オーツが読んだ本です。「日米開戦から占領政策、尖閣問題まで」という副題が付いています。
まえがきの数ページを読むだけで引き込まれてしまいます。中国や韓国、ロシアは自国民に対してプロパガンダを行っており、それだけでこれらの国が信ずるに値しないと断定しています。
何か、すっきりした気分です。
歴史とプロパガンダは別物なのですが、現在は、プロパガンダが強すぎて、それがあたかも正しい歴史のように思わされてしまうことが問題です。本書は、そのようなプロパガンダを排して、丹念に文献資料を読み解き、(本書中に154個もの注で出典を示しています)それに基づいて日本が関わる歴史を客観的に描き出しています。オーツの知らないことが多かったので、その意味で大変おもしろく読みました。
・第1章 偽りのリメンバー・パールハーバー ◎機密解除文書が明らかにした日米開戦の深層
真珠湾攻撃に関して、不意打ち説があるわけですが、それは間違いで、アメリカ側は日本が宣戦布告をしないままにどこかを奇襲攻撃することはわかっていたということです。ただし、それが真珠湾であることは予想できなかったというわけです。こういう話は、何に基づいて主張するかが大事なところで、それなしではプロパガンダになってしまう恐れがあります。著者は膨大な文献を調べ、その結果、この結論に至ったということがわかります。
・第2章 スキャンダラスなヤルタ会談 ◎かくもいいかげんだったローズヴェルト
ヤルタ会談のいい加減さを暴いています。日本が北方領土を失うに至ったのもヤルタ会談が原因かもしれません。
・第3章 原爆投下は必要なかった ◎作られたアメリカの公式見解
タイトルが内容を端的にあらわしています。
・第4章 占領軍のブラックな心理的占領 ◎メディアと教育がターゲットだった
占領軍が日本国民をいかに扱ったかを克明に描きます。プロパガンダとはどういうものか、その明確な実例が示されます。
・第5章 国家誕生と同時に始まった中国の侵略 ◎日本を非難する資格があるか
中国のおぞましい歴史の実態を語ります。チベット、インドシナ、ミャンマー、朝鮮戦争などの経緯がわかります。
・第6章 米中・日中国交正常化と尖閣列島 ◎歴史的事実よりもプロパガンダ
キッシンジャー・周恩来などの主張や会談での発言などを踏まえ、尖閣列島の問題がどのように始まり、どのようになってきたかを述べます。なるほど、これがプロパガンダです。
というわけで、現代史を知る上でとてもおもしろい本でした。たくさんの事実の裏にあるたくさんの糸(事象間の関連、因果を含む)が複雑に絡まって現代史があるわけですが、それをうまく切り分けないと、歴史が見えなくなってしまいます。本書は、現代の大国の動きを見る一つの視点を与えてくれたような感じでした。一読すると、現代史がすっきり理解できたような気分になります。
参考記事:
http://agora-web.jp/archives/1649888.html
2017年04月23日
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