2020年02月05日

橘玲(2019.7.31)『事実vs本能』集英社

 オーツが読んだ本です。「目を背けたいファクトにも理由はある」という副題が付いています。
 橘玲さんの本を読むのは何冊目かですが、いつもその視線には感心しています。
2016.11.23 橘玲(2016.5)『「リベラル」がうさんくさいのには理由がある』集英社
http://o-tsu.seesaa.net/article/444226367.html
2014.9.28 橘玲(2014.6)『バカが多いのには理由がある』集英社
http://o-tsu.seesaa.net/article/406146199.html
2013.4.30 橘玲(2012.11)『不愉快なことには理由がある』集英社
http://o-tsu.seesaa.net/article/357882772.html
 これら3冊と同様、週刊プレイボーイのコラムをまとめたものがほとんどです。Part 5 はコラムとは別物です。
 元々がコラムですから、長い論考にはならず、短い原稿の集合体といった感じになるわけですが、こういう体裁だからこそ、少しずつ読み進めるのに適していると思います。

 Part 0「ポピュリズムという「知識社会への反乱」」では、PIAAC という調査について述べています。これは PISA の大人版というべきものですが、驚いたことに、日本人のおよそ3分の1は日本語が読めないという結果が出ています。数的思考力もないし、パソコンを使った仕事ができないというのです。しかも、これでも日本人の成績は先進国の1位だということにも驚かされます。今の社会は「知能の格差」にあふれているということです。
 Part 1「この国で「言ってはいけない」こと」では、日本社会が触れたくないと思っている「事実」がさまざまに語られます。マスコミなどではタブーとされるような話が次々に出てきます。女児虐待死事件では、父親は実は血のつながっていない義父だったなどということは、オーツも知りませんでした。それだけがすべてではないけれど、「なぜこの父親はこんなことをするのだろう」という疑問に対して、「ああ、なるほど」と思わせるような説明(の一部)だと思います。いろいろな差別について考えさせるような内容がてんこ盛りです。
 Part 2「私たちのやっかいな習性」では、子どもはほめるとダメになるとか、親がいくら説教してもいじめはなくならないなどのテーマが扱われます。いろいろな内容が書かれますが、それぞれ専門の雑誌に発表された論文に基づいており、単なる印象論とは一線を画すものです。橘氏の文献の読み方に驚かされます。自分の論じていることにピッタリの専門文献を探す(そして読む)ことは、誰でもできることではありません。英語で書かれている場合が多いからです。
 Part 3「「日本人」しか誇るもののないひとたち」では、日本社会の中に厳然として存在するおかしな考え方について言及していきます。靖国神社の宮司が「反天皇」になった理由など、興味深いネタがたくさん詰まっています。ただし、元々コラムであったためか、深く掘り下げるところまではいっておらず、若干物足りなさが残りました。
 Part 4「ニッポンの不思議な出来事」も Part 3 の続きで、女性記者はなぜ「タダで遊べるキャバ嬢」になるのかなどといった、その時代を象徴するようなおかしな出来事をとりあげ、なぜそうなるのか、ユニークな視点で(ある意味では斜め目線で)解釈していきます。
 Part 5「右傾化とアイデンティティ」では、二つの話題を取り上げます。一つは「自民党はリベラル、共産党は保守」という常識を覆す話です。これは世論調査の結果から出てくる考え方であり、大変興味深いものです。こういう視点を持っていると、日本の政治を見る見方が変わってくるように思えます。もう一つは「ネットニュースに棲息するひとたち」で、ヤフーニュースに付く大量のコメントを分類し、一部の人が頻繁に投稿していることを明らかにし、「ネット世論」と言われるものがどういう特性を持っているのかを述べています。
 Part 5 は、コラムと違ってページ数を取って論述していますので、読みがいがありました。
 ちょっと他では目にしないような考察が詰まっていますので、一読するとおもしろいと思います。著者の勝手な解釈ではなく、事実に基づいているところが信頼できると思います。


ラベル:橘玲
posted by オーツ at 08:10| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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