬼十則」というのがあることを知らなかったので、こういう企業風土に驚きました。博報堂も出てきますが、勤務状態は同様なのかもしれません。
 第5章「「働き方改革」の虚実」では、最近の政治課題の一つを取り上げ、「働き方改革」の持つ問題点を指摘しています。
 第6章「働きすぎ社会の処方箋」では、どうしたら働きすぎを抑えることができるかを論じていますが、ここまでの記述を読んでくると、この部分はなかなか受け入れられないように思えてきます。
 本書は、全般的におもしろかったですが、今の日本のあり方を描く点ではよかったものの、ではどうするべきかという話はイマイチのようです。社会の変革につながる話なので、むずかしいのは当然ですが、オーツはもう少し筋を通すような、ドラスティックな改革の方向性を論じるほうがいいのではないかと思いました。理想はこうだと進むべき道を示し、そこを目指して社会が変わっていくようにすることが大事ではないでしょうか。

参考記事:
http://agora-web.jp/archives/2025261.html


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2017年05月27日

リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット(2016.11)『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』東洋経済新報社

 オーツが読んだ本です。「100年時代の人生戦略」という副題が付いています。
 まもなく、たいていの人は100歳まで生きることになるので、そういう状況でどう生きていったらいいかを論じた本です。今までは、教育→仕事→引退という3段階の生き方が主流でしたが、これからは、もっと多段階になるということです。仕事をいろいろ変わりながら勤務してみたり、新しい仕事のために教育を受け直したり、といったことが増えていきます。そうしなければ、単に「引退」段階が長くなるわけですが、それでは年金が持ちません。
 高齢化が進んだときに、雇用がどうなるのか、お金以外の見えない「資産」をどう考えるかをはじめとして、未来の社会を展望した話が出てきて、おもしろく読めました。
 とはいえ、どうもアメリカに住んでいる人を対象にした本のように感じました。日本人もアメリカ人と並行して(いやアメリカ以上に)高齢化が進んでいますので、同様の変化が訪れるはずですが、それを論じているわけではありません。日本人の場合、アメリカ人と変わらないのか、オーツは心配になりました。やはり、日本人は日本人として生きることが普通ですから、そういう視点で書かれた本が必要なのではないでしょうか。訳書でなく、新しい本の書き手が現れることを期待したいところです。
 そんなわけで、全体として、この本はよく書かれているとは思うものの、どこか現実的ではないように思えてきて、あまりのめり込めませんでした。
 そして、400ページは長すぎるように思いました。もう少し端的な書き方で短くしてもらえるとありがたいと思います。


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2017年05月12日

藤沢数希(2017.2)『損する結婚 儲かる離婚』(新潮新書)新潮社

 オーツが読んだ本の中で、トップ5に入るくらいの痛快な本でした。
 これから結婚する若い人にぜひ読んでもらいたいものです。
 日本の結婚制度がどうなっているか、離婚するときにどんな問題が起こるかを知ってから結婚するべきだと思いますが、オーツはそんなことも知らずに勢いで結婚してしまいました。オーツの場合、妻とは40年近く連れ添ってきて、離婚をしていないのですから、結果的によかったといえます。多くの夫婦はそんなものでしょう。しかし、そうはならなかった夫婦もいます。そんなことを考えると、こういう本を事前に読んでおくのも意味があるように思います。
 本書の重要ポイントは、高所得者が離婚しようとするとき、配偶者に多額の現金を取られてしまうことがあり、それが日本の司法によって妥当とみなされているということです。
 こんなことは、今までどの本にも書かれていなかったのではないでしょうか。しかし、現実の離婚裁判では、こういうことが現実に起こっており、むしろそれが当たり前ということです。
 このことから、考えられるテーマは広がっていきます。高所得の女性が結婚前に気をつけるべきこととか、女性にとって、定収入の男性と結婚するべきか、それとも高収入な男性の愛人になるべきかとか、おもしろい話題が出てきます。もちろん、それらの回答は本書中に解説されています。
 というわけで、今まで知られてこなかったことを知って、結婚自体を捉え直そうという気持ちになりました。その意味では、衝撃的な本といえると思います。
 オーツが本書の内容を知った後、40年前にタイムスリップしたら、果たして今の妻と結婚に踏み切ったでしょうか。なんともわかりません。オーツは結婚というものは勢いでするものだ、くらいに考えていましたから、その意味では、今から40年前にタイムスリップしても、同じ状況ならば同じく今の妻と結婚するでしょう。しかし、結婚が背負う大きなリスクを考えると、若干躊躇するかもしれません。それがいいことなのか、不都合なことなのか、わかりません。人生は1回きりですし……。


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2017年05月03日

小川洋(2016.12)『消えゆく「限界大学」』白水社

 オーツが読んだ本です。「私立大学定員割れの構造」という副題が付いています。
 今の日本では、少子化が進む一方、大学が多すぎて、つぶれる大学が出てくるだろうと考えられますが、本書はその実態を描くものです。著者の小川氏は、長年高校教育に関わってきており、その後大学の教員になった人です。ですから、高校からの視点と大学からの視点の両方を持ち合わせている人ということになります。この問題を論じるのに最適な人材といえそうです。
 第1章「試練に立たされる弱小私大」では、すでに消えた大学の実名をあげ、また、これから消える大学を紹介しています。定員割れを起こしている大学が危ないというわけです。
 第2章「どのような大学が定員割れを起こしているか」では、最初に定員割れの定義を述べています。定員充足率90%未満の大学です。そして、どういう大学がそれに該当するかを探っていきます。1986年から2005年までの第2次ベビーブームの臨時定員が設定された時期に設立された大学が定員割れを起こしている例が多いとのことです。また短大が改組されて四年制大学になったものも定員割れが多いということです。
 第3章「混乱のゴールデンセブン」とその後」では、ゴールデンセブン(1986年から1992年までの7年間)のときのできごとを記述しています。受験ブームが起き、莫大な臨時収入があった時期です。ベビーブームのために各大学が臨時定員を設けたりしたわけですが、それ以上に受験生が増えたため、受験料収入などで大学側が潤った時期ということになります。しかし、その影響は長期化し、既設大学が拡張戦略をとり、女子大学も新学部を開設したりしました。短期大学も潤ったわけですが、その後、波が引いてしまいます。
 第4章「短期大学とは何か」では、日本における短期大学の歴史を述べます。短期大学は4年制の大学とずいぶん異なっており、旧専門学校が改組されてできあがったもので、研究志向はほとんどなく、女性がたくさん在籍していました。その後、日本企業の性格が変わり、事務補助職の需要がなくなり、短期大学の志願者が急減します。そこで、短期大学を改組して4年制大学にしようという動きが出てきます。
 第5章「短大以上・大学未満」では、短期大学が四大化してどうなったかを描きます。新しい大学がたくさん誕生したのですが、地方に小さい定員で開設された例が多く、その多くが定員割れを起こしているという状況です。こうして「限界大学」が大量に出現することになったわけです。
 第6章「新たな大学像」では、いくつかの具体的な大学名を挙げ、大幅な体制刷新を図った例を述べます。
 第7章「弱小私大と高校」では、高校側にも事情があって、多様化校といわれるレベルの低い高校でも、卒業生が出るので、それを押し込む大学が求められるというわけです。定員割れを起こしている大学は、そんな高校生でも受け入れざるを得ません。こうして、大学教育が崩壊していきます。
 第8章「弱小私大の生き残る条件」では、弱小私大が今後どうすればいいか、いくつかの提言をまとめています。入学前教育や初年次教育の充実、ターゲットを絞った学生募集、短大文化の清算など、もっともな提言が並びます。実際にそうしている大学の具体例をあげていますので、弱小私大にとっては大いに参考になるでしょう。
 第9章「「限界大学」の明日」では、破綻が現実化する今後の動きを述べます。

 本書は図表がたくさん使われています。つまりデータに基づいた議論が行われています。その意味で、信頼性が高いものになっていると思います。これからの日本の大学のあるべき姿を描いていると言ってもいいでしょう。タイトルは過激ですが、しっかりした記述が行われています。定員割れを起こしている大学は大いに参考になるでしょうし、そうでない大学でも、将来像などを考える上で大いに参考になるものと思います。
 それにしても、大学は変わりました。昔はどう見ても安泰であり、その上にあぐらをかいているような大学が多かったのですが、今はそんなことではやっていけなくなっているのでしょうね。

参考記事:
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO13633770T00C17A3MY7000/


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2017年04月23日

有馬哲夫(2015.7)『歴史とプロパガンダ』PHP研究所

 オーツが読んだ本です。「日米開戦から占領政策、尖閣問題まで」という副題が付いています。
 まえがきの数ページを読むだけで引き込まれてしまいます。中国や韓国、ロシアは自国民に対してプロパガンダを行っており、それだけでこれらの国が信ずるに値しないと断定しています。
 何か、すっきりした気分です。
 歴史とプロパガンダは別物なのですが、現在は、プロパガンダが強すぎて、それがあたかも正しい歴史のように思わされてしまうことが問題です。本書は、そのようなプロパガンダを排して、丹念に文献資料を読み解き、(本書中に154個もの注で出典を示しています)それに基づいて日本が関わる歴史を客観的に描き出しています。オーツの知らないことが多かったので、その意味で大変おもしろく読みました。
・第1章 偽りのリメンバー・パールハーバー ◎機密解除文書が明らかにした日米開戦の深層
 真珠湾攻撃に関して、不意打ち説があるわけですが、それは間違いで、アメリカ側は日本が宣戦布告をしないままにどこかを奇襲攻撃することはわかっていたということです。ただし、それが真珠湾であることは予想できなかったというわけです。こういう話は、何に基づいて主張するかが大事なところで、それなしではプロパガンダになってしまう恐れがあります。著者は膨大な文献を調べ、その結果、この結論に至ったということがわかります。
・第2章 スキャンダラスなヤルタ会談 ◎かくもいいかげんだったローズヴェルト
 ヤルタ会談のいい加減さを暴いています。日本が北方領土を失うに至ったのもヤルタ会談が原因かもしれません。
・第3章 原爆投下は必要なかった ◎作られたアメリカの公式見解
 タイトルが内容を端的にあらわしています。
・第4章 占領軍のブラックな心理的占領 ◎メディアと教育がターゲットだった
 占領軍が日本国民をいかに扱ったかを克明に描きます。プロパガンダとはどういうものか、その明確な実例が示されます。
・第5章 国家誕生と同時に始まった中国の侵略 ◎日本を非難する資格があるか
 中国のおぞましい歴史の実態を語ります。チベット、インドシナ、ミャンマー、朝鮮戦争などの経緯がわかります。
・第6章 米中・日中国交正常化と尖閣列島 ◎歴史的事実よりもプロパガンダ
 キッシンジャー・周恩来などの主張や会談での発言などを踏まえ、尖閣列島の問題がどのように始まり、どのようになってきたかを述べます。なるほど、これがプロパガンダです。

 というわけで、現代史を知る上でとてもおもしろい本でした。たくさんの事実の裏にあるたくさんの糸(事象間の関連、因果を含む)が複雑に絡まって現代史があるわけですが、それをうまく切り分けないと、歴史が見えなくなってしまいます。本書は、現代の大国の動きを見る一つの視点を与えてくれたような感じでした。一読すると、現代史がすっきり理解できたような気分になります。

参考記事:
http://agora-web.jp/archives/1649888.html


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2017年04月07日

倉山満(2016.11)『国際法で読み解く世界史の真実』(PHP新書)PHP研究所

 オーツが読んだ本です。新書とはいえ、本文が300ページを超えますから、それなりに読み応えがあります。
 オーツは国際法に関する知識はゼロですから、とてもおもしろく読めました。戦争を中心とした世界史に興味がある人ならば、読んで損はないと思います。
 第1章 国際法で読む国別「傾向と対策」
 日本、アメリカ、中国、韓国、北朝鮮、ロシア、イギリス、ドイツ、フランスを取り上げて、国際法の観点から見てそれぞれがどんな国かを論じます。最近の出来事を知っている人間からすると、腑に落ちることばかりということになります。こんな非常識な国々が共存しているのが現代社会ということになりますから、その中で生き抜いていくことは大変なことです。
 第2章 武器使用マニュアルとしての「用語集」
 国際法、慣習と条約、国家、主権、排他的支配、交戦団体、大国・小国、味方・敵・中立・同盟、戦争と平和(戦時と平時)、侵略・自衛・制裁、復仇、違法、外交官といった用語について解説しています。これらを理解することで国際法とはどんなものか、具体的に理解が進みます。
 第3章 国際法はいかに成立し、進化したか
 ヨーロッパを中心に発達してきた国際法ですが、世界史の中で起こったさまざまな事件とそれに対する対策として考えられてきた国際法ということで解説されます。日本はその中では例外的な国家であることがわかります。
 第4章 国際法を使いこなした明治日本、破壊したウィルソン
 日清戦争から日英同盟、日露戦争、第一次世界大戦、国際連盟までを描きます。国際法の観点から見てみると、各国の行動がきれいに整理されます。今まで世界史として覚えてきたバラバラな事実が組み合わされて全体として理解できるような気分でした。
 第5章 満州事変とナチス・ドイツを一緒くたにする愚
 満州事変から日本が中国大陸での紛争に巻き込まれていくようすを描きます。また、ヒトラーを中心とした欧米の歴史を描きます。
 満州事変はやはり「事変」であり、戦争ととらえることは問題があります。国際法の観点からはこれは明らかです。オーツは(特に根拠なく)戦争だと思っていたので、新鮮な気分で読むことができました。
 第6章 「戦争がない世界」は夢か欺瞞か
 日独伊三国同盟から日米開戦を描きます。

 というわけで、全体に国際法と世界史の関わりを大きな視野から論じた内容になっています。国際法は誤解されている面が強いと思います。政治家などは、そういう誤解を解き、正しい判断ができるようになっていないと日本の国益を損ないます。過去を振り返ると、そんなケースがいろいろありました。そんなことを考えるときの物差しとなってくれるのが本書です。


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2017年04月03日

江崎道朗(2016.9)『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社新書)祥伝社

 オーツが読んだ本です。
 扉のところには、以下のような文言が書いてあります。
 アメリカの保守派の中には、東京裁判史観に疑問を持つグループが三つある。ソ連・中国の膨張主義に対抗するためには、日本の軍事行動は容認されるべきだったとする派。東京裁判自体が、実定国際法に反しているとする派。そして、ルーズヴェルト政権の内部に入り込んでいたソ連のスパイが対日戦争を誘導したとし、戦争の責任はソ連とルーズヴェルトにあるとする派の三つである。とりわけ1995年の「ヴェノナ文書」の公開によって、第三の勢力が確実に強まっている。
 こうした実態が日本で報じられることはないが、我々はアメリカの実情を、正確に理解すべきであろう。

 この文言を読んで、オーツはこの本を読むことにしました。こんなことは知らなかったし、この見方がおもしろいと思ったからです。
 いざ、読み始めてみると、オーツの知らないことだらけで、一気に1冊を読んでしまいました。これは東京裁判がどういうものかを知るためには大変いい本だと思います。
 日本にも保守派がいますが、そういう人たちは本書に書かれているような見方をしているのでしょう。そういう見方が正しいかどうかは、今後さらに考える必要がありますが、まずは、保守派の考え方を知っておいてもいいと思います。オーツは、そういうのを全然知らなかったので、本書をおもしろく読んだわけです。
 アメリカの中にもいくつかの考え方があるというのもおもしろかったです。日本から見ていると、何となくアメリカは一枚岩のように見えるものです。そうではないのですね。
 目次にしたがって概略を述べておきましょう。
第1章 対日政策で対立する二つのグループ――「ウィーク・ジャパン派」と「ストロング・ジャパン派」
 ウィーク・ジャパン派は、アジアの戦争を引き起こしているのは日本なのだから、日本を弱くすればアジアの平和は保たれると考えます。民主党に多い考え方です。戦争前のアメリカでは、こちらの考え方のほうが強かったでしょうか。ストロング・ジャパン派は、悪いのは中国国民党政権とソ連で、アジアの平和を維持するためには日本に経済制裁を加えるべきではないという考え方です。共和党に多い考え方です。
 オーツは、そもそもそういう二つの考え方があったということ自体を知らなかったので、大変おもしろく読みました。
第2章 葬られた「告発」――「第一次」近現代史見直しの挫折
 アメリカの中枢部にソ連のスパイが入り込んでいて、それを告発した人までいたのに、結果的にそれは無視された形になりました。
第3章 ついに公開された「ヴェノナ文書」――その衝撃と、歴史的意義とは
 「ヴェノナ文書」は、ソ連・コミンテルンのスパイたちの交信記録です。1940-1944 年にかけて、アメリカが暗号電文を傍受したものですが、それが 1995 年に公開されたのです。これによって、ソ連のスパイが当時どのように暗躍していたのか、明らかになってしまいました。したがって、それに基づいて戦前〜戦中の状況が手に取るようにわかるわけです。
第4章 アメリカ共産党の「トロイの木馬」作戦――コミンテルンの巧妙な戦略転換とアメリカの変質
 アメリカ共産党が政権内部などにスパイを送り込み、アメリカを動かそうとしてきました。その状況を具体的に述べています。
第5章 コミンテルンに乗っ取られたマスコミ――「反ファシズム」で新聞・出版を恫喝
 コミンテルンはマスコミの内部にも工作していました。
第6章 日米開戦へと誘導したスパイたち――目的はひとつ「ソ連を守るため」
 スパイたちの活動によって、アメリカの世論が反日親中になっていくようすを記述しています。
第7章 変わりつつあるアメリカの歴史観――現職大統領によるヤルタ協定否定の意義とは
 ヤルタ密約は間違いだったとブッシュ大統領(子)が認めたという話で、これまた驚きです。ヤルタ密約の後ろにもソ連のスパイがいたし、結果的にヤルタ密約が中国共産党の台頭を招いたわけです。
第8章 いまも続く共産主義勢力の暗躍――オバマ大統領、なぞの言動の秘密
 オバマ大統領の謎について語っています。

 というわけで、内容は大変おもしろいのですが、オーツは一読して、この内容をどこまで信じていいのか、わからなくなりました。もしも、これが本当なら、日米関係が変わってしまうくらいのインパクトがあります。
 なかなかそうはならないと思いますが、であれば、本当であっても、公的には否定される考え方ということになります。
 ともあれ、本書を自分で読んでみるほうがいいと思います。おもしろいことは確実です。


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2017年04月01日

赤尾由美(2016.8)『民進党(笑)。』(ワニブックスPLUS新書)ワニブックス

 オーツが読んだ本です。「さようなら、日本を守る気がない反日政党」という副題が付いています。
 民進党について書かれた本です。といっても、タイトルに「(笑)」が付いているように、大上段から正面切って批判するというよりも、日常目線で茶化しつつ、民進党のおかしいところを笑い飛ばすといったスタンスで書かれています。
 全体に、とても読みやすいのですが、一方では、具体的な数字などが出てくるわけではないので、著者の主観的な印象論というようにも受け止められます。
 著者はアカオアルミという会社の社長ですが、それよりも大日本愛国党総裁・赤尾敏氏の姪というほうが「ああ、そういう人」とわかってもらえるかもしれません。今の若い人には「赤尾敏って誰?」といわれそうですが……。
 本書中にも、赤尾敏氏の話がちらちらと出てきますが、何かとても人間味あふれる人のようで、選挙のときの雰囲気とはずいぶん違う印象を持ちました。
 目次は以下の通りです。
第1章 参議院議員選挙でくだされた審判――懲りない面々の懲りない「国民との約束」(笑)――
第2章 民主党→民進党でも中身はダメなまま――国のためになら死ねるという覚悟はないの(笑)?――
第3章 民進党よ、なんでも反対では未来がない!――YouTubeで「我が伯父」の演説を見てね(笑)――
第4章 民進党のだらしなさに救われた自民党――アメリカの属国のままでは幸せは訪れない、かも(笑)――
第5章 民進党に日本を変えるヒント教えます――アベノミクスはグローバル化大好き(笑)――
 オーツはどうにも民進党が好きになれませんが、そんな人間がこの本を読むと、随所で相づちを打ちながら「同感!」と言いつつ読んでいくことになります。
 民進党の現状をうまくまとめている良書だと思います。しかもやさしく書いてあります。

参考記事:
http://nezu621.blog7.fc2.com/blog-entry-3150.html


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2017年03月30日

百田尚樹、石平(2016.11)『「カエルの楽園」が地獄と化す日』飛鳥新社

 オーツが読んだ本です。
 オーツは以前『カエルの楽園』を読みました。
2016.12.12 http://o-tsu.seesaa.net/article/444812621.html
こちらは寓話なのですが、これに基づいて、百田氏と石氏が対談し、それを文字化したものが本書です。
 したがって、『カエルの楽園』を読んでいないと、こちらで展開される議論がいったい何の話か、理解できないだろうと思います。
 対談の文字化といっても、p.100 では中国で行われたアンケート調査の結果の数字が細かく引用されていたり、p.82 でも中国の水不足や大気汚染について数字を挙げて説明しています。何も用意しない対談ではこんな数字が出てくることはないと思われます。普段から細かい数字が頭に入っている人もいますが、それは例外でしょう。つまり、この対談は、事前に入念に準備され、資料を用意し、二人が(特に石氏が)どういうことを論じるかを詰め合って対談が行われたということです。というわけで、普通の「対談」よりは中身が濃いものになっていると思います。
 とはいえ、対談の文字化という体裁を取っていますから、単に本を書くよりはやや冗長なところがあります。オーツの好みは、対談よりも石氏の論点を著書として読むことのように感じました。
 目次は以下の通りです。
第1章 戦わずして尖閣を奪われるシナリオ
第2章 中国はなぜ日本侵略を企むのか
第3章 チベット、ウイグルで見た恐ろしい支配の実態
第4章 沖縄「独立」を足がかりにした侵略
第5章 日本が中国に侵略されるとき
 目次を読むと本書の内容がだいたいわかると思います。ここに出てくる話は、単なるお話ではなく、現実の危機であり脅威であると思います。
 百田氏が、このような脅威を基に寓話を書いたということでしょうが、ここに書かれているような事態にならぬよう、心して生活したいものです。政治家たちにも、寓話のごとくならぬよう、努力してもらいたいものです。国会などの議論を聞いていると、そうでないように見えるのが心配なところです。


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2017年03月28日

池田信夫(2016.8)『「強すぎる自民党」の病理』PHP新書

 オーツが読んだ本です。「老人支配と日本型ポピュリズム」という副題が付いています。
 面白い本でした。日本の戦後の政治の流れを概観しているような内容です。
 プロローグ「世界に広がるポピュリズム」では、デモクラシーがポピュリズムになる変化を述べ、日本型ポピュリズムは「無責任の体系」だと説きます。
 第1章「老人の老人による老人のための政治」では、世代による格差の問題を説明します。そして、日本が老人が支配する国になっていることを述べます。
 第2章「60年安保で失われた政策論争」では、農地改革が自民党を生んだが、高度成長が起こって日本の体制が固定化し、まともな政策論争が行われなくなってしまったことを述べます。
 第3章「社会党という無責任政党」では、社会党を中心に見た流れを説明しています。社会党は、都市住民を支持層にできなかった点が問題のようです。
 第4章「田中角栄の生んだバラマキ福祉」では、田中角栄がどんなことを考え、行い、強く大きくなっていったかを述べます。バラマキはけっこう選挙に強いというのが現実なんですね。
 第5章「小沢一郎がつくって壊した日本の政治」では、小沢一郎の動きを中心に見て、この人がどんなことを考えていたのかを述べます。
 第6章「小泉政権「官邸主導」の革命」では、小泉総理がそれまでのやり方とかなり違ったやり方を導入した経緯を説明しています。
 第7章「民主党政権の「政治主導」はなぜ失敗したか」では、人事のやりかたがうまくいかなかったことを述べています。
 第8章「「安倍一強」はいつまで続くのか」では、菅官房長官や公明党の性格などを眺めた上で、安倍総理はみこしとしてかつがれているだけだとしています。
 第9章「成長経済から成熟経済へ」では、財政再建や所得の再分配の話を絡め、これからの日本はどうするべきかを論じます。
 エピローグ「もし小泉進次郎が首相になったら」では2020年以降の財政や社会保障の話をしています。

 というわけで、著者の視点は非常に面白く、オーツは、この本を読んで日本の戦後史がわかったような気がしてきました。本書で出てくる人たちは、オーツが同時代的に知っている人も多く、当時はどういう人物かよくわからなかった場合もあったのですが、今顧みればこういうことだったのかという新たな枠組みが示されたようでした。本書は、いろいろな事件や歴史的事実がこう組み合わされて、こう解釈されて、こう描かれるということを示しています。新書1冊では十分論じきれないところもあるのでしょうが、オーツは、日本の戦後史を教えてもらったような気分でした。


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2017年03月10日

橘玲(2017.1)『ダブルマリッジ』文藝春秋

 オーツが読んだ本です。
 オーツは基本的に小説などのフィクションは読まないのですが、一部のあらすじを事前に知って読む気になりました。
 日本人の妻のいる男性が、自分の戸籍にフィリピン人の妻が入籍していることに気がつき、「重婚」(ダブルマリッジ)の状態になるという話です。
 そんなことがあり得るのか、どうやって解決するのかといったことがオーツの興味の中心だったのですが、残念ながら小説のほうは、男性の娘や入籍してきたフィリピン人の「妻」、さらにはその「妻」との間に産まれた「息子」の話になっていきます。まあ、けっこうどろどろした話になるのですが、元はといえば、若いころ、この男性がフィリピンで若い女性と結婚式を挙げたことが発端だったわけで、自業自得といったところでしょう。わかってしまえばどうということもない話です。しかし、結婚や戸籍をめぐる不思議な話を聞いたという感じは残ります。重婚なんて、今の日本であり得ないと思いますが、実はあり得るのですね。
 この本は、あまりおすすめはしませんが、こんな話が現実的にあり得るということでは新鮮な感覚でした。
 ちょっと非現実的な話ではありますが、万が一にもそんなことがあり得るということは知っておいてもいいかもしれません。
 ま、オーツの場合は、そんなことになるはずがありませんが、……。


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2017年03月03日

小黒一正(2016.10)『預金封鎖に備えよ』朝日新聞出版

 オーツが読んだ本です。「マイナス金利の先にある危機」という副題が付いています。
 序章「預金封鎖への道」では、日本の財政破綻は数年後だとし、預金課税のような話があるのではないかとしています。
 第1章「消費税増税なくして財政再建なし」では、早く消費税を増税するべきで、消費税増税延期などをやっていては財政再建計画は崩壊しているとしています。また合わせて軽減税率の導入はデメリットばかりでやらない方がいいとしています。
 第2章「失敗だらけの金融政策」では、マイナス金利政策は問題だとし、金融緩和の問題点を指摘しています。
 第3章「財政再建、待ったなし」では、将来の債務残高のGDP比が 320% を越えるとしています。社会保障改革をしないと、消費税率は 30% にせざるをえないと警告しています。
 第4章「終戦直後の教訓」では、預金封鎖、通貨切り替えがあり、ハイパーインフレがあったことを述べています。これが再現するだろうという話ですが、さて、どうなのでしょうか。
 第5章「財政危機に「出口」はあるか」では、どんな対策が考えられるかを論じています。カギは預金封鎖だとしています。また、資産防衛の決め手としてビットコインなどの仮想通貨をあげています。
 オーツは一読して、ちょっと期待外れの気持ちになりました。題名に引かれて読む気になったわけですが、本書は、これから日本の財政が大変なことになるという警告の書です。だったら、個人としてできることは何なのか、もう少し具体的に書いておかなければ「題名に偽りあり」ではないでしょうか。
 これから日本の財政が大変だというのはわかります。それに対して、どのようにすることが「備える」ことになるのでしょうか。著者はビットコインを挙げていますが、数千万円とかの個人の財産をビットコインに替えるなどというのは、恐くて、とてもではないけれどできないのではないでしょうか。
 まあ、確実に起こることを書いておいて、あとは個人ごとに事情も違うし、対策もそれぞれで考えてくださいということなのかと思いますが、それは「期待外れ」です。たとえば、本人の年齢をいくつかの段階に分け(たとえば、30代以下、40〜50代、60代以上)、保有資産をマイナス、数百万円、数千万円、数億円(以上)くらいに分けて、それぞれのグループごとに具体的対策を提案するようなことはできるのではないでしょうか。


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2017年03月01日

吉川洋(2016.8)『人口と日本経済』(中公新書)中央公論社

 オーツが読んだ本です。「長寿、イノベーション、経済成長」という副題が付いています。
 著者は経済学者です。マクロ経済学が専門です。日本は人口が減りつつありますが、そうすると働き手が少なくなり、経済は成長しないと考えられるわけですが、著者は、それは間違いだと断言します。経済成長の鍵はイノベーションであり、日本が長寿国だからこそイノベーションを起こすことができる、つまり、今の日本はチャンスを迎えているというわけです。
 目次は、以下の通りです。
第1章 経済学は人口をいかに考えてきたか
第2章 人口減少と日本経済
第3章 長寿という果実
第4章 人間にとって経済とは何か

 第1章は、人口を経済学がどうとらえてきたかを概観します。いろいろな時代、いろいろな地域の人口を調べています。マルサスの『人口論』も当然検討しています。人口については、多いか少ないか、いろいろな考え方があり、議論が分かれているようです。
 第2章では、さまざまなデータを示しながら、人口減少でも日本経済は成長しうることを示します。実際、技術革新で日本は成長してきたわけです。
 オーツは、p.70 に載っている 1878年、1920年、1985年の日本の都市の人口を示した表がおもしろかったです。現在は東京集中型ですが、明治時代はそうでもなく、地方都市にもそれなりの人口があったことがわかります。日本のあり方がこの100年の間に変わってきたことを如実に示しています。
 第3章では、日本を含む先進国が豊かになり、その結果として長寿社会が到来したことを示します。我々は幸せな時代に生きているということです。
 第4章では、「経済」に対する見方を説明しています。経済学入門のような内容でしょうか。イノベーションを起こすことによって、日本はさらに経済成長していけるということが論じられています。
 田んぼをクワで耕していた時代から、トラクターで耕す時代になり、一人で広い田んぼを耕すことができるようになりました。こうして一人あたりの生産性が上がり、豊かになっていくわけです。こういうことが継続すれば、人口が減少していくとしても経済成長は可能だろうと思いました。

参考記事 http://agora-web.jp/archives/2020968.html


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2017年02月10日

李榮薫(2009.3)『大韓民国の物語』文藝春秋

 オーツが読んだ本です。「韓国の「国史」教科書を書き換えよ」という副題が付いています。
 韓国で教えられ、一般に正しいとされる歴史がいかに事実から離れているかを論じた本です。
 重要なことは、この本は韓国で(ハングルで)先に出版され、それが日本語に翻訳されたということです。つまり、もともと韓国人読者に向けて書かれたものであるということです。韓国の歴史に関する事実誤認など、修正するべき点があまりにもたくさんあるので、それを一通り論じてみよう、つまり韓国の正しい歴史とは何かを韓国人に語ったものだということです。
 第1部は序論のような内容です。
 日本との関係で興味深いのは第2部でしょう。李氏朝鮮から滅んでから日本が敗戦するまでを扱っています。その目次をかかげると、以下の通りです。(1と2は第1部に含まれています。)
3 李朝はなぜ滅んだのか
4 「植民地収奪論」批判
5 植民地近代化論の正しき理解
6 協力者たち
7 日本軍慰安婦問題の実相
8 あの日、私はなぜあのように言ったのか
 8章は、そのタイトルだけからは何を議論しているのか、わかりかねますが、慰安婦問題を扱っています。
 このように、目次を見るだけでも、韓国内ではタブーとされるような話(見方)が次々と出てきます。まじめに資料に基づいて議論すれば、自ずとこんなことになるものでしょう。こういう話が韓国で一般化しないことがまさに問題なのですが、今となっては、韓国はどうしようもないのかもしれません。
 何はともあれ、韓国内にも、客観的に史実を見ようとする研究者が現れていることを知ることができて、視野が広がりました。韓国人というと、すぐに主観的・感情的にものごとをとらえ、大声で自己主張するような印象ができあがってしまいましたが、そうでない冷静な判断ができる人がまだまだいるのです。
 本書で語られる話の内容は、日本人から見れば特にどうということのない議論ですが、韓国人にしてみたら、自分が教わってきた「真実」と全然異なることであり、読んだ人はショックを受けるのかもしれません。
 しかし、韓国にも「言論の自由」があるのですから(日本と違ってかなり制約が強いようではありますが)、韓国人もこういう内容も読むべきだし、その上で、もしも本書の記述が間違っているなら、具体的にどこが間違いなのか、事実を指摘するべきです。そういうことが保証されているということが言論の自由なのです。
 第3部は、「くに作り」ということで、1945年以降の韓国の建国や朝鮮戦争などの話です。韓国人には避けて通れない重要なテーマでしょうが、日本人からすると、あまり関心がないテーマのように思います。
 オーツは、韓国で教えられている「歴史」がどういうものか、知りたい気分になりました。まあ、知ったからといって何かが変わるわけでもないのですが、少なくとも、韓国人のおかしな議論について、理解する一助になりそうな気がしました。

参考記事:
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48443


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2017年01月21日

井上章一(2015.9)『京都ぎらい』(朝日新書)朝日新聞出版

 オーツが読んだ本です。
 著者の井上氏は京都が嫌いだというのです。どんなところが? くわしくは本書を読む必要があります。
 1「洛外を生きる」では、井上氏の出身地の嵯峨、また長らく居住している宇治は京都ではない、少なくとも、京都の中心部に住んでいる人たちから見たら、田舎であるという話です。そして、京都の(中心部の)人たちには田舎の人を見下す傾向があることが語られます。
 この章を読んで、オーツはその昔、京都の住民にいろいろ聞いた話を思い出しました。その人は、西京区に住んでいたのですが、その前は京都の中心部に住んでいたとのことです。そして、西京区の新興住宅地に移り住んできたわけですが、「ここは京都ではない」というのが持論でした。日常のさまざまなことで京都ではないことを思い知らされるということでした。オーツが聞いた話の詳細をここに書くことはできませんが、井上氏の論調と一致しています。
 2「お坊さんと舞子さん」では、京都のお坊さんは袈裟姿で市内の繁華街で飲み歩くという話です。京都でお坊さんと舞子さんがどんなものとして意識されているかを語っています。
 3「仏教のある側面」では、仏教寺院の拝観料に京都市が税金をかけようとしたことを取り上げ、結局、その話は流れた(税金は取れなかった)ということになりました。その顛末を語っています。
 4「歴史のなかから、見えること」では、京都の歴史のいくつかの側面を描いています。江戸幕府やら「銀座」の地名やら、話はあちこちに及びます。しかし、京都の人の歴史好きという面はかなり強いようです。
 5「平安京の副都心」では、京都の中のいくつかの地域について、どんなものと考えられてるかが語られます。
 全体として、とてもおもしろい本でした。普通の感覚の京都論とは異なり、新しい視点を提示してくれます。歴史や伝統があることはいいことですが、同時にそこに生きる人々をそれらが束縛し拘束するような面もあるようです。
 この本の記述は、何かの資料に基づいているというよりは、著者個人の体験に根ざした話なのですが、それだけに新鮮な感覚で読むことができました。まあ、オーツのように関東生まれ、関東育ち(著者の井上氏よりもはるかにはるかに田舎育ち)の人間が理解できるようなことではないとは思いますが、……。


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2016年12月31日

有馬哲夫(2016.8)『歴史問題の正解』(新潮新書)新潮社

 オーツが読んだ本です。
 まえがきの出だしを引用します。「本書は日本、アメリカ、イギリスの公文書館や大学図書館などで公開されている第一次資料に基づいて歴史的事実を書いたものである。そのため出典を明らかにするために巻末に詳細な註釈を付けた。これによって私が何を根拠にして歴史的事実と考えているのかがわかる。」
 このひとことによって、本書がどういう性質のものかがわかります。
 巻末の註釈(文献の出典の記述が主なものですが)の次に初出一覧があり、いろいろな雑誌などに書いてきたものをまとめたものであることがわかります。
 本書の内容は目次を見ると明らかです。
第1章 「南京事件」はプロパガンダから生まれた
第2章 真珠湾攻撃は騙し討ちではなかった
第3章 ヤルタ会議は戦後秩序を作らなかった
第4章 北方領土はこうして失われた
第5章 ポツダム宣言に「日本の戦争は間違い」という文言は存在しない
第6章 日本は無条件降伏していない
第7章 原爆投下は必要なかった
第8章 天皇のインテリジェンスが國體を守った
第9章 現代中国の歴史は侵略の歴史である
第10章 日韓国交正常化の立役者は児玉誉士夫だった
第11章 尖閣諸島は間違いなく日本の領土である
 というわけで、歴史の中でも、戦前から戦後にかけての時期を扱っています。
 オーツは、この時期あたりについて、きちんと勉強したことはないので、知らない話がいろいろ出てきて、興味深く思いました。そして、資料に基づいて戦争時代を振り返ってみると、「常識」とされている見方に疑問符が付くケースがいろいろあることに気づかされます。だから、それをただそうとする本書の主張は意味があると思います。
 一番大事なポイントは、「資料に基づく」ことです。これなしでは、単なるプロパガンダにしかなりません。本書を読みながら、この点はしっかりしていると感じました。
 本書は、日本の近代史を見ていく上でおすすめできる良書だと思います。

参考記事:http://agora-web.jp/archives/2020853.html


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