オーツが読んだ本です。318 ページもある長い「小説」です。
普通の小説と違っている点は、巻末に参考文献のリストが付いていることです。39点が上がっています。全部単行本です。
なぜこんなことになったのか、p.316 に書いてあります。「本書は、近年のマインドサイエンスの成果を小説にしたらおもしろいのではないか、というアイデアから始まった。ここに登場する不思議な話の数々はたんなる著者の思いつきではなく、急激に進歩する脳科学や分子生物学、情報科学・工学が実現もしくは実現可能にしたものばかりである。」
というわけで、本書は小説という体裁(登場人物をはじめすべてフィクション)を取りながら、最近の学術研究を踏まえて、こんなことが可能になった、ではそれが人間の生活にどのような影響を与えるかというあたりを記述したものといえるでしょう。
小説にもかかわらず、何枚かの図が入っていることも興味深いものです。内容が内容だけに、全部を言葉で説明するだけでは済まないということの表れだと思います。
では、小説としておもしろかったか。
オーツは、残念ながらさほどおもしろくないという印象を持ちました。登場人物が架空であるし、それぞれの振る舞いがかなり正常から外れているように感じて、どうにもこの小説の描く世界になじめなかったという印象です。
最新の学術研究(のうちのマインドサイエンスの領域)は、どうもおかしなことばかりなように思えて、どちらかというとうさんくさい感じがしてしまうように思いました。
本当は違うのでしょうけれど。