2015年10月22日

池田信夫(2015.4)『戦後リベラルの終焉』(PHP新書)PHP研究所

 オーツが読んだ本です。「なぜ左翼は社会を変えられなかったのか」という副題が付いています。
 今の社会をどう見るか、さまざまな問題をどう考えるべきか、著者の社会を見つめる鋭い目が光ります。説得力のある意見が開陳されます。
 プロローグは「私が左翼だったころ」です。思い出話です。
 第1章「朝日新聞の挫折」では、従軍慰安婦問題などで露呈した朝日新聞の問題を論じます。朝日新聞社は、会社として腐った部分があります。それが慰安婦問題で表に出てきたということでしょう。
 第2章「「平和主義」のユートピア」では、集団的自衛権をめぐる問題を鮮やかに斬ります。政治家が国民に迎合し、官僚が政策立案を行っている日本のあり方のおかしさが語られます。
 第3章「メディアが日本を戦争に巻き込んだ」では、秘密保護法、記者クラブ、西山事件などを取り上げ、実はメディアが日本を太平洋戦争に引きずり込んだことを述べます。
 第4章「メディアがつくった原発の恐怖」では、原発はさほど危険でもないのに、メディア(たとえば朝日新聞)が恐怖をあおるような報道をしたことを指摘しています。
 第5章「労働者の地獄への道は善意で舗装されている」では、正社員を過剰に保護する日本社会のあり方の問題を論じていきます。関連して、「ブラック大学」は非常勤講師を使い捨てているという見方もおもしろいと思いました。
 第6章「進歩的文化人の劣化」では、大江健三郎や内田樹などを滅多切りしています。痛快です。
 第7章「「オール野党」になった政治」では、日本の政治の問題点を述べていきます。政治は、どう見てもおかしなことだらけですが、なぜそうなっているのかを説明しています。政権交代しても、何もよくならないし、それどころか、さらにひどい結果になったことは明らかです。
 第8章「戦後リベラルの栄光と挫折」では60年安保などを通じて戦後のリベラリズムがおかしな方向に進んできたことを述べます。
 第9章「左翼はなぜ敗北したのか」では、全共闘、公害反対運動、民主党などの考え方を批判しています。
 エピローグは「「普通の国」への長い道」で、小さな政府を主張します。
 幅広い話題を扱っていますが、それらに対して過去の左翼がたどってきた道筋を述べ、それが必ずしも正しくなかったこと、そして、左翼が今もその方向でしか物事を見ていないことを示し、そんなことではダメだとしています。著者の態度は一貫しており、オーツはうなずきながら本書を読み進めることができました。
 こういう考え方が人々に広く受け入れられるようでないと、日本社会はよくならないでしょう。多くの人に、著者の考え方を知ってもらいたいものです。一読する価値はありますし、新書ですから手軽に読めます。是非どうぞ。


posted by オーツ at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする