2015年03月29日

冨山和彦(2014.6)『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(PHP新書)株式会社PHP研究所

 オーツが読んだ本です。「GとLの経済成長戦略」という副題が付いています。
 日本経済を見るときに、G(グローバル企業)とL(ローカル企業)を別々に見ようという話です。これは、大企業vs.中小企業などということと異なります。企業規模ではなくて、G企業があります。世界の企業を相手に戦いながら成長していく企業のことです。一方では、サービス業を中心にたくさんのL企業があります。これは、サービスが必要とされるその場でサービスを提供する性格を持っています。ですから、世界との競争なんてありえません。
 このような二分法はとても説得力があり、冨山氏の考え方には共感できるところがいろいろありました。
 オーツが一番気になったのは、p.179 の図24です。労働生産性を大企業と中規模企業と小規模事業者に区分して比較しています。労働生産性の単位は「万円/人」です。たとえば、製造業の大企業でいうと、上位10%の労働生産性は 1,587(万円/人)で、下位10%の労働生産性は 519(万円/人)です。で、問題はその下にある「倍率」です。注4にあるように、「倍率=上位10%の労働生産性/下位10%の労働生産性」で計算されます。そこに「3」とあります。1,587/519=3.06 ですから丸めて3倍でもいいでしょう。問題は、そこに「単位:%」とあることです。単位は「%」ではありません。「倍」(より正確には「なし」)です。
 この図は、財務省のものを再編加工したものだそうですから、元の財務省のものが間違っているのかもしれません。しかし、それを引用しているのは著者ですから、著者の責任といえば著者の責任です。
 さらに問題は、この図24に対応する p.178 の本文です。次のような記述があります。
 特に注目していただきたい数字は、生産性格差を表す倍率だ。製造業の大企業では3パーセント、小規模事業者では18パーセントとなっている。大企業の3パーセントという数字は、ほとんど生産性格差がないことを意味する。一方の非製造業では、大企業は5パーセントと製造業と遜色ない数字が出ているが、小規模事業者は31パーセントという数字になっている。

 これらの「パーセント」はすべて「倍」が正しいのです。3%の格差というと、100万円と103万円の違いのように聞こえますが、実際は、100万円と300万円の違いであり、生産性格差がないどころか、3倍もの大きな格差があるのです。非製造業の小規模事業者は31倍というとんでもなく大きな生産性格差があるというわけです。
 ここは本文です。本文に書かれたことはすべて著者の責任です。
 オーツは愕然としました。
 著者がこのような誤解をしていることを知って、オーツはこの著者のことが心配になりました。この方は、経歴などを見ても、とても優秀な方のように見受けられますが、本当に大丈夫なんでしょうか。
 「いらぬ心配、するが心配」なのでしょうか。


posted by オーツ at 03:43| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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