オーツが読んだ本です。「新潮45」に2007年1月号から2008年9月号まで掲載された「夜明けの新聞の匂い」をまとめて単行本化したものです。
アフリカの現状を著者の見たままの視線で描きます。極貧とはこういうものかという驚きの記述がたくさん出てきます。これに比べたら、日本の貧困層なんて、貧困の内に入りません。
p.9 では、コンゴ東部の内戦のときの女性が受けたレイプと、その結果としてのフィスチュラの話が出てきます。おぞましい話です。機関銃を手にした民兵たちがいかに残虐だったかを示す証拠です。
p.30 では、出産の話が出てきます。ある産院の話ですが、保育器があっても未熟児網膜症なんて無関係だという話です。それはそもそも保育器用の酸素がない(ホントの緊急時用にとっておく)ためだったというのです。それだけでなく、産院には乳児用のミルクもなく、石鹸すらないのです。乳児はおむつもなしに母親に抱かれ、母親は自分の衣服が濡れることで赤ん坊のおしっこを知るというのです。いやはや驚きです。
p.59 では、サハラ砂漠をクルマで突っ切る話が出てきますが、そこで、運転手たちが大量のブドウ酒をクルマに積み込み、飲みながら運転するのだそうです。しかし、それは飲酒運転ではありません。なぜなら、サハラには道路が存在しないからです。1480 キロメートルを、人が住まず、水もガソリンも補給できない状態で走り続けるというのは、並大抵の話ではありません。クルマが故障したら、それで死ぬことになります。
上にあげた話はほんのいくつかのエピソードにすぎません。本書は、具体的な記述がふんだんに出てきます。それらは全部著者が経験した話であり、それだけに、まさに驚きの連続で読み進めることになるのです。
こういうのを読んだからといって、何かのためになるというものでもありませんが、現代のありさまの一端を知るには好都合の1冊でしょう。
日本にいる我々ができることといえばたかがしれていますが、寄付などを通じて、少しはお役に立ちたいものです。もっとも、このような広範囲に広がる極貧の世界を知ってしまうと、一体何から手を付けたらいいか、途方に暮れてしまうのですが。
2009年07月18日
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