オーツは、朝日新聞で読みました。
https://www.asahi.com/articles/ASR1Z6FTHR1ZTIPE00J.html
(寺島笑花 2023年1月30日 20時30分)
長崎大学の有期雇用の助教が雇い止めに会い、「それは無効だ。無期契約に転換せよ」と裁判に訴えた結果、長崎地裁がそれを認めたという話です。
この件は、なかなかむずかしいのですが、背景にある制度が大事です。有期雇用契約を結んで働いている人の場合、(再度雇用契約を結んだりして)そのまま5年が経過すると、働いている人は「無期雇用に転換してほしい」と言える権利があるというものです。
長崎大学は、この制度に従い、有期雇用を繰り返しつつ、一定の年限に達したので、次回の契約はしないという判断をしたわけです。
ところが、これを長崎地裁がひっくり返してしまったのです。
オーツは、朝日新聞の記事を読んだだけですので、何を基準に長崎地裁がこう判断したのか、わからないのですが、ずいぶん無理筋な判決のように思いました。
第1に、契約というのは、当該助教と長崎大学の間で結ばれたものであり、有期雇用なのですから、期間が満了すれば、理由の如何を問わず、そこまでで契約終了になってしかるべきことです。契約終了にはそれ以外の理由が不要だと思います。「契約期間が満了した」ということだけで十分のはずです。だって、前からそういう約束をしていたわけですから。
記事中には、「判決は、大学が雇い止めを通知したのが契約終了の約4カ月前で、学習プログラムの方針変更や労働契約への影響について説明がなかったと指摘。他の配属先を探すために大学が誠実に対応しなかったことを挙げ、「社会通念上、相当性を欠く」として、雇い止めは無効と結論づけた。」とありますが、オーツは、この趣旨がわかりません。初めから、この日が来たら仕事は終わりという約束で働いているわけですから、雇い止めまでの期間は関係ありません。4ヶ月も前に通知すれば十分だと思います。「学習プログラムの方針変更や労働契約への影響について説明がなかった」としても、それは契約の中身とは関係しないと思います。長崎大学が何に基づいてどういう判断をしようとも、それは長崎大学側の判断であって、雇い止めの理由の説明などは不要であり、雇用期間が満了したことだけを理由にすればいいはずです。「他の配属先を探すために大学が誠実に対応しなかった」としても、しかたがありません。雇い止めになった後まで長崎大学がその人の面倒を見る必要はないと思います。むしろ、雇い止め後は個人の自由に任せるべきだし、働くか、働かないかを含めて、個人が考えて自分で行動すればいいだけです。「社会通念上、相当性を欠く」というのもそうは思いません。当初の約束に従って行動するのは当然であり、何も問題がありません。
第2に、この判決の影響の大きさが心配です。こんな判決がまかり通れば、大学全体に危機が広がります。有期雇用制度が崩れてしまうのです。有期雇用にしておいても無期雇用しなければならなくなるとしたら、そもそも有期雇用しても無意味です。となると、全員を無期雇用するのでしょうか。それが無理だから現在の制度になったわけです。ということは、この判決が導くものは、有期雇用制度の廃止であり、その結果として、たとえば、助教は1年単位の非常勤とするというような運用が考えられます。これはとんでもないことになりそうです。もともと助教は若い研究者の育成(端的には大学教員になること)を考慮した制度のはずですが、その機能が失われます。こうなると、大学に残って教員になることを目指そうというような人がいなくなるのではないかと思います。その結果、大学院を目指す人が減少し、大学院が機能しなくなり、つまり、近い将来の大学は後継者育成の機能が失われていくことになります。それでいいのでしょうか。
オーツは、この判決は大学の危機を招くものだと思います。
2023年01月31日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック

