2013年03月03日

川島博之(2011.8)『「作りすぎ」が日本の農業をダメにする』日本経済新聞出版社

 オーツが読んだ本です。日本の農業問題を考える本です。
 一番の主張は、食料は現状で世界中で過剰生産されているということです。
 そのような視点から見ると、さまざまな問題がきれいに整理されて見えるというわけです。
 とてもおもしろい視点でした。
 第1章「食糧危機は訪れない――歴史的視点から見る」は、川島博之(2009.3)『「食糧危機」をあおってはいけない』
2013.2.9 http://o-tsu.seesaa.net/article/319835425.html
の要約のような感じでした。世界は、食糧不足にはならないということです。
 第2章「食料は過剰生産されている」は、食料は安く、エンゲル係数は低下傾向にあり、食料はたくさん作られすぎているのだということが書いてあります。p.73 あたりでは、食料があまりにも安いので、日本ではフリーターでも食べていけるし、だからこそ、定職に付かない若者が増えているのだと論じています。
 第3章「過剰生産が農業問題を引き起こす」では、今の農業政策が戦後の食料不足時代の延長であるとしています。食糧の貿易なども、過剰な食料の押し付け合いと見ると、きれいに整理できます。アフリカなどで食料問題があるからといって、日本の余っている米を現地に無料援助しようとすることなどは大きな間違いで、「同情するなら小麦を買え」ということで、現地の農産物を日本が輸入することが現地のためになるという見方を示しています。
 第4章「地方を重要視した日本農業」では、日本の農業の基本的問題を論じています。農業基本法が間違っている(将来の推測を間違えている)という指摘もおもしろかったです。米価格と選挙のつながり、農地を宅地として売ると儲かることなど、今の農業の問題を見事についています。
 第5章「競争力がない日本の農業」では、日本の農業の現状の問題を指摘しています。日本は耕地面積が狭いわけですが、だからこそ、広い土地を必要としない栽培が今後の鍵になるというわけです。
 また、農協の問題点も指摘しています。もともとは農業従事者のための、文字通りの組合だったのに、今や金融や保険業になってしまったと見ています。納得できます。
 第6章「これからの日本農業を考える」では、コメの輸入を自由化し、価格を半分にし、一方では畜産や野菜をメインにして輸出せよと説きます。妥当な意見だと思いました。
 本書は、全体として、農業問題を考える上でおもしろい見方を提示してくれます。食料不足を心配して現在の制度を作ってきた日本と、食料が過剰生産されている現状のギャップを意識するだけでも、今後の農業のあり方が違って見えてくると思います。


posted by オーツ at 06:21| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする