2016年09月06日

津上俊哉(2015.5)『巨龍の苦闘』(角川新書)株式会社KADOKAWA

 オーツが読んだ本です。「中国、GDP世界一位の幻想」という副題が付いています。
 中国の経済がどうなっているかを概観した本です。著者は通産省の役人を経て、在中国日本大使館の参事官などを務め、その後民間企業の社長をつとめるという経歴の持ち主です。中国経済の専門家ということです。
 では、その専門家が今後の中国をどう見ているか。専門家ということもあるでしょうが、あまり断定的な予測を書いているわけではありません。うまくいくかもしれないし、うまくいかないかもしれないというスタンスです。それはそうだけれど、読者としては、もう少し断定的な「おもしろい話」を期待したいところです。
 著者は、まえがきで「しがらみのない自営業と門外漢の強みを活かして(?)、見るまま感じるままに書いた外交・安保論です。」と書いています。経済的な見方というよりは、ちょっと違うところを見てみましたということです。
 第1章「危機感を共有する人々――中国共産党は巨大な「振り子」である――」では、共産党の方針について左右に振れる振り子だという論を展開していきます。習近平は再度右旋回しているという見方です。中国の政治のスタンスを考える一つの見方としておもしろいと思いました。
 第2章「投資・信用バブルの終焉――「高成長持続」幻想は崩壊した――」では、GDP成長率と他の経済統計のつじつまが合わないことから、GDP成長率はあてにならないこと、それよりも、中国のバブル後遺症や不良債権処理などを見るほうが実態に近いと述べています。中国経済の実態はかなりひどいようです。
 第3章「「新常態」(ニューノーマル)の本質――ポストバブル期が始まる――」では、今後の中国のあり方を論じています。成長率がさらに下がるとともに、地方財政がおかしなことになっており、そこを何とかしないと中国全体がおかしくなることをといています。
 第4章「三中全会の経済改革――新しい成長エンジンを育成する――」では、現在考えられ討議されている経済改革の方向について議論しています。いろいろなことに触れていますが、全体としてどうなのか、というような概観というか俯瞰する観点があまりないように感じました。ちょっとわかりにくいと思います。
 第5章「経済のシナリオ分析――短期・中期・長期で分析する――」では、今後の中国経済を占います。オーツは記述の歯切れが悪いように感じました。
 第6章「「国家ガバナンス改革」の本質――統治の制度が行き詰まった――」では、司法体制改革が始まりつつあるが共産党の指導という国家理念とぶつかるため、なかなか法律で国家を治めるようにはならないことを述べています。
 第7章「「核心利益」から「周辺外交」へ――習近平の外交政策を読み解く――」では、最近の中国の外交がどんなふうに変わってきたかを述べます。「経済大国外交」を進めようとしているが、実際はなかなかむずかしいようです。
 第8章「外交シミュレーション――外交・安保屋さんの四象限分析を解く――」では、四つの象限で中国を眺めようとしていますが、オーツはこの考え方がイマイチ理解できませんでした。
 第9章「「安倍・習近平」の日中関係――思い込みを「ご破算」にしてみる――」では、日中首脳会談などを通して中国の対日政策を読み解こうとしています。著者の見方の提示ですが、なぜそのような見方がいいのか、あまり根拠を示していないように思われ、本書の記述がどのくらい合理的か、よくわかりませんでした。
 全体としてすらすら読めるというスタイルではなく、歯ごたえがあります。わかっている人にはこういう書き方でいいのでしょうが、オーツのような素人に対しては、もう少し解説的に語ってもらえる方がありがたかったです。


posted by オーツ at 05:06| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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