2012年01月13日

児美川孝一郎(2011.2)『若者はなぜ「就職」できなくなったのか?』日本図書センター

 オーツが読んだ本です。「生き抜くために知っておくべきこと」という副題が付いています。
 全4章構成です。
第1章 学校は、いつから「職業人養成所」になったのか?
第2章 なぜ若者の雇用問題は、学校教育を直撃したのか?
第3章 「新規学卒一括採用」の功と罪
第4章 仕事の世界へのわたりを支援する学校教育の課題

 著者は大学教授で、ふだんから学生と接触してきています。その中で、就職のあり方が変わってきたことを受け止め、新しいキャリア教育を提案しています。
 全体の流れとしては、もっともだと思えるところも多いのですが、オーツは、最近の企業の考え方を基準にすると、児美川氏のいうようなキャリア教育が企業に受け入れられるのか、はなはだ疑問です。
 以下、オーツの考え方を書きます。
 はっきりいえば、日本国内で、企業は人を必要としなくなってしまったのです。全くゼロになったわけではありませんが、就職ということで普通に思い起こされるような「大企業の正社員」は、ここ20年くらいで様変わりしてしまったというべきでしょう。今、普通に正社員として募集しているのは中小企業です。大企業では、ごく一部の、将来の幹部候補を採用すれば、それで十分であり、そうでない一般社員は不要なのです。総合職というものが、将来の幹部候補だとすれば、総合職だけ採用すればいいということです。総合職には優秀な人材がほしいのです。あとは、派遣社員やアルバイトなどの非正規社員に任せることにしています。
 なぜそうなったかといえば、日本社会の変化が原因です。円高や、法人税の高さ、電力不足、解雇を初めとする各種規制の多さ、そして少子高齢化と経済の低迷など、さまざまな状況を考えると、大企業が日本に残って日本人の若者を正社員として雇い入れるというモデルはすでに成り立たなくなっています。海外に移転することは、ある意味で日本の空洞化ですが、企業にとってはこれからの当然の合理的行動というべきです。
 そのような構造の変化が起きている以上、従来型の「就職」ができるはずもありません。それが可能なのは、公務員、教員などの従来型の仕事が生き残っている職種くらいしかなくなっています。
 児美川氏は、仮に正社員になれなくても、教育と職業経験を活かしつつ、数年以内に正社員になれるような、そういうキャリア教育を推奨していますが、オーツは、こんなことをしても効果は少ないと見ています。なぜなら、企業側の論理として、そんな人は不要だからです。将来の幹部候補になるような優秀な人材なら、新卒時にどこかの企業が目を付けないはずはありません。数年フリーターをやっている人は、やはりそういう人材でしかないと思えます。新卒者は、優劣がわかりませんが、さまざまな面接などを通してしぼっていけば、一応優秀な人が採用できるでしょう。もしも新卒者を採用できなければ、優秀でない人を無理に採用する必要はなく、翌年まで待てばいいのです。
 そんなことを考えているオーツから見ると、この本には、けっこう不満を感じました。データに基づいて論を進める態度には好感が持てますが、その先の、日本の就職事情の見通しなどで、疑問を感じたわけです。
 もっとも、今の就職問題を考えるときに、卒業者(学生も生徒も)は、困難に直面しますが、その親世代はそんなことが理解できないでしょう。自分たちのときは違っていたからです。そんなことを考えると、この本は、若い人が読むよりも、子供が高校生か大学生で、これから就職を考える段階にいる「親」に読んでほしいと思います。

posted by オーツ at 06:05| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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