2010年08月03日

「体験格差」が生む年収格差

 オーツが新聞を読んでいて、「おや?」と思う記事がありました。
 日経新聞8月2日朝刊21面「教育」欄ですが、子どものころの体験格差が子どもの学力格差を生み、いろいろ体験した子どもの方が高学歴の傾向があり、年収が多い傾向があるというのです。
http://www.niye.go.jp/insreport_pdf/hodoshiryo.pdf
http://www.niye.go.jp/insreport_pdf/10tyukanhokoku.press.pdf
にもその内容が記載されています。24ページの資料中の10ページにある図7と図8が新聞記事に転載されていました。
 2枚の図(グラフ)は、明らかに、子どものころの体験の多寡が「最終学歴」および「現在の年収」と関連しているように読めます。
 しかし、オーツならば、これらのグラフからそういう結論は出しません。もう少し深く集計・分析しないと、その主張はできません。
 この調査は、20代から60代の男女 5,000 人を対象としたものです。だったら、年齢別に集計する必要があります。どういうことか、それぞれを説明しましょう。
 図7は、「子どものころの体験の多寡」×「最終学歴」の二重クロス集計です。
 この図は、一見、両者が関連しているように読めます。
 しかし、日本は、戦後、一貫して高学歴化の傾向がありました。それは年齢差に表れます。高年層は比較的低学歴者が多く、若年層は比較的高学歴層が多くなります。したがって、年齢層を区分せずに、単純な二重クロス集計をすると、年齢差が忍び込んで、結果をゆがめます。
 ここでは、「子どものころの体験の多寡」×「最終学歴」×「年齢層」の三重クロス集計をするべきでしょう。そして、同じ年齢層の中で、子どものころの体験の多寡が最終学歴と関連していることを示す必要があります。
 図8は、「子どものころの体験の多寡」×「現在の年収」の二重クロス集計です。こちらも同じ問題があります。年収は、若いときに低く、中高年になると高くなります。したがって、この図でも、年齢差が忍び込んでくるわけです。
 たとえば、中高年層は、子どものころ(つまり高度成長期前後)たくさん外遊びをした世代です。若年層は子どものころといえばテレビゲーム中心だったでしょう。すると、子どものころの経験が多かったと回答した人は比較的年齢が高く、したがって、現在の年収が多く、子どものころの経験が少なかったと回答した人は比較的年齢が低く、したがって、現在の年収が少ないのではないでしょうか。
 これを否定するのは簡単です。
 ここでも、「子どものころの体験の多寡」×「現在の年収歴」×「年齢層」の三重クロス集計をするべきです。そして、同じ年齢層の中で、子どものころの体験の多寡が現在の年収と関連していることを示す必要があります。
 5,000 人も調査していれば、このような三重クロス集計も十分可能であると思われます。それをしないで、二重クロス集計だけで結論を出すのは危険です。

 なお、調査報告書の全体は
http://www.niye.go.jp/houkoku_srch/chosa_cts.php?insid=110
にあります。

 ちなみに、新聞記事では、「調査データは国立青少年教育振興機構のホームページ(http://www.niye.go.jp)にも掲載している。」とありました。しかし、ホームページから報告書にたどりつくことはできませんでした。検索エンジンで「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」と入れて検索した方がはやかったです。
posted by オーツ at 08:38| Comment(2) | TrackBack(0) | ニュース時評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする