オーツは「田田の宿」に泊まりましたが、ここは茶褐色の温泉が楽しめます。温度はあまり高くないので、ゆっくり浸かっていることができます。温泉はかけ流し方式で、湯船の縁からお湯が流れ出ています。
オーツがもっぱら利用していた小浴場は、単純な長方形でした。
A B
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C D(吐水口)
図の D のところが吐水口になっています。吐水口は A の方向(湯船の中心方向)を向いています。じょぼじょぼと温泉のお湯が湯船にそそがれます。
温泉の成分の影響もあるのでしょうが、お湯の表面に泡ができます。静かに風呂に浸っていると、ずいぶんたくさんできます。
この泡は、A, B, C に均等に流れていくのかと思っていましたが、そうではなく、B と C の二方向に、縁を伝って移動していきます。
なぜ、A の方向に行かないのでしょうか。
オーツの仮説では、以下の通りです。湯船にはへりがあるので、吐水口から流れ出たお湯は、四方八方にちらばるのではなくてへりで規制され、B と C に行く流れが強まります。したがって、その流れに乗る泡は B と C に向かうのです。
吐水口ではどんどん泡ができますが、それらの泡が B と C に向かっていくと、だんだんつぶれながら移動速度が落ちていきます。これは当然です。
よく見ていると、B のへりまで到達しないうちに泡が全部つぶれてしまいます。ところが、C のへりには泡がつぶれずに到達することがあります。移動距離は B よりも C の方が長いのですから、常識と違います。移動距離が長いほうが移動時間がかかり、したがって泡が到達する前に消えてしまうのならば、何の不思議もありません。でも、実際は違うのです。
なぜ、泡は、短距離の B に到達しないのに、長距離の C に到達するのでしょうか。
オーツの仮説では、以下の通りです。お湯は浴槽の A-B と A-C でこぼれるような設計になっています。浴槽の縁の高さは同一であるように作られているはずですが、微妙に C のほうが低いのではないでしょうか。目で見た限りでは、お湯のこぼれ方に差がありませんが、0.2mm とかの違いがあるのではないかと考えます。そこで、わずかだけ C のほうがこぼれる量が多く、そのために泡が C に移動するほうがちょっとだけ早いのではないかと思うのです。
この仮説が正しいかどうかはわかりません。
しかし、こんなことを考えていたら、ずいぶんと長湯になってしまいました。ま、その分、ゆっくりしたわけです。これも温泉の楽しみ方の一種だと思いました。
2010年08月10日
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