2018年07月12日

川口マーン惠美(2018.3.9)『そしてドイツは理想を見失った』(角川新書)KADOKAWA

 オーツが読んだ本です。
 ドイツのメルケル政権(およびその周辺)の現状を描いています。主として取り上げるテーマは難民問題とエネルギー問題です。連立政権を形作る各政党の間で主張の違いが大きく、また変に妥協すると党員からの支持を失うということで、なかなか連立政権が作れないという問題にもつながります。
 なぜそのような現状になるのか、そのキーワードとしてドイツでは「理想主義」の考え方が強いということを述べています。著者の長いドイツ生活によって培われてきた感覚のようなものでしょうが、うまく現状を説明しているように思います。
 著者は、これらの難しい問題に対して解決策を述べているわけではありません。そんなことは誰であってもなかなかできないでしょう。むしろ、ドイツがどういう状況にあるのかをきちんと解説することに意味があると思います。どうやって決断していくかはドイツ人に任せればいい話です。
 目次は以下の通りです。
序 章 SNS規制法案が可決された日
第1章 戦後ドイツとナチズムとの戦い
第2章 最強の女帝・メルケルの正体
第3章 なぜドイツと中国は仲良しなのか
第4章 矛盾に満ちたエネルギー・難民政策
第5章 EU内でも止まらない「反ドイツ」
第6章 そしてドイツは理想を見失った
終 章 理想を追い求めても自由は手放すな

 難民政策に関しては、国会などでの議論を経ずに、メルケル首相が難民を広く受け入れる方針に転じてしまい、ドイツ語も英語も話せない難民がドイツに大量に流入し、彼らの中からテロや犯罪に走るものが出たりして、ドイツ社会は大きくゆれています。日本が学ぶべきはこういう事例でしょう。近未来に日本にも同様の波が押し寄せてくるかもしれません。そのときになってあわてるよりも、普段からどう扱うべきかを議論しておくことのほうが重要でしょうね。もっとも、現実にそうなってみないと(難民の人数が何人かによっても)とるべき政策は大きく異なるでしょう。難しい問題です。
 エネルギー政策も同様です。ドイツは脱原発を目指しているようですが、その代償として再生エネルギーを利用しようとしているようです。しかし、そういう発電方法は不安定で、コストもかかり、結果的に安い褐炭を利用した火力発電の比率が高まってしまい、CO2削減目標に反するという事態になっています。これらのからまった問題を解きほぐすことは誰にとっても難しい問題です。日本も、将来のエネルギーをどうするのか、きちんと議論しておきたいところです。
 オーツは、このあたりが本書中で一番おもしろいと思いました。

参考記事:
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55156
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/52016753.html


posted by オーツ at 04:18| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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