2019年06月04日

ユヴァル・ノア・ハラリ(2018.9.30)『ホモ・デウス』(上・下)河出書房新社

 オーツが読んだ本です。「テクノロジーとサピエンスの未来」という副題が付いています。
 著者がとても博識であるだけでなく、著者の読んだ様々な分野の知識が結びつけられて大きな全体像が描かれる感じです。一言で言うと、人間は昔から言われているところの「神」になったようなものだし、これからますますそうなっていくということです。人類は、科学や技術を発展させることを通じて「神」になるわけです。

第1章 人類が新たに取り組むべきこと
 過去の人類の歴史では、飢饉・疫病・感染症・戦争などの脅威にさらされてきましたが、現在、それらの多くは解決してしまい、多くの人は、死ぬまでに直接経験することがありません。こうして、未来の人類は不死を目指し、あたかも「神」になるかのようです。

第1部 ホモ・サピエンスが世界を征服する

第2章 人新世
 人間が地球を、またそこに住む多くの動物たちを(家畜という形で)支配するようになってきた歴史を展望します。

第3章 人間の輝き
 人間の命はブタの命よりも価値があるのかと問います。人間は意識を持っています。それは脳の中にあるように思えますが、現在では、コンピュータが意識を持つようになりつつあります。動物の一部にも意識があるようです。
 人間が社会を構成しているときに、どんな仕組みが働いているのでしょうか。

第2部 ホモ・サピエンスが世界に意味を与える

第4章 物語の語り手
 農業革命によって、人類は農耕で食べていくようになりますが、それと合わせて文字と貨幣を発明し、使うようになり、社会が大きく変わっていきました。

第5章 科学と宗教というおかしな夫婦
 科学は宗教とどう折り合いをつければいいのでしょうか。
 宗教を著者はかなり広いものととらえており、共産主義などもその一種だとしています。現代の人間が信じている「人間至上主義」も、一見科学であるような顔を見せていますが、宗教の教義のようなものだと考えられます。

第6章 現代の契約
 社会は定常的なものではありません。経済がどんどん大きくなるから、利息というものが発生し、さまざまなレベルで契約社会になったのです。

第7章 人間至上主義
 人間の自由意志が最高の権威であり、自分のしていることの意味は自分が考えるべきもので、究極的に自分自身が一番だという考え方が広く認められる社会になって、「神」は不要になってしまいました。芸術も教育もその意味を変えてしまいました。自由主義も社会主義も人間至上主義から発生しています。

第3部 ホモ・サピエンスによる制御が不能になる

第8章 研究室の時限爆弾
 自由意志というものも、ほんとに自由か疑問があり、脳を各種手段で刺激して感覚や感情を変更してしまう技術が発達中です。そうなると、人生の意味は何かという根本的な疑問がわきます。

第9章 知能と意識の大いなる分離
 コンピュータの発達によって、人間は大きな力を手に入れましたが、一方では、それによって人間が無用な社会が形成されようとしています。生命がアルゴリズムであるなら、Google が自分のことをよく知っている状態では、自分自身に関する判断を自分で行うよりも Google に任せてしまってもいいのではないでしょうか。

第10章 意識の大海
 テクノ人間至上主義とデータ教という新しい宗教が発生しています。テクノ人間至上主義では、テクノロジーを使ってホモ・デウスへの進化を予想します。

第11章 データ教
 データ教、つまりデータ至上主義は、森羅万象がデータの流れからできているという考え方ですが、現在すでに科学界の主流をなしています。政治制度もデータ処理システムとして解釈できます。データ至上主義が世界を征服すれば、ホモ・サピエンスはいらなくなってしまいます。

 著者の広範な知識には驚くばかりです。未来を語りつつ、歴史を始め哲学や芸術などあらゆるものに言及していきます。本書は簡単な要約ができません。全体として、ものの見方のようなことを論じています。メインテーマは人類が今後どうなっていくかですが、現代のコンピュータの発達を中心に置きながら、「その先」を見ようとしています。

 上下2巻に分割されて出版されていますが、内容は事実上連続していますので、1冊にしてもよかったと思います。紙の質を薄くするとかの工夫が必要だったように感じます。(出版社のもうけ主義が感じられます。)
 あとで気がつきましたが、上下合本版も出版されています。

参考記事:
http://imnstir.blogspot.com/2018/09/deus-ex-machina.html
https://imnstir.blogspot.com/2018/09/deus-ex-machina_16.html



posted by オーツ at 04:30| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする