この本のタイトルは、直観的に理解できません。英語の原題「The Price of Everything」のほうがずっとわかりやすいと思います。いろいろなものの値段を考える本です。
第1章「「モノ」の値段」では、いろいろなものの値段が妥当なのか、どうやって決まったのか、値付けを変えることでどんなことが起こったのかを論じていきます。具体例が多く、とても興味深い記述です。
第2章「「生命」の値段」では、事故などで死亡した人にどういうふうにお金が支払われるかを通じて、「生命」にも値段が付いていること、さらにそれは人ごとに違っていることを述べます。自分の命の値段が自分でわかっていないとしていますが、それはそうでしょう。普通の人はそんなことを考えることすらしないと思います。
第3章「「幸福」の値段」では、どれくらい所得が増えるとどのくらい幸福感が増すかなどから、幸福も金で買えるものだとしています。ある面では確かにその通りです。
第4章「「女性」の値段」では、結婚するときに花嫁側にお金を支払う習慣がある民族の例を挙げて、その金額を論じます。女性にも値段が付けられているというわけです。
第5章「「仕事」の値段」では、どんな仕事をするとどんな報酬があるかということから、仕事の値段を論じます。
第6章「「無料」の値段」では、ネット上で無料で手に入るものであっても、実は隠れたコストがかかっているので、本来的に無料ではないと論じます。
第7章「「文化」の値段」では、投票の値段(選挙の際の一票の買収の値段)の話しや、動物の権利を守るための値段(というよりも、そのために多少高くなってもいいと考える場合のその割増料)、イギリスの料理の考え方、アメリカのそれ、チップの習慣など、多様なものを扱っています。
第8章「「信仰」の値段」では、宗教的な行事などで人々がどれくらいコストをかけているかを論じます。宗教による違いや、無宗教の人との比較などもおもしろい観点です。
第9章「「未来」の値段」では、あるものの価格が100年後、200年後にどうなっているかを論じます。金利を考慮すると、今の価格は相当に安くても、未来にはかなり高くなるものです。しかし、人々はそういう考え方をしない(それに慣れていない)としています。
こんなことで、きわめて多様なものに対して、それを「値段」という枠を通じて見てみると、どんなふうに見えるかを扱っていると思います。著者は、ものすごい量の参考文献を読んで、この本をまとめたもののようです。巻末の参考文献リストにはビックリします。
副題が示すとおり、人々の価値判断はなかなか合理的とは言えないもののようです。こうして、本書は「値段」を通じて、人間とはどういうものかを描いているといえます。
ラベル:エドアルド・ポーター 値段