オーツが、電車に乗っていたときのことです。オーツは、始発駅から乗ったので、ロングシートの座席に座っていました。車内は結構込んでいて、立っている人がたくさんいる状態でした。
途中駅から夫婦と小学生くらいの男の子の3人連れが乗ってきました。3人で話していたことから、オーツは家族だと思いましたが、もしかすると、夫婦ではなくて兄妹かもしれませんし、自分たちの子供ではなくて、甥っ子かもしれません。しかし、常識的には夫婦とその子供だろうと思います。
3人が乗り込んできても、込んだ電車ですから、空いている席はなく、3人は手荷物を網棚に上げてオーツの前に立っていました。
電車が進むうちに、だんだん降りる乗客がいて、あちこちに空席ができるようになってきました。3人連れは、空いている席に順に座るようになり、お父さんとお母さんがロングシートの両端に座りました。子供は向かい側のオーツの隣に座りました。
さらに電車が進むと、座席がまたひとつ、ふたつと空いていきました。
ある駅では、降りる人が多く、ロングシートひとつがほぼ空いてしまいました。両端に夫婦が座っている形です。子供は、父母と目配せやら手振りやらで話していましたが、やがて、父親のそばに移動しました。
オーツが不思議に思ったのは、そうなっても、お母さんは夫と子供のそばに来るでもなく、ケータイを操作しているのです。そんなものでしょうか。
気が付くと、父親もスマートフォンをいじっています。子供は何かの本を広げて読んでいます。3人がそれぞれの世界を楽しんでいます。
オーツの場合だったら、こんなときにはさっと移動して、一緒に座るようにするものです。妻の隣の席が空けば、まずは子供を座らせます。子供の隣の席が空けば妻を座らせます。さらに隣が空けばオーツ自身が座ります。
何はともあれ、家族は一緒にいるべきです。別に愛情とか何とかいうことではなくて、そばにいれば、何か、用事があったときでも頼みやすいじゃないですか。知らない人のそばにいるよりは家族のそばにいるべきだと思います。
しかし、この親子3人連れは、近くに座ることにはほとんど意識がないようでした。
不思議な光景でした。
それから数分くらいして、オーツがある駅で降りようとしたら、母親が父親のところに移動してきました。
ちょっとだけほっとしました。