オーツがよく利用している地下鉄の駅のエレベータでの話です。
あるとき、オーツがエレベータで上に上がろうとして、エレベータに向かって歩いていたときのことです。オーツは、エレベータからかなり離れた位置にいたのですが、箱が降りてきてドアが開きました。中から人が降りて、ドア付近で待っていた人が乗りました。そのあいだ中、オーツは早歩きでエレベータに向かって進んでいました。エレベータのドアが開いてから、乗り込んだ人が行き先ボタンを押して、それ以外は何もボタンを押さない場合に、ドアが閉まるまでの秒数はオーツの経験上わかっていましたから、それに間に合うようなタイミングで早歩きをしていったわけです。
すると、先に乗った人(エレベータの利用者はひとりだけでした)が操作盤の「閉」ボタンを押して、ドアを閉め、上に上がっていってしまったのです。
オーツはがっかりするとともに、とても残念に思いました。
何も、先に乗った人に、「開」ボタンを押したまま待っていてくれとはいいません。行き先ボタンを押したあと、そのままにしていてほしかったのです。歩いてくる人がエレベータのドアの閉まるタイミングに間に合わなければ、それはそれでしかたがないのです。
ところが、その人は、エレベータに乗ろうと近づいてくるオーツを見ながら、意識的に「閉」を押したのです。
「エレベータに一緒に乗りたくない」と、同乗を拒否された感覚でした。それはあたかも「お前は乗るな」と言っているようなものです。
たぶん、その人には急ぐべき理由があったのでしょう。
それにしても、ほんの数秒ですから、待っていてもよかったのではないでしょうか。