2008年05月19日

陰山英男(2008.5.17)「子どもと伸びる 朝食大切にした母」日本経済新聞日経PLUS1

 オーツが見かけた記事です。土曜日のプラス1の15ページに出ていました。
 ネットで検索すると、同じ話が書いてあります。
http://www.kobun.co.jp/dataroom/magazine/dl/hoken58.pdf
この3ページにある「グラフ3」を見てください。
 山陽小野田市の小学生 3700 人ほどを調べ、朝食を毎日食べるかどうかと国語・算数の学力(偏差値)の関係を調べています。朝食を毎日食べる子どもは偏差値が50くらい、「ときどき食べない」子どもは45〜46くらい、「毎日食べない」子どもは38〜39くらいになっています。日経新聞の記事も同じデータを使っています。
 そして、陰山英男氏はこのデータに基づいて、こう述べます。「近年、朝食を食べないと成績は極端に悪くなるというデータが出てきた。」
 何と、短絡的な主張なのでしょうか。オーツは、この記事を読んで愕然としました。
 では、このデータをどう読むべきか。以下にオーツの考え方を書いておきます。
 記事の元になった調査では、朝食を食べるかどうかということと国語・算数の学力に相関関係があるということを示しています。これは一応正しいとして、話を先に進めましょう。(実は、そういえるかどうか、問題があるのですが、グラフだけでは読み取れないので、ここではその点に触れないでおきます。)
 すると、このデータの解釈として、いくつか考えられることがあります。データは相関関係を示しているだけで、原因:結果については、何も示していません。したがって、原因:結果という観点からは複数の解釈が可能です。
(1)朝食を食べないと成績が悪くなる
 陰山氏の解釈です。朝食を食べるかどうかが原因となって、成績が悪いという結果が出てくると考えます。
(2)成績が悪い子は朝食を食べない
 成績が悪い子は、学校に行きたくなくなって、朝起きてもぐずぐずしており、朝食を食べなくなるというような考え方です。成績が悪いことが原因で、朝食を食べないという結果が出てくると考えます。
(3)隠れた原因が別にあって、それが、成績と朝食の有無の両方に影響している
 たとえば、家庭の教育方針などというものがあって、きちんとした家庭では、子どもに朝食を食べさせるし、また、教育熱心であるために子どもの成績はよくなります。そうでない家庭では、子どもに朝食を食べさせたり食べさせなかったりするし、さほど教育熱心ではないために子どもの成績が悪くなります。朝食の有無と子どもの成績は、原因:結果関係になく、家庭の教育方針のような隠れた原因によって引き起こされると考えます。
 ざっと考えても三つの解釈が可能ですが、これらの中で(1)が正しいと考える根拠は何でしょうか。陰山氏の議論は、ここがすっぽりと落ちており、いきなり結論を述べています。これは正しい態度ではありません。
 ちなみに、オーツは(あまり根拠はありませんが)(3)の解釈が有力だろうと思います。つまり、朝食の有無と学力は、原因:結果という関係になく、たまたまそのように見えるにすぎないという立場です。
 オーツは、陰山氏の主張が間違っていると思います。陰山氏の解釈が正しいならば、子どもの成績を伸ばすためには朝食を毎日食べさせるべきだということになりますが、朝食を食べるかどうかと学力の関係が論理的に結びついているということは考えにくいと思います。
 相関関係と因果関係は全然別の概念であり、今回の調査からは相関関係は言えても、因果関係は言えません。因果関係は、相関関係を示すグラフを調査者(研究者)がどう解釈するかということであり、説明のしかたということになります。これはデータ分析の基本的な考え方であり、陰山氏がそういう基本的な考え方を知らないということが驚きです。
 本文末尾には「立命館大学教授」という肩書きが書いてあります。大学教授ならば、その名に恥じないように、きちんと正しくデータを読むようにするべきです。
 なお、学力と朝食の有無について、相関関係があるかどうかという点ですが、グラフには学力偏差値の「平均値」しか示されていないので、何ともいえません。偏差値のバラツキ具合(たとえば、朝食をときどき食べない子どもの学力偏差値がいくつからいくつくらいなのか)を求めておくべきで、「分散」とか「標準偏差」とかいわれるものを示さないと、相関関係があるという結論は出せません。
posted by オーツ at 06:10| Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース時評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする