オーツが読んだ本です。
PART 1 は「裁判所という迷宮をさまよって」で、あるオーストラリア人が本人訴訟(つまり弁護士を立てない民事裁判)で保険会社を訴えるという話です。橘氏はオーストラリア人の代理人として裁判所とのやりとりなどを経験します。
裁判がどう行われているのかを知るために、とてもおもしろい本です。多くの訴訟では、代理人(弁護士)をつけずに、本人が中心で動いているんですね。知りませんでした。
バイクとクルマの事故で、バイク側の損害15万円をめぐって、損害保険会社がそれを払わないということが描かれます。バイクとクルマの責任割合は2:8ということだそうです。15万円にこだわるのも変な話だと思って読み進めていました。
すると、p.98 になって、はじめて、相手のクルマがマセラーティという高級外車で、修理代が250万円だったってことが書いてあります。
これはミスリーディングなのではないでしょうか。バイクの修理がどうのこうのいう問題ではないでしょ! 250万円の修理代をどうするという話ではないですか。
そのことを伏せて、100ページ近くまで読者を引っ張っていいのでしょうか。
PART 2 は「少額民事訴訟に巻き込まれたら」で、より一般的な話を書いています。こういう知識を持っていないと、いざ、訴訟になったら困ってしまいそうです。
最後には「福島原発事故の損害賠償請求」という話も出てきます。膨大な被害者がいて、訴訟などが起こったら弁護士が対応できないし、福島県から遠くの弁護士では地名などがわからず、被害者の申し立てがちゃんと理解できないかもしれないなどという問題が指摘されます。福島県はこれから弁護士バブルになると見られます。
原発事故で避難した人は、東京電力に損害を請求するわけですが、津波で家を流された人は、自然災害ということで、どこにも請求できないわけです。元の土地に住めなくなったということでは同じような状況のように思えますが、両者はずいぶん違ったものになるわけです。しかも、東京電力が損害を補償するといっても、それは、元をただせば国のお金であり、つまりは国民一人1人のお金ということです。東京電力が払った分だって、電力料金の値上げという形で利用者が負担するわけですから、常識的な線で手を打ってもらいたいものです。
ともあれ、裁判について、とってもためになる本でした。