2012年02月10日

矢野眞和(2011.5)『「習慣病」になったニッポンの大学』日本図書センター

 オーツが読んだ本です。「18歳主義・卒業主義・親負担主義からの解放」という副題がついています。
 高校生を読者に想定して、デスマス体でやさしく語りかける内容ですが、述べられていることはかっちりしています。
 戦後、日本の大学は、経済成長とともに発展してきたのですが、今は、「改革」が必要な時期になっているとうことです。問題は、どういう方向に「改革」するかということですが、副題にもあるように、日本の大学は18歳でいっせいに入学する場合が多いため、多様な学生が学ぶ場になっていません。入学すると、その9割が卒業するということで、入ったら卒業できる場合がほとんどです。そして、大学の学費(と学生の生活費)は親が負担するようになっています。この3点セットは日本の大学のあり方を規定しているので、どれか一つを変えるということはしにくく、「改革」するならいっせいに変えるべきでしょう。著者によれば「親負担主義」をやめる(つまりは、税金を大学を注ぐ)ことが一番重要だとのことです。こうすれば、授業料ゼロが実現し、誰でも(必要になれば)大学に行けるし、また卒業まで長い時間がかかっても問題ないということになります。
 それはわかりますが、果たして、その方向で日本の場合に国民的合意が可能なのか、はなはだ疑問です。
 こういう「改革」はラディカルにやるしかない(少しずつ変えることができるでしょうか?)と思いますが、それは、社会の変革を含むために、抵抗が大きいでしょう。日本の大学のあり方ができあがってきたのも、新制大学が発足して60年ほどの時間をかけてしだいに今の姿ができあがってきたのですから、それを一気に変えるというのは乱暴なように思います。
 こういう「改革」は、「実験」ではありませんから、失敗したらおおごとになります。
 そうならないように、長時間をかけた議論が必要ですが、そんなに長時間がかけられるでしょうか。
 日本の大学問題を理解するには、好著だと思いますが、「現実的か」と聞かれると、そうでもないように思えてきます。
 ともあれ、大学をよく知るためには便利な本です。高校生向けを意識して書かれていますが、むしろ、50代から70代くらいの人が読むと、自分が経験してきた現代史の整理にもなり、おもしろいのではないかと感じました。


ラベル:矢野眞和 大学
posted by オーツ at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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