オーツが読んだ本です。「帝国日本のアジア支配構想」という副題が付いています。
夏は、どうしても先の戦争に関する話が多くなる時期です。毎年、広島・長崎の原爆投下から終戦記念日まで8月になると戦争のことがテレビでも話題になります。
本書は、日本語で書かれた資料を丹念に読み込んだ力作です。
戦争が始まる前から終戦まで、「大東亜共栄圏」という構想がどのようなものとして立案され、東南アジア(南方)や満洲・中国(北方)ではどんなことが行われたのか、資料に基づいてきちんと描こうとしています。現地語による資料を活用すれば、現地の人々の考え方や反応などがわかると思われますが、あえてその部分は扱わず、日本語の資料を通じて、日本側の視点から「大東亜共栄圏」を描いているわけです。
序章 総力戦と帝国日本――貧弱な資源と経済力の中で――
第1章 構想までの道程――アジア・太平洋戦争開戦まで――
満州事変から書き起こします。日満支経済ブロックが構想され、この中で自給する道を探ります。やがてヨーロッパで戦争が始まり、日本が南方に進出することで大東亜共栄圏という考え方が出てきます。
第2章 大東亜建設審議会――自給圏構想の立案――
南方を占領した後、大東亜建設審議会というものが設置され、日本が盟主となる基本理念が考えられます。しかし、企画院と商工省が経済建設に関して対立していきます。
第3章 自給圏構想の始動――初期軍政から大東亜省設置へ――
戦争開始直後の方針を述べます。欧米の植民地だった地域では、初期に軍政を敷き、旧統治機構を利用しようとします。その後日本企業が進出して油田や鉱山の復旧・開発を行います。
第4章 大東亜共同宣言と自主独立――戦局悪化の一九四三年――
フィリピンやビルマの独立の動きを抑えるわけにも行かず、大東亜新政策として考え方が変わります。大東亜会議が開催されますが、アジア各地の首脳は面従腹背の態度を取ります。
第5章 共栄圏運営の現実――期待のフィリピン、北支での挫折――
南方の資源開発は限界がありました。綿花や鉱山もうまく行きませんでした。なぜならば、生産ができても、日本への輸送がうまく行かなくなってしまったからです。輸送がうまく行かないために、食糧難という問題もあって、北支・満洲を開発しようとします。
第6章 帝国日本の瓦解――自給圏の終焉――
対日協力者たちが離反し、抵抗を見せるようになります。日満支と南方が分断され、自活自戦体制が模索されます。東南アジアでは独立運動が盛んになります。
終章 大東亜共栄圏とは何だったか
歴史学(日本近現代史)の研究者の記述は、こういう形になるものなのでしょう。本書は、表やグラフが多用され、趣旨は理解できるし、データがあるので説得力もあるのですが、著者は当時の有様を丹念に客観的に記述しようとすることに重点を置いたために、全体を貫く「著者の視点」が見えにくくなっているように感じました。
オーツは、全体をわかりやすくするために、著者の主観的な記述をもう少し前面に出すとよかったのではないかと感じました。
何はともあれ、「大東亜共栄圏」というものがどんなものだったのか、オーツは知識がなかったので、本書を読んで得るところがたくさんありました。
参考記事:
https://agora-web.jp/archives/250803064927.html
https://amzn.to/4p15bj2
2025年08月29日
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