オーツが読んだ本です。「日本を衰退させる「空気」の正体」という副題がついています。
本書は、どんなジャンルの本なのか、読み終わった後もはっきりしません。一番近いのは歴史学かと思いますが、純粋な歴史学の本とはだいぶ違います。最近は、昔の人骨の DNA を取り出すことができるようになり、いろいろなことがわかってきました。DNA の中にある遺伝子を中心として人類史を展開し、その中で日本人がどんな文化的遺伝子を受け継いできたかが内容の中心です。タイトルにあるように、「平和の遺伝子」が日本人の中に流れているというわけです。日本列島に定住するようになってから、日本人がどのように争いごとを避けてきたかということを論じます。このような遺伝子があると考えると、日本の長い歴史の中でどんな事件が起こり、それがどのように解決されてきたかがきれいに説明できるということになります。
記述が実に多岐にわたり、池田氏の博学ぶりがみごとに発揮されています。巻末の注(参考文献)が充実しており、本書中に書かれたひとことについて、実はこれこれの本を読んだ上でそう述べているのだというスタイルになっています。池田氏の博覧強記に驚かされます。
オーツは、本書を読み終わって、池田氏の解釈というか考え方に強く引かれました。自分一人ではなかなかこの境地に達することはできないと思いますが、本書のようなものを通して、いわば数百冊の本を1冊に圧縮したような、中身の濃さを感じました。オーツの人生も残りが長くないので、池田氏のような読書はもうできないと思いますが、可能な限りそこに近づきたいと思いました。
以下、目次をコピペしておきます。
はじめに
序章 新型コロナで露呈した「国家の不在」
リスクをきらう古い脳/ゼロリスクの法則/人はなぜリスクを錯覚するのか/コロナ専門家の暴走
T 暗黙知という文化遺伝子
第一章 文化はラマルク的に進化する
文化は学習によって蓄積される/個体レベルと集団レベルの淘汰/協力する猿/集団淘汰の法則/遺伝と文化の共進化/大きな脳が「共同主観性」を生んだ/利己主義は合理的ではない/偏狭な利他主義
第二章 「自己家畜化」が文化を生んだ
脳は「空気」を読むためにできた/理性は感情の奴隷/理性は人間の本質ではない/言語を生んだ「自己家畜化」/新しい社会ダーウィニズム/閉じた社会とチキンゲーム
U 国家に抗する社会
第三章 縄文時代の最古層
人類を変えた「定住革命」/農耕なき定住社会/贈与というコミットメント/感染症がケガレを生み出した/日本人はなぜ「無宗教」なのか/縄文式土器は何の役に立ったのか/国家を拒否した縄文人/剰余を蕩尽して平和を維持する/アイヌは縄文人の化石/国家に抗するアナーキー
第四章 天皇というデモクラシー
戦争は人類の本能か/農耕が戦争と国家を生んだ/世界宗教は国家とともに生まれた/水田稲作が生んだデモクラシー/古墳時代からヤマト王権へ/「男系の皇統」は存在しなかった/天皇家は「ウルトラマンファミリー」/「まつりごと」の構造
V 「国」と「家」の二重支配
第五章 公家から武家へ
「職」の体系/表の「国」と裏の「家」/「氏」から「家」へ/武士は京都で生まれた/核家族から直系家族へ/遊牧民が世界史をつくった/国家権力をきらう「無縁」の原理/無縁の民はなぜ自由を求めたのか/一揆は移動民の結社
第六章 長い江戸時代の始まり
凍結された戦国時代/関ヶ原で決まった権力分散/蕩尽で平和を守った徳川幕府/幕府という「無頭の合議体」/喧嘩両成敗の法治主義/主君押込の構造/稟議というデモクラシー/権力の分散する「ジャンケン国家」/勤勉革命のエートス/「正社員」としての百姓/武士の「自己窮乏化」/水戸学と尊王攘夷
W 近代国家との遭遇
第七章 明治国家という奇蹟
長州が戦国時代を解凍した/廃藩置県は「居抜きの革命」/天皇はキリスト教の代用品/部分が全体を決める軍隊/自転する組織/軍国主義は普通選挙から生まれた/大政翼賛会という幕府
第八章 平和の遺伝子への回帰
日本国憲法は押しつけだったのか/自民党は「小農の党」/小農から中小企業へ/家畜から社畜へ/高度成長を支えた「家」からの逃亡/万年野党を支えた平和の遺伝子/自民党と大蔵省の二重支配/安倍首相の破壊した「まつりごと」の構造/日米同盟という「院政」/平和国家の生存バイアス
第九章 大収斂から再分岐へ
冷戦終了と大収斂へ/資本主義がプロテスタンティズムを生んだ/グローバル化できなかった半導体産業/デフレの正体は製造業の空洞化だった/ハートランド対リムランド/ユーラシア国家の時代/新しい冷戦
終章 定住社会の終わり
新しい中世末期/「小さな政府」は可能か/定住社会から移動社会へ
参考記事:
https://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/52089031.html
https://amzn.to/4mpLwqs
2025年10月02日
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