下手の右四間飛車の仕掛けから次の図になりました。
この局面は、上手が角を3一から6四に移動してきたところです。次に下手陣に角が成り込んでくるねらいです。この局面では下手が桂得していますので、オーツは桂を使ってしのげないかと考えました。すると、▲5五桂と捨てる手があると思い当たりました。これは妙手だと思いました。もしも上手が▽同歩とすれば、▲同銀として、角取りの先手になります。ここで角が(4二か3一に)逃げると、▲4四銀という攻めが炸裂します。
これで行こうと判断して▲5五同銀まで進んだところ、上手から▽6六桂という犠打のお返しが飛んできました。
オーツがまったく考えてもいなかった手なので、うろたえました。この桂打ちは王手金取りですから、取る一手ですが、▲同歩と取ると、▽5五角と銀を取られてしまいます。
ここで、オーツは▲同銀と取ったのですが、これが悪手でした。以下、▽同歩、▲同角、▽3七角成、▲5五桂、▽5四金、▲4三桂成、▽同金と進みました。
こうなると、下手が勝つのはむずかしい形勢になっています。
あとで水匠5で解析してみると、▽6六桂に対して、▲同銀ではなく、▲同角がよいと指摘されました。以下、▽同歩、▲6四銀、▽同金、▲3三桂成、▽同金、▲4二角という攻めがありました。
こうなれば、下手が優勢です。まだ勝ちまでは遠いですが、このまま指し続ければ勝利も見えてきたことでしょう。
ひるがえって、最初の局面図で下手が▲5五桂と打ったところですが、のちの上手からの▽6六桂の切り返しがあるとすれば、▲5五桂という手自体がよくなかったということになりそうです。オーツは妙手だと思ったのですが、その判断が間違っていたわけです。水匠5は、代わりに、▲2四歩、▽3七角成、▲3五歩、▽2六馬、▲1四歩、▽同歩、▲2三歩成、▽同金、▲2四歩、▽2二金、▲3四歩のように攻めるのがよかったとしています。
オーツは、妙手を見つけてこれで行けると勢い込んだところで、巧みな返し技を食らってしまいました。さすがに女流プロは簡単に勝たせてくれないものだと思いました。

