図は、下手の布陣がほぼ完成形になっており、ここから仕掛けることになります。
オーツは、▲4五歩と仕掛けたのですが、水匠5によると、ここで▲6六角という手もあるとのことです。水匠5ではこちらのほうが 200 点ほど評価値が高いことになります。上手が▽8三玉と歩を守るならば、そこで▲4五歩と開戦すればいいわけです。図の局面で▲4五歩と仕掛けるよりも(▲6一角の打ち込みのスキがあるから)上手の玉が不安定化しています。▲6六角に対して、▽6五歩としてくれば、▲8四角と歩得をする手があります。そこで▽8三玉ときても、▲8五歩で角が守れます。以下、▽6二銀、▲7五歩、▽8五桂、▲6二角成、▽同金、▲7六銀というような順で下手がいいというわけです。次回、同様の局面になったら、この手順を試してみようと思います。
さて、実戦では、図の局面から▲4五歩、▽同歩、▲同桂、▽同桂、▲2二角成、▽同金、▲4五銀、▽4二歩打と進みました。
図の▽4二歩は、ちょっと珍しい手です。定跡では、▽4四歩と打つことになっています。この形はオーツが何回も経験しており、以下、▲同銀と銀を捨て、▽同銀直、▲5六桂、▽4五桂、▲7五歩というような展開になります。これで下手が優勢です。H先生は、この定跡手順を嫌って変化してみたものと思われます。
これに対して、オーツは▲4四歩、▽5二銀、▲3四銀、▽3二金と進めました。
ここで、オーツは次の手に悩みました。▲4五桂、▽4四銀、▲3三桂成、▽同金、▲同銀不成、▽同銀と攻めて行く手を考えましたが、この攻め方では▽3三同銀の次に厳しい手がなく、一手待ちのようになってしまいます。そこで、この場合にも次の攻めができるように、前もって▲3五歩と歩を伸ばしておきました。
しかし、これは甘い手になってしまいました。ここは、水匠5によれば、▲2一角がよかったとのことです。強引な手ですが、角を打つことで上手の4三が破れそうです。上手は▽3一金と逃げるくらいですが、そこで▲4三歩成、▽同歩、▲同銀成、▽2一金、▲5二成銀となれば、下手は角銀交換の駒損ですが、5二の成銀が威張っていて、上手の2一にいる金が遊んでいますから、下手がやれそうな局面ということになります。
▲3五歩以下は、▽3八角、▲4八飛、▽2七角成、▲4五桂、▽4四銀、▲3三桂成、▽同金、▲同銀不成、▽同銀と進みました。
ここで、オーツは当初の予定通り、▲3四歩、▽同銀、▲4二飛成、▽6一銀打、▲4四角、▽5三桂と攻めていきました。
ここもいろいろな手が考えられるところです。オーツは、攻める手がいろいろ浮かびました。▲1一角成と香得しておく手もありそうです。▲3三角成、▽4五馬、▲4六歩、▽3五馬として馬の利きを弱める手もありそうです。
最終的に指した手は▲7五歩でした。次に▲7四歩と取り込み、▽同金となれば、金の守備力が弱まってしまい、4二の龍と4四の角を活かした攻めができそうです。
しかし、結果的に▲7五歩は甘い手でした。ここで上手に手番を渡してしまうと、その1手で上手は守りを固めることもできるし、反撃に移ることもできることになります。
では、どう指すべきだったか。
水匠5は、▲5一金がよかったとしています。上手が▽4一歩という守りの手を指しそうだということはオーツにも見えていました。だったら、その対策として、▲5一金とすることが考えられます。それに対して上手が▽4一歩ときたら、▲5二龍、▽同銀、▲同金と二枚替えをします。さらに上手が▽4五馬と守りを固めたら、▲1一角成と香得をします。これで次に▲4九香という攻める手ができます。
実際は、下手の▲7五歩に対して、上手は▽4一歩と受けてきました。下手は▲3一龍と銀にあてながら龍が逃げるか、▲5一龍と上手玉に接近して攻めをねらうかです。後者は、上手に銀を渡したりすれば、▽6二銀打あるいは▽4二銀で龍が死にます。しかし、逆に言えば上手に銀を渡さないように下手が攻めればいいわけです。そんなことを考えて、▲5一龍と潜ることにしました。
以下、▽4五馬、▲1一角成、▽5五歩と進みました。
▽5五歩は下手の1一の馬の利きをさえぎり、馬を使いにくくするとともに、▽6六桂で下手の金を一枚はがす手をねらっています。オーツは▽6六桂を恐れて、▲7九玉と馬筋を事前にかわしたのですが、これは悪手でした。(指した瞬間に自分で気がつきました。)これによって、8七の銀が浮いてしまいました。上手は▽5四馬という手が先手で入ることになります。▽6六桂を受けるなら、▲5六歩もありました。▽同馬に▲6六金とすれば受かります。
▲7九玉以下は、▽5四馬、▲7八金、▽4三銀と進みました。
水匠5によれば、図の▽4三銀では、▽8七馬、▲同金、▽6二銀打と下手の龍を殺す手がありました。オーツはまったく気がついていませんでした。これでも下手が勝勢のようですが、龍を消された上に、下手陣が飛車に弱い形になっているので、容易ならざる形勢だったかもしれません。
図の局面から、オーツは何とか上手玉を攻める筋を考えました。▲4四歩、▽同銀、▲7四歩、▽同金、▲6二香と攻めました。上手は▽7五桂、▲9八銀、▽7七歩、▲同桂、▽7六歩と下手玉に迫ってきました。
いよいよ最終盤です。オーツは、▲6一香成、▽同銀、▲8一銀、▽同玉、▲6一龍、▽8二玉、▲4四馬、▽同馬、▲8三銀と攻めました。途中で下手から馬を切ることで、下手が銀を一枚入手でき、しかも上手の馬筋(守り)をずらすことができました。
この局面で上手が投了しました。以下、▽同玉ならば▲7二銀、▽9三玉、▲8三金までの詰みです。▽9三玉ならば▲9一龍、▽8三玉、▲8二金までの詰みです。
オーツは、▲6一香成を指す時点でこの詰みまで完全に読めたので、いわば安心して▲6一香成を指したことになります。
終盤は激しい攻め合いになりましたが、本局では下手側が仕掛けから終局まで(いくつかミスはあったものの)一貫して攻めており、攻め合いを制して勝利に結びつけました。駒落ちの下手側の勝ち方の典型かもしれません。

