日本語の「えい」で書かれる語にはいろいろな由来があります。
和語などの複合語は、たぶん誰でも「エイ」と発音すると思います。「羽目板、毛糸、……」の類です。
漢語の場合は、たぶん誰でも「エー」と発音すると思います。「映画、栄養、平成、丁寧、永世、……」の類です。
では、カ行あるいはガ行の五段動詞の連用形のイ音便の形はどうなのでしょうか。
井上史雄(2006.3)「外来語の表記と発音の問題点−エイを中心に−」明海日本語10・11合併号 によれば、
エー[e:]と発音されるのは,力行ガ行五段動詞のイ音便形である。「かせいで,せいては,こまねいて,うめいた,まねいた,春めいて」など。
とありますが、オーツの発音を内省してみると、これらはすべて「エイ」で発音しています。
他に、カ行五段活用動詞では、「あわてふためいた、いまさらめいた、笑いさざめいた、ときめいた、うごめいた、きらめいた、さざめいた、どよめいた、はためいた、ひしめいた、ほのめいた」なども「エイ」です。
ガ行五段活用動詞では「あえいだ、防いだ」なども「エイ」です。「せめぐ」の場合は、自分では「せめいだ、せめいで」の形を使わないような気がするので、判断保留です。しかし、無理に発音すれば「エイ」でしょう。
これらを「エー」で発音すると、くずれた発音のように感じます。規範意識があるのでしょうか。「映画」などは、あらたまった場での発音でも「エー」で、「エイ」と発音することはありません。
その意味では、「はめいた」(いつでも「エイ」)、「春めいて」(「エイ」が規範的)、「映画」(いつでも「エー」)のような3段階の発音があるのかもしれません。
オーツの感覚では、「はめいた」を5、「映画」を1とすると、「春めいて」は中間の3ではなく4くらいに「エイ」に近い感じがします。
これらの発音は揺れているのかもしれません。