2011年03月05日

榎木英介(2010.11)『博士漂流時代』(DIS+COVERサイエンス)ディスカヴァー・トゥエンティワン

 オーツが読んだ本です。「「余った博士」はどうなるか?」という副題が付いています。
 理工系の大学院博士課程修了者で常勤の職に就いていない人がたくさんいるという話です。ポスドクと呼ばれます。ポスドクは、研究の実質的な担い手として、各研究室で重宝される存在ですが、収入という面では十分ではなく、なによりも任期付きであることで、将来を暗いものにしているというわけです。
 『高学歴ワーキングプア』
2007.11.5 http://o-tsu.seesaa.net/article/64584540.html
や『ホームレス博士』
2011.1.17 http://o-tsu.seesaa.net/article/181077787.html
と同様の観点から書かれています。
 著者はもともとバイオ系の研究者だった(その後で医者になった)というわけで、特にこの方面についてくわしく書かれていますが、内容的には自然科学系全般に通じる話になっています。
 目次は以下の通りです。
  第1章 博士崩壊
  第2章 博士はこうして余った
  第3章 「博士が使えない」なんて誰が言った?
  第4章 博士は使わないと損!
  第5章 博士が変える未来
  付 録 博士の就職問題について識者に聞く
 第1章は、博士課程修了者の実態を描いています。多くの統計資料を用いて(出典を示して)図であらわし、それに基づきながら記述していますので、説得力があります。この態度は他の章にも見られます。
 『高学歴ワーキングプア』では、個人的な記述が多かったのですが、本書は客観性を重視しているようで、この態度には好感が持てました。
 オーツがおもしろいと思ったのは第4章で、大学教員への道が厳しいとすれば、ではどういう形で博士たちが活躍していけるかを具体的に提案しています。いろいろなアイディアが示され、それぞれもっともな感じです。今後は、こういうさまざまな道を歩んでほしいものです。(もっとも、それで本当に食っていけるのかはわかりません。)
 本書では、人文社会系はまったく取り上げないという態度で一貫しています。しかし、そちらでも同様の問題が発生しています。今後、そちらについても記述されることを願っています。
 オーツは文系人間ですが、周りを見渡しても、本書の記述と瓜二つの実態を見ることがあります。大学院進学を考えている人は、事前によく教員に相談して、自分に適性があるのかどうかを確認しておくべきでしょう。勘違いして進学すると、教員も大学院生も不幸です。


ラベル:榎木英介 博士
posted by オーツ at 05:44| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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