2012年10月26日

ニック・ポータヴィー(2012.2)『幸福の計算式』阪急コミュニケーションズ

 オーツが読んだ本です。「結婚初年度の「幸福」の値段は2500万円!?」という副題が付いています。
 何でもお金で表してしまおうという試みは、興味深いものです。それが失われたときの慰謝料の算定の基準になるという副次的な効果もあります。裁判所には必要な数値でしょう。
 ただし、その求め方が問題です。多人数に幸福度を主観的5段階でたずねて、その平均で表すようなやり方では、どうにもあらっぽいと感じてしまいます。
 本書で気になったところをいくつかメモしておきましょう。
 p.33 「幸せな人は長生きする」とあります。オーツがここを読んだとき、因果関係が逆ではないかと感じました。「長生きするような人は幸せを感じてきた人だ」あるいは「長生きした人が幸せを感じるものだ」という論理のほうがあてはまりそうです。しかし、p.218 あたりを読むと、因果関係はこれでいいということになります。幸せな人は交通事故で死ぬ確率が低いとか、病気になった後もかなり長く生きるという統計があるのだそうです。不思議な話です。
 p.116 では、配偶者の死が 3,800 万円に相当するとあります。実に微妙な金額で、そんなものかもしれないなと思いました。それにしても、配偶者の死を金額で表すという試みがユニークです。(それだけでなく、親や友人や子どもなどの死も金額で表現してしまいます。)
 pp.145-146 では、結婚の幸福感が続くのは、たった2年間だということです。これまたすごい話だと思いました。たった2年間です。2年経つと、生活の満足度は、結婚前と同じ程度になってしまうのです。そんなものでしょうか。世の中の夫婦などを見ていると、そんなものかもしれないなあと思います。オーツの場合の新婚時代を振り返ってみると、幸福感が続くのはもっと長かったような気がします。
 p.147 では、子供が産まれると、満足度がマイナスになり、それが数年続くというのです。これも興味深い結果です。結婚してすぐ子供が産まれるような場合は、結婚の満足度が子供の誕生によって下がってしまうことになりそうです。まあ、それを乗り越えて夫婦が家庭を築き上げていくのでしょうが。
 p.225 あたりでは、幸せは他人に伝播するということが出てきます。いわれてみれば、そんな気もします。
 p.227 では、ストレスも他人に伝わるということです。もっと正確な言い方をすると、親が前年に抱いたマイナスの感情は、子どものその年の幸福度に大きなマイナスの影響を与えるというのです。こんなことまで検証されているというのは驚くべきことです。
 本書を読むと、こういうユニークな話がごろごろ出てきます。
 これらの個々の話に疑問を持つ人がいるかもしれません。それに対しては、本書はそういう研究を行った人々の原典となる研究論文を、注と参考文献で示しています。
 たとえば、ストレスも他人に伝わるという話は、第9章の注 38 の Powdthavee, N., Vignoles, A., 2008 に書いてあるということになり、それは、参考文献リストの p.27、'Mental health of parents and life satisfaction of children' という論文で、Social Indicators Research という雑誌の Vol.88, pp.397-422 に掲載されているということです。
 オーツは、それらの論文に直接当たったわけではありませんが、その気になれば、直接読むことができます。本書はそういう態度で書かれているということです。そのような著者の態度は好ましいと思います。


posted by オーツ at 04:22| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする