バスは、雪が積もっているところを通っていきます。樹木に着いた雪をみると、昨夜にでも雪が降ったようです。寒いところです。
トイレ休憩があったので、オーツはトイレに入らないけれど、外に出てみました。結構涼しい感じでした。
「服務站」に寄ったときに、ガイドさんが酸素ボンベを購入し、全員に1本ずつ配布しました。酸素ボンベには「医用 気」と書いてありました。注意書きには「不可私自充装」と書いてありました。そんな! 酸素ボンベに自分で充填するなんて発想はすごすぎます。
バスの車内で酸素ボンベの使い方の講習があり、1〜2秒ほど使ってみることになります。このボンベは合計で10分くらい持つのだそうです。無味無臭です。当たり前ですが。まあ酸素ボンベと言っても、素人が使うものですから普通の空気よりも少しだけ酸素を多めにしているのでしょう。本物の酸素ボンベだったら、危険すぎます。
バスは雲の中を走っていきます。霧の中ということですが、3,000 メートル以上なので、雲の中に入る感じです。前のバスはハザードランプをつけっぱなしで走っています。
標高 4,000 メートルの峠の展望台に立ち寄りましたが、一面が雲の中で、景色はぜんぜん見えませんでした。車外に出ると寒かったです。気温は0度くらいでしょうか。
車内に戻ると、ちょっと息が切れて、心臓がどきどきしました。標高が高いということはこういうことです。一部の乗客は、酸素ボンベを使っていました。
道路の片側車線には雪が積もっています。往復2車線の道路が1.3車線になっています。両側に山が迫り、全面的に雪が積もっています。5月2日でこんな天気です。すごいところです。
それからバスは標高 3,500 メートルの黄龍に向かって下っていきます。このあたりは一面の雪景色で、舗装道路だけが除雪されているだけです。雪と雲がつながって、窓からは何も見えず、結構厳しいドライブでした。
黄龍の入口までバスで行き、そこからロープウェイに乗ります。ロープウェイまで歩いて行く途中で、また変な日本語の看板を見かけました。
「このようにロープを取る」では、いったい何のことか、完全に不明です。中国語「乗索道由此去」は正しいのでしょうが、英語、ハングル、フランス語とも何か変です。こういうのを堂々と表示しているところは中国らしいと思います。
黄龍の料金は、80元(ロープウェイ片道)+150元(入場料)でした。結構高いものです。ガイドさんのくれた手書きの案内図によれば、ロープウェイの片道は40元となっていました。高山病で、途中で体調が悪くなる人がいると、下りのロープウェイを使うことになるということです。
ロープウェイを降りてから30分くらいアップダウンの少ない歩道を歩いて行きます。霧に包まれ、見通しはよくなかったです。かなり寒い感じです。最後に、分岐点から五彩池まで400メートルほどの登りがあるのですが、これが特にきつく感じました。標高 3,500 メートルくらいの高地なので、空気が薄く、疲れやすいのです。ベンチで休んで、水を飲んで、酸素ボンベから酸素を吸うと、元気が出ます。休憩と水と酸素のどれが効果的なのか、わかりませんでしたが、酸素ボンベは単なる気休めよりは効果があるようです。
こうして最高地点まで登ると、そこが五彩池でした。
全体が霧(というか雲)に包まれていましたが、五彩池周辺は一応見渡せました。この池の色がすばらしいと思います。やや白っぽい水色です。石灰岩が溶け込んでこんな色になるという話ですが、不思議な気分でした。たぶん、二度と見ることはなさそうです。
オーツは、下山途中で少し頭痛を経験しました。酸素ボンベを吸いながらベンチで休みました。
黄龍では、一部水がなく、滝なども枯れたままでした。
もしも水があったら、ずいぶんと違った景色のはずです。夏に行けば、そんなこともなく、十分楽しめたでしょう。この点は少し残念でした。
しかし、水がまったくなかったわけでもなく、何ヵ所かは黄龍らしい景色を楽しむことができました。
まあ、全体としては「よし」としましょう。
オーツたちが下り道を歩いていくと、反対方向から荷物をしょって登ってくる人たちがいます。2グループあるようです。一つは、レンガなどを背負っている人たちで、上の方で工事していた(たぶん)お寺の建築資材を運んでいるのでした。もう1グループは、下り道の途中にあった休憩所で提供するための飲み物やくだもの、穀物などを背負っている人たちでした。こういう人夫には高齢者が多いものです。見かけで年齢は判断しにくいですが、60代かなと思える顔立ちでした。まさかとは思いますが、70代くらいに見える人もいました。
途中で休憩しながら4時間半ほどの見学時間でした。
というわけで、オーツたちはさっさと木道を降りたのですが、それでも集合時刻にぴったりでした。あちこちで立ち止まって写真などを撮っていれば、もっと時間がかかったはずです。
黄龍の中のトイレでは、管理人がいて、この個室を使えというような指示をしていました。中国ではトイレでのノックの習慣もないし、それどころか、ドアがないトイレも普通ですから、外国人が用を足している途中で中国人がドアを開けたりすると、トラブルになりそうです。
また、ゴミを拾う人がたくさんいました。黄龍全体をきれいに保つためには、こういう努力が必要なのでしょう。
ちょっとしたハプニングがありました。ベンチで座って休んだ後に妻が立ち上がろうとしたとき、酸素ボンベを下に落としてしまったのです。だいぶ降りてきたところでしたから、もう酸素ボンベを使わなくてもいいところだったので、そのまま捨ててしまってかまわないと思いました。とはいえ、景勝地をゴミで汚してはいけません。100メートルほど歩いていくと、係りの人がいたので、(英語で)状況を説明して酸素ボンベをとってもらうことにしました。現物をオーツに返してもらう必要はなく、そのまま捨ててもいいと思い、処分するように言ったのですが、英語が通じなかったようです。オーツたちがそのまま歩いてぐるりとターンしたところまでいくと、係りの女性が木道から降りて、酸素ボンベを拾ってくれました。係員は、そのままオーツのところに酸素ボンベを持ってきてくれたので、チップを出したのですが、チップは受け取りませんでした。
黄龍から空港までの帰り道、また標高 4,000 メートルの峠を通ります。峠は霧にすっぽり包まれていました。
それから、なんと、雪が降ってきました。5月の雪です。バスのフロントグラスも曇り、横の窓も曇り、何がなんだかさっぱりわからなくなってしまいました。しばらく走ると、霧と雪の景色が切れて、普通の高原の景色になりました。
他の日本人客からの情報によると、ホテルから黄龍まで乗ったバスの速度計が壊れていたとか。いつもゼロを指したままだったそうです。また、帰りに同じバスに乗るときは、乗車口のドアが壊れていて、ガイドさんが手で押しあけて、みんなが乗りました。ここは中国だと実感しました。
黄龍見学が終わって、夜の内に成都に移動しました。
1日で2万歩は歩いた気分です。疲れました。