2008年04月14日

満地球

 月周回衛星「かぐや」が、満地球の出を撮影したというニュースは、新聞やテレビで流れましたので、多くの人が知っていることでしょう。
http://wms.selene.jaxa.jp/
http://www.jaxa.jp/press/2008/04/20080411_kaguya_j.html
http://www.asahi.com/science/update/0412/TKY200804120040.html
年2回しかお目にかかれないのだそうです。
 ところで、「満地球」という言い方は、ちと変な語感があります。「満月」からの類推で作られた語であることは明らかですが、それにしても落ち着きません。なぜでしょうか。
 「満〜」を漢和辞典などで見てみると、2字漢語の例が数十個上がっていますが、3字漢語は一つもありません。(オーツの調べ方の不足でしょうか。)もともと、日本語では音読みの漢字を二つ組み合わせて新しい命名をするというパターンがありました。明治時代の和製漢語の大量創造などはその好例です。たとえば、哲学、会社、社会、……など、ヨーロッパ語の翻訳語として作られました。しかし、「満地球」は3字漢語であり、その例に外れています。
 もちろん、「満地」も「満球」もありえません。「地球」は「地球」であり、(「日」や「月」のような)1字漢語が存在しないからです。
 日本国語大辞典第2版の「地球」を見ると「語誌」欄に「明末、中国を訪れたイエズス会士マテオ=リッチによる造語。「天球」からの類推で考案されたものと思われる。」とあります。
 こうして、新しい語ほど、以前からある要素を組み合わせて作られますから、新語がだんだん長くなるのかもしれません。
 日本語の長い歴史の中では、そうやってできた長い語が短くなることもあるわけで、1字の漢字で、語を表すような働きをする(他の語と結合して1語を作る)こともあります。たとえば「電」は「電気」が短くなったもので、「電球、停電、電車、家電、……」などの語を作ります。「地球」がこのように短くなると、それに「満〜」を付けると収まりがよくなるのですが、さて、そんなことはあるのでしょうか。
 「満地球」は、そうそう経験できるものではなく、そもそも月面は地球に対して不動の位置にあるのですよね。だから、月面上からは見られません。つまり、月周回衛星のテレビカメラを通してしか見ることはできません。こんなことでは、日常生活ではほとんど話題にのぼらないはずです。ということは、使用頻度が低いままなわけで、「電気」のように一般化することは考えられません。その前に「地球」ということばだって、そんなに使用頻度が高い語であるとは思えません。人間の生活感覚では、「地球」を意識するよりは(平面的な)「大地」や「地面」を意識することが多いように思います。
 そんなことを考えると、「満地球」には違和感を感じながらも、(他に適切な言い方がないから)そのまま使われ続けるだろうと予想します。
ラベル:満地球 地球
posted by オーツ at 04:04| Comment(0) | TrackBack(0) | ことば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする