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当日は、典型的な夏の日で、それはそれは暑い日でした。
14:30 開場でしたが、オーツは 13:50 くらいに会場に着いてしまいました。ちょうど、扉の鍵を外しているところだったので、中に入れるのかと思いましたが、そばにいる警備員に聞いてみると、これは警備員が鍵を外しているだけで、主催者が扉を開けるまでは中に入れないというのです。外で待っているのでは暑くてたまらないので、近くのマクドナルドまで行き、100 円の冷たいお茶を飲みながら、冷房の効いた場所で本を読んで待っていました。
14:30 になった(マクドナルドの店内の時計で)ので、再び会場に向かいました。すると、会場前にはたくさんの客さんが待っていました。何と、まだ会場が開いていないのです。オーツの時計を見ると、14:32 でした。こういう日は少しでも早く会場を開けてほしいものです。
まもなく開場となり、ずらずらと列が続きながら中に入りました。
オーツは、このホールには初めて入りましたが、なかなか快適な空間でした。1階席が前から順にAからSまであり、左右は23席並んでいましたから、かけ算すると437席あるわけです。それに、2階バルコニー席が左右に42席ずつ並んでいましたから、84席、合計で521席です。当日は、だいたい客が9割くらい入っていたでしょうか。こういうリサイタルに向いている会場です。日本大学はいい買物をしました。
オーツはC−5という席でした。前から3列目でステージに向かって左側のほうです。このくらい前だと、楽器の音が生々しく聞こえます。また、演奏者の表情もよく見えます。ちょっと靴のかかとを上げて下ろしても、その音がよく聞こえます。楽譜のページをめくる音まで聞こえてくる感じです。このホールは、ほぼ長方形になっており、大ホールと違って音が複雑に反射しながら奥に進むような感じがないので、前のほうの席がいいと思います。このホールは音の響きもよかったです。
演奏会は、和田薫「無伴奏ヴァイオリンのための譚歌」で始まりました。この曲は、天満敦子氏のために作曲されたものだそうで、かなり技巧的な曲でした。普通にバイオリンを弾きながら、左手でピチカートしたりもするのです。バイオリンの響きが豊かで、会場を魅了しました。
2曲目は、ファーマー「ホーム・スイート・ホーム(埴生の宿)」でした。この曲からピアノの伴奏がつきました。ピアノは吉武雅子氏です。馴染みのあるメロディーで始まりましたが、その後、いろいろに形を変えていきました。変奏曲だったのですね。天満氏は、曲のテンポをかなり変える弾き方をします。強弱もかなり差をつけます。自由な演奏で、気持ちや表情を表す演奏法といえばいいのでしょう。リサイタルは、オーケストラとの協奏曲ではありませんから、これでいいのです。このような自由な感じがまたたまらない魅力になります。
バイオリンが自由な演奏をしても、もちろん、ピアノはピッタリとついていきます。このあたりがまた見事で、2人のまさに「息のあった」演奏ぶりでした。
その後、小品がいくつか演奏されましたが、それぞれに感情がこもったような演奏ぶりで、楽しめました。
そして、15分の休憩になりました。
プログラムの後半は、ベートーベンの「クロイツェル」でした。
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では、「クロイツェルン」と表記されており、当日配られたパンフレットでもその表記がされていましたが、これは珍しいと思います。ちなみに、Yahoo! で検索してみると、「クロイツェル」が 270,000 件、「クロイツェルン」が 9 件です。(両方とも、音楽以外のものも含まれていますが。)
ここだけ譜面台が使われました。30分もかかる長い曲ですから、当然でしょう。
天満氏は、力強い演奏が得意なようで、クロイツェルはまさに向いています。第1楽章と第3楽章でその力が遺憾なく発揮されます。緊迫感があって、とてもいい演奏でした。
リサイタルの最後はポルムベスク「望郷のバラード」でした。無伴奏で演奏されます。これは天満氏が広めた曲だそうです。オーツは初めて聞きましたが、歌うような流れのある曲でした。
これでプログラムにある曲目は終わりです。
それから天満氏がマイクを握って挨拶しました。こういうのも珍しいですが、客席との一体感を醸し出すためにもいいですね。毎年、同じ会場で同じ頃に演奏できてうれしいというような内容でした。また来年もあるということでしょう。
さらに、アンコールがありました。和田薫「独奏ヴァイオリンのための譚歌U」で、プログラムの初めの曲の続編という位置づけでしょう。この曲を弾いた直後、天満氏が一瞬「どうだ」といわんばかりの自信にあふれた表情を見せました。(すぐ笑顔を見せましたが。)ちょっと恐い感じすらしましたが。
さらにさらに、ピアノの伴奏つきでグノーの「アベ・マリア」を弾きました。
アンコールが2曲というのも大サービスです。
全体としてバイオリンの響きを堪能しました。使用したバイオリンはストラディバリウス晩年の名器だそうです。なるほど。
天満氏は目をつぶっているかのように演奏します。(譜面台を使うときもあるのだから、実際はつぶっていないのでしょうが。)地味な服装とともに、個性を感じさせます。
演奏の途中で弓の糸が2本切れました。前のほうの席だとこんなところまで見えてしまうのですね。これはこれでおもしろい発見でした。
ラベル:天満敦子 日本大学カザルスホール