オーツが読んだ本です。「社会からの斥力、出会い系の引力」という副題が付いています。
売春をしている多数の女性たちにインタビューをして、その実態を描いた本です。
ただし、仲介男性が介在する売春ではなく、出会い喫茶や出会いサイトを利用して売春を行う、つまり男性から受け取った代金の全てが自分のものになる形式の売春です。こういうのを今はワリキリというのですね。オーツは知りませんでした。
売春している個人ごとにどんな状況なのか、過去から現在までいろいろ聞き取りをしており、その結果が本書中にたくさん出てきます。売春に関わっている女性たちがどんな生活をしているのか、よくわかります。
オーツは、出会い喫茶も出会いサイトも利用したことがないので、まず、そういうものがどういう仕組みなのか説明してほしいと感じました。本書では、ほとんど終わりに近い8章に説明があります。仕組みを知らない人はまずここを読むべきですが、今の構成だと、ほとんどの人は初めから終わりにかけて順に読んでいくでしょうから、そういうことは望むべくもありません。
最後の章である9章は、出会い喫茶を創案した人へのインタビューで、ここもおもしろかったですね。そこまでは、視点が女性に向けられているわけですが、この章は別の視点から現在の出会い喫茶の仕組みを見るようになっています。
7章では、ナナという名前のアシスタントにお願いして調査をした話です。調査の裏話でもあり、興味深い話がいろいろ語られます。
6章では 3.11 の東日本大震災を扱います。大地震や原発による災害の結果、東北地方の売春事情がかなり変わったわけです。そのあたりが詳細に記述されています。
というわけで、本書は後半に読み応えのある章がたくさんあるように思います。まあ、本に何を求めるかによって違ってくるとは思いますが、後ろから前にかけて読むようなことも意味があるように思いました。
ともあれ、こういう調査を地道に行った著者には、脱帽です。個人によるインタビューでは、女性たちにちゃんと謝礼を払った(本書の記載によれば、女性はトークで連れ出すと5千円かかる)そうですから、全体では相当な調査費用がかかったということになります。なかなかできることではありません。
2014年01月11日
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