オーツが読んだ本です。「グローバル人材と就活迷子のあいだ」という副題がついています。
大学がどういうところかを外部の目で描いています。
目次は以下の通りです。
第1章 バカ学生、まかりとおる
第2章 大学だってアホっぽい
第3章 講演「受験生をゼロにするためのパンフレット作り」
第4章 就活を巡る空回り
第5章 難関大でも「面倒見がいい」時代
第6章 日本バカ学生史
第7章 定員割れ大学のサバイバル競争
第8章 マンモス大、グローバル人材とバカ学生の間で揺れる
第1章は、おかしな学生を描きます。具体的なエピソードが満載です。18歳人口の約半数が大学に進学する時代になったのですから、そりゃ中には変な学生もいるでしょう。それを「バカ学生」と言い切ってしまうのはどんなものでしょうか。オーツは、そういうののしりことばは使う側の品位が下がってしまうように感じます。
第2章は、大学の広報を中心に、大学側のおかしい例を多数挙げていきます。大学がたくさんあるということは、中には変な大学もあるということでしょう。それを「アホ大学」と言い切ってしまうところもオーツには違和感があります。それぞれの大学としては、個性的な大学を目指しただけなのかもしれません。それを事後的に切り捨てるかのように書くのはいかがなものでしょうか。
p.37 には、高校の校長上がりの人を大学の広報で雇う話があります。大学にとって、高校生を呼び込むのに適しているかのように見えるけれども、実は、高校側としては「大学の飛び込み営業となった元上司」は扱いに困るということだそうです。
第3章は架空の講演です。大学のパンフレット作りを揶揄しています。
第4章は就活を描きます。ここもおかしなエピソードが満載です。就活をめぐる有料セミナーなんてものがあるのですね。オーツは知りませんでした。こんなのに出るなんて、無駄金をはたくようなものでしょうに。
第5章は、今の大学は何かと学生の面倒を見るというわけで、ここにも具体例がたくさん出てきます。それぞれの大学が工夫していることが見て取れて、おもしろいと思います。p.140 では武庫川女子大学の2泊3日の「テント泊」の話が出てきます。今の学生に不便な生活を体験させるという趣旨はわからないではないですが、大学生の合宿のあり方としてどうなんでしょうか。
第6章は明治・大正にあった話をまとめています。昔から変な学生はいたもののようです。
第7章は、つぶれるかもしれない大学を描いており、なかなかシビアな話です。大学側のユニークな取り組みなども描いており、本書の中で一番おもしろいところかもしれません。
第8章では、いろいろな大学の取り組みを描いています。中でもおもしろかったのは「特進クラス」でした。高校でこういうクラスがあることは知っていましたが、一部の大学でもあるのですね。きわめて優秀な学生を選抜して、授業料を無料にして、少人数クラスで徹底的に鍛えるというものです。大学側としては、宣伝効果を期待しているのでしょうが、特進クラスでない一般の学生は、授業料を貢ぐだけなのでしょうか。オーツはそちらの学生が心配になりました。
本書は、大学のいろいろな側面を描いていると思いますが、エピソード主義的で、「楽しく読める」ことに重点を置いている感じです。大学の本質に迫るものではありません。こんな話もあるという程度で終わっても、新書ということを考えれば、それはそれでいいのではないでしょうか。
しかし、オーツとしてはだいぶ物足りない感がありました。