2018年12月19日

有馬哲夫(2018.9.13)『原爆』(新潮新書)新潮社

 オーツが読んだ本です。「私たちは何も知らなかった」という副題がついています。
 とてもおもしろい本です。オーツも知らなかった原爆に関する事実が満載です。目からウロコが落ちるというのはこういうことをいうのでしょう。著者の有馬氏は、米英の原爆に関する大量の資料を読み込んで、この本を書いたとのことです。史実に基づいて書かれたという点でも大変興味深い内容です。

T 原爆は誰がなぜ作ったのか
 オーツは常識的に「アメリカが作った」と思っていました。たいていの人がそう思うのではないでしょうか。違います。アメリカだけでなく、イギリスとカナダも加わって3ヵ国が共同で作ったのです。

U 原爆は誰がなぜ使用したのか
 オーツは常識的に「アメリカが戦争終結を早めるために使用した」と思っていました。違います。
 そもそも、原爆を日本で爆発させる場合でも、離島のケース、軍事工場のケース、大都市のケースがあり、そのどれにするかが議論されていたのです。さらに、その場合でも、事前に警告を与えるケースと無警告のケースがあり、(軍人でない)一般人の命を考えたら、警告を与える選択肢も十分あったと思います。しかし、結果的に、無警告で大都市を爆撃したわけです。
 なぜそんな使用形態になったのか。
 トルーマンを初めとするアメリカ側の考え方、チャーチルを初めとするイギリスの考え方がそれぞれあり、2ヵ国の中でも、個人間に考え方の違いがありました。そういう状況の中で、原爆の開発費が高くつきすぎ、何としても戦争中に原爆を使わざるを得ないと考えるようになったわけです。トルーマンは、真珠湾攻撃に対する懲罰として無警告投下を選択したということです。このあたりの記述は、源資料を綿密に読み込んだために明らかになった話です。トルーマンが自己弁護的な日記を残したことも納得がいきました。

V 原爆は誰がなぜ拡散させてしまったのか
 開発段階から原爆の国際管理のことを考慮していたのに、実際は核が拡散してしまいました。これについてもトルーマンの責任が大きいようです。

 全体の記述は、大変興味深く、一気に読んでしまいました。
 原爆がどういうものであったか、日本人はつい被害者の立場で見てしまいがちですが、英米側の視点で見てみると、それとはまったく違う側面が浮かんでくるものです。
 「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」ということばも、本当にこれでいいのか、大いに疑問に思いました。
 本書の末尾には207個もの註がついています。本文中で述べたことがどの文献によっているのかを明記してあります。英語で書かれた文献が大部分です。このような大量の註は、本書の記述が信頼できるものであることを示しています。

参考記事:
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/52019689.html


ラベル:有馬哲夫 原爆
posted by オーツ at 04:59| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする